1−1.放射光とは?
「シンクロトロン放射光」(以後、放射光またはSR光)とは、光速に近い速さまでに加速された電子の塊を電磁石の力で曲げることにより曲げられた電子軌道の接線方向に放射される光(電磁波)のことである。この「放射光」は、従来の光源に比べてその明るさ(輝度)が極めて高く、赤外からX線(ガンマ線)までの広い波長領域をカバーしており、原子・分子の世界をみるための優れた観測(分析)道具として、また、マイクロ・ナノ微細加工などの物作りの手段として、あるいは医療診断・治療などの有効な手法として基礎科学から様々な応用分野にいたるまで無限の可能性を秘めている。
工業利用可能な微細加工技術の一つとして放射光を用いる場合、産業界へ普及しつつある小型放射光装置を用いることが好ましい。住友重機械工業(株)では、超伝導磁石を使用した世界最小の放射光装置「AURORA」の開発に成功した。1995年以降、本装置は立命館大学殿にて安定に稼動し続けている。その後、常伝導磁石を使用した小型放射光装置「AURORA-2」(蓄積電子エネルギー=700 MeV)を開発し、挿入光源の設置が可能である研究用装置(2D型)を広島大学殿に納入し、産業用に特化した装置(2S型)を当社田無製造所、技術開発センター内に設置した(図1)。装置の小型化及び商品化の進展のおかげで、従来、大型の研究施設でしか行うことができなかった放射光利用がより身近な所でできるようになり、産業利用(特に、微細加工技術としての利用)が急速に進んでいる。
1−2.LIGA, TIEGA錺廛蹈札†
| プロセス |
LIGA |
TIEGA |
金型作製 |
| 転写方法 |
リソグラフィー |
エッチング |
電鋳 |
| 材料 |
PMMA樹脂 |
フッ素樹脂 |
Ni , Cu , Au |
| 加工深さ |
500μm |
1500μm |
500μm |
| 加工寸法精度 |
0.5μm |
1μm |
アスペクト比 |
| 表面荒さ(Ra) |
0.04μm |
0.2μm |
0.1μm |
| テーパー |
0.3μm/ 100μm |
0.6μm/ 100μm |
0.3μm/ 100μm |
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| 表1 放射光微細加工仕様 |
LIGA(独語:Lithographie, Galvanoformung, Abformung)プロセスは、1980年代初期にドイツのカールスルーエ原子核研究所(FzK)にて遠心分離によるウランの同位体分離に用いる高精度微小ノズルの安価な製造方法として開発された微細加工プロセスである。放射光装置から出てくるX線の優れた直進性を生かした深いリソグラフィー(描画法)により、レジスト(感光性樹脂。たとえばアクリルPMMA)をパターニングし、そのパターンを鋳型として電鋳で金型を製作し、モールドによって各種成形材料の微細部品の大量生産を行う(図2(a))。深さ(高さ)数100μmで幅は数μmといった高アスペクト比(水平方向の幅と高さの比率)の微細構造体を製作することができ、その加工精度は1μm以下で、加工面粗さも50nm級という平滑度での加工が可能である(表1)。
しかし、LIGAが適用できない材料もある。フッ素系高分子や光学結晶(LiF, KBr等)がそれに相当する。特にフッ素系高分子の一つである<Teflon>PTFEは、電気的、熱的、化学的特性に優れており、様々な分野での微細部品作製にとって有用な材料の一つであるが、一般的には、数千μmの高さで数十μmの幅を持った微細構造を作製することは困難である。PTFEを溶融する溶剤はなく、融点を越えて加熱してもモールドに必要な粘性が得られないからである。我々は、レジストPMMA の代わりにPTFEを使って、放射光照射で真空中で直接、PTFEをエッチングする微細加工技術を開発し、電鋳金型製作を組み合わせて、独自のTIEGA錙†Teflon Included Etching and Galvanic forming)プロセス(図2(b))を保有している(表1)。また、放射光によるエッチングでは、PTFE等のポリマーだけではなく、光学結晶の加工も可能である。
21世紀のナノテク時代の到来とともに、各種の電子・光学・機械部品の寸法微細化や表面加工精度の向上が求められる中、弊社技術開発センターでは、急増する放射光微細加工のニーズに対応すべく、その加工サービスを行っている。 (放射光微細加工サービスHP:http://www.shi.co.jp/srmicro/index.html)

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