MEP:PC系樹脂の建築・土木分野への応用


三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
 ポリカーボネート(以下,PCと略す)は、透明性、耐衝撃性をもち、耐熱性、自己消火性も備え、性能バランスに優れた材料であり、建築・土木資材として広く使用され需要を伸ばしている。なかでも、透明性を生かし市場拡大を続けるのが屋根材、側壁材などに使われるPCシ−トである。シート分野の需要は2000年で51,500トンであり、前年比+6.6%の伸び、1995年に比べ倍以上となっている。景気の低迷にもかかわらずカ−ポ−トを中心としたエクステリア資材向けが増加している。
 このように建築・土木資材に使用されるようになった理由としては、93年に建築基準法による屋根材としての一般認定を得て、それまで使用できなかった2000m2までの大面積の屋根や、火災時の安全性が高く求められる建屋にPCだけの使用が可能になったことがあげられる。また、PCシ−トのもつ優れた特徴も顧客に広く浸透したためと考えられる。
 ここでは、建築・土木分野に広く使用されているPCシ−トを中心に、そのほかのPC製品の使用事例を紹介し、今後の展望を考察したい。
建築・土木分野の使用事例
1.PCシ−トの特徴
 PCシ−トの特徴は、比重が軽いので軽量化が可能であり、熱伝導率が低いので断熱効果が期待できる。また、2次加工面においても切断、切削、打抜き、穴あけ、ねじ加工、真空成形、熱曲げ加工が容易である。さらに、ほかの樹脂板に比較すると優れた衝撃強度をもち、透明性、耐熱性、耐寒性、耐候性に優れており、自己消火性があり難燃性の要求される用途に適している。
2.PCシートの種類
 形状から分類すると平板(シ−ト・フィルム)、波板、折版、角波のように用途に合わせた4タイプの製品がある。平板は可撓性があるのでその場で曲げて取り付けることが可能である。シェル効果により凹凸になる心配がなく、あらゆる曲面デザインに対応できる。また、耐衝撃性があるので体育館の窓ガラスやフェンス、グラウンドに面した教室の窓やベランダの腰板、学校・病院・マンション・スポーツ施設・道路などで,その高い性能を発揮している。従来のような防護網は不要になり、透明で美しい光沢がよりよい環境をつくり出している。
 波板は透明で割れにくく変色しにくいという優れた性能が従来の硬質PVCやFRP、FRAを凌ぎ、各種樹脂の中でも最も高級感のある波板として、室内プールや工場の明かり採りの屋根材として幅広い用途に対応している
(写真1)
 折版は、耐熱・耐寒性に富み,施工性にも優れており、既存の折版をはるかに凌駕している。各種工場をはじめ、倉庫、交通機関、浴場など、大型建築物の屋根材として数多くの実績を誇っている
(写真2)
 角波は、PCの優れた性質に加え、独自の新製法でさらに美しい角波形状を実現した。透明で割れず、変色しない、そして美しい形状という特定を生かし、側壁や妻壁などに最も適し
 た採光材として高く評価されている
(写真3)
性能面からは耐候性による黄変・白化など変色防止性能をもつサンガードタイプ、水蒸気に対する防曇性能、熱線吸収・熱線反射性能をもつファインタイプ、表面硬度を改良した耐擦傷性をもつMRタイプなど、高機能性を付与したPCシートがある。
写真1.波板 写真2.折版 写真3.角波
3.エクステリア関連
写真4.PC製カーポート(高速道路SA)
 エクステリア関連では、カ―ポ−トの市場が好調である。PCシートは、先に述べたように自己消火性で、火災時の安全性も高く耐久性にも優れている。安全性重視、高齢化社会など市場に適合した素材として、さらに拡大が期待される。また従来の平板に続き、96年11月に折版も建築基準法に基づく一般認定を取得した。折版とは金属折版とほぼ同じ断面形状をもつ長尺の明かり採り用材料であり、平板同様、屋根材料として今後大きく市場が拡大していくと期待される(写真4)
4.道路透光板(遮音板)
写真5.PC製道路透光板(遮光板)
 高速道路、鉄道の騒音対策として、道路や線路沿いの側壁があげられる。一般に透光板と呼ばれ、日照権を損なわない遮音板として環境対策に役立ち、着実に社会に浸透してきている。従来、PC板の透光板は、汚れやすい、傷がつきやすいなどの難点があり、市場から改善を求められていたが、メーカー各社の開発努力が実り、耐汚染性を加味した耐候性のよい耐擦傷性グレードの製品が開発された。すでに、日本道路公団をはじめとした高速道路の側壁として活躍している(写真5)
その他の建築・土木用資材
 以上のように、建築・土木用資材の需要はPCシートが中心となっているが、それ以外にもPCの特性を生かした製品が幅広く使われている。その事例を紹介する。
1.雨樋
 住宅の外装材は、建築基準法によって不燃材・準不燃材の使用が義務付けられているため、プラスチックの使用範囲はかなり限られたものとなっている。その中で、プラスチックの特性を生かし、金属の板金物に替えて市場の占有率が80%になっているのが雨樋である。PCは耐候性、耐衝撃性に優れていることから一部の雨樋に使用されているほか、デザイン性を考慮した雨樋の吊具にも透明のPCが多く使用されている。
2.融雪瓦
 積雪地方における冬期の雪下ろしは非常に深刻な問題となっている。その対策の一環として開発されたのがPC製融雪瓦である。PCは耐寒性に優れており、粘土瓦に対して20%の重量であり、射出成形によって瓦10数枚分を一体化できるメリットがある。内面に面状発熱体を組み付けることもあり、材料には難燃性材料の「ユーピロンFIN5000R」が使用されている。
3.窓ガラス回リ
 ルーバーには、耐候性、透明性、断熱性が要求されており、PCが多く使用されている製品である。加工面においては異形押出成形が主流であり、遮光性をもたせるためにダイ断面にレンズカット形状を施した製品が多い。このほか、複層ガラスのスペーサーブロックもガラス強化PCまたはPCアロイ異形押出品が使用されている。従来のアルミに比較して軽く、断熱性に富み、結露防止効果がある。
4.ブラインド
 ビルなどの建築物に用いられる遮光性を有するブラインドは、従来、アルミなどの金属製のものが用いられているが、近年、ビル周辺の電波障害が問題になってきていることから、ブラインドのプラスチック化が進んできている。
 材料としては、電波障害防止以外に、埃等の付着を防ぐための帯電防止性能、耐候性、遮光性、難燃性の性能を有する「ユーピロンMB5003VUR」が、例えばベネシャンブラインド(横方向にスラットを複数配列したもの)に使用されている。
5.街路灯
 阪神・淡路大震災やPL法施行により,景観照明分野における安全性重視の傾向が強まっている。ランプシェ−ド用の素材として,割れにくく透明性にも優れるPCが注目されている。長期間の屋外使用で変色してしまうとの問題に対しては、PCそのものの改良によって、解決されている。
 製品は回転成形法によって生産される。従来のガラス品と比較して、内面にフロスト加工やストライプ加工が可能であり、割れる危険性減少しランプの位置を低くすることができるので、電球のワット数を小さくして省電力化が図れる。また、軽量化により施工時の作業性が向上すると同時に、固定用の治具の簡略化が可能になるという特徴もある。
今後の課題と展望
 アクリル樹脂に代わる高強度で燃えにくい素材としてPC製エクステリアの市場が全国的に拡大しているが、需要の拡大の一方でアクリル樹脂やポリ塩化ビニルなどとの競合となるため、ユーザーからの価格要求も厳しくなっている。こうした中、スケールメリットの追求による汎用品中心か、あるいは高機能化によリシートに付加価値を付けた独自の差別化製品のどちらかに特化した戦略により、価格か機能化に絞り込んだ展開を行うことが他社との差別化を図り、競争力向上のために必要となってくるであろう。
 1991年にリサイクル法が制定され、プラスチックの廃棄問題は解決すべき大きな問題になっている。PCのリサイクルは,再度可塑化して再利用するポリマーリサイクリングの方法があるが、耐候性・耐擦傷性を向上させるためハードコートを施したPCシートなどのリサイクルが大きな課題となっている。またコストアップ要因も多く、経済的に成立させるためにはシステム的な整備が必要である。業界全体で問題点を整理し、解決のため材料メーカーが分担協力する体制が必要であろう。



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