新しい時代の感光性樹脂 ―光反応性樹脂の応用―

新しい時代の感光性樹脂 ―光反応性樹脂の応用―

-光反応性樹脂の応用-

  • 従来の印刷、インキ、塗料分野から新時代の用途まで網羅した一冊。感光性樹脂の歴史もふまえて将来を展望する。
  • 医療用途、エレクトロニクス用途の最新技術、有機・無機ハイブリッド材料、フラーレンなど新時代に即した感光性樹脂を詳述。
税込価格 68,250円(本体65,000円+税5%) 出版社 株式会社 シーエムシー出版
監修 赤松 清 発刊日 2003年8月
体裁 B5判・248ページ ISBNコード 4-88231-412-6
Cコード C3043

はじめに

感光性樹脂は20世紀の印刷やエレクトロニクスなどに革命をおこした樹脂であり、現在の社会は感光性樹脂で支えられている。19世紀は科学技術がめざましく発展した時代であったが、それを基礎に20世紀の科学はさらに飛躍的な発展を遂げた。19世紀はラジオ、電信、電話、鉄道、自動車などの発明開発が行われて、それらが普及したが、20世紀にはカラーテレビ、コンピューター、携帯電話が一般的なものとなり、家庭には掃除機、洗濯機、電子レンジ、炊飯器、電気冷蔵庫、冷暖房の機器などが普及して主婦労働の主体といわれた掃除、洗濯、炊飯、調理は総て電子化され室内は快適温湿度に維持される時代になった。

20世紀の半ばに原子爆弾が投下されて驚いている中に原子力船が走り原子力発電が始まり、電子制御技術、情報産業の発達は総てを変化せしめて、新しい分析機器や医療機器も開発され、生物遺伝子の読みとりが行われてクローン生物も作られるようになった。現在の社会と生活は総て電子機器で支えられているが、その電子機器の基礎は感光性樹脂が支えているのである。

感光性樹脂は従来の科学が溶剤と熱反応を基本としてきた基礎発想に光反応を幅広く具体的に導入したもので、熱科学に光科学を加えて科学発想の基礎を拡大した。感光性樹脂が最初に実用されたのは20世紀半ばの印刷製版分野であり、鉛を熱で溶かして型に流し込んで作成をしていた鉛版が感光性樹脂を用いて光で成型する方法に変わった。加熱工程も熱作業もなく、版は軽量になり、鉛害も無くなり、その技術開発には世界の化学、機械関連の会社が参入して競合の火花が散った。その結果、光成形法による微細樹脂画像作成技術が発展して今日の精密電子機器産業を開花させた。

樹脂が光で硬化する特徴は塗料やインキの分野では無溶剤、光硬化により作業環境の改善、火災防止、公害除去に寄与し、光接着法や光成形法などに発展し、最近は歯科治療で齲歯充填に光硬化治療が行われ、口内で行う義歯の光硬化精密成形なども実施され、感光性樹脂の応用は今後益々利用範囲を拡大していくものと考える。感光性樹脂応用技術の解説と展望を記した本書が21世紀の科学技術考察に幅広く寄与することを期待したい。

2003年8月 監修者  赤松 清

執筆者一覧

赤松  清
(財)生産開発科学研究所 評議員
小出  武
大阪歯科大学付属病院 総合診療部 診療科 病院教授
石原 雅之
防衛医科大学校 防衛医学研究センター 医療工学研究部門 教授
岸本 芳男
ニチバン(株) 中央研究所 マネージャー
藤田  滋
京都新聞社 印刷局 印刷局次長兼編集局紙面審査委員
水野 晶好
睦化学工業(株) 技術部 企画推進室 室長
高山 蹊男
東洋インキ製造(株) RC事業部 SS推進部 部長
山寺  隆
日立化成工業(株) プリント基板材料事業グループ 感光性フィルム事業部門 感光性フィルム開発グループ 開発担当部長
松村  晃
日本ペイント(株) FP事業部 電子材料第2部 部長
江部 和義
リンテック(株) 技術統括本部 研究所 副所長
谷本 洋一
大日本インキ化学工業(株) 関東ポリマ関連技術研究所 樹脂第1技術本部 樹脂合成開発3グループ 主任研究員
西部 泰成
(株)T&K TOKA 技術本部 研究第二グループ グループリーダー
股木 宏至
(株)KRI 光機能材料研究部 担当部長
花畑  誠
(株)KRI 光機能材料研究部 部長
田島 右副
理化学研究所 中央研究所 ナノ物質工学研究室 先任研究員
舩岡 正光
三重大学 生物資源学部 教授
門多 丈治
大阪市立工業研究所 プラスチック課 研究員
長谷川喜一
大阪市立工業研究所 プラスチック課 研究副主幹
角岡 正弘
大阪府立大学名誉教授

構成および内容

はじめに赤松 清

第1章 総論赤松 清

  • 1.はじめに
  • 2.感光性樹脂の歴史
  • 3.印刷と感光性樹脂
  • 4.インキ、塗料と感光性樹脂
  • 5.接着と感光性樹脂
  • 6.エレクトロニクスと感光性樹脂
  • 7.医療と感光性樹脂
  • 8.成形加工と感光性樹脂
  • 9.新しい感光性樹脂の開発

第2章 医療用感光性樹脂

  • 1.歯科領域への応用小出 武
  • 1.1 はじめに
  • 1.2 光重合型コンポジットレジン
  • 1.2.1 光重合型コンポジットレジンの歴史
  • 1.2.2 光重合型コンポジットレジン
  • (1)コンポジットレジンの組成
  • (2)フィラーによるコンポジットレジンの分類
  • (3)光重合型コンポジットレジンの特徴
  • 1.2.3 歯質接着システム
  • (1)歯質接着の困難性
  • (2) 歯質接着のメカニズム
  • (3)歯質接着性レジンの構成
  • 1.2.4 光照射器
  • 1.2.5 光重合型コンポジットレジンの臨床術式
  • (1)ラバーダム防湿
  • (2)齲触の除去と覆髄
  • (3)窩洞形成
  • (4)隔壁
  • (5)シェード合わせ
  • (6)歯面処理
  • (7)充填
  • (8)光照射
  • (9)仕上げ研磨
  • 1.3 床裏装材
  • 1.3.1 床裏層
  • 1.3.2 床裏層材
  • 1.3.3 光重合型床裏装材の組成
  • 1.3.4 光重合型レジン(粉液型)による床裏層の臨床術式順
  • 1.4 接着性レジンセメント
  • 1.4.1 接着性レジンセメントの組成
  • 1.4.2 被着体の前処理
  • 1.4.3 ポーセレンラミネートベニヤ修復
  • 1.4.4 接着性レジンセメントを用いたポーセレンラミネートベニヤ修復の臨床術式
  • 1.5 おわりに
  • 2.生体接着・創傷被覆剤石原 雅之
  • 2.1 はじめに
  • 2.2 背景
  • 2.3 キチン・キトサンの化学構造
  • 2.4 キチン・キトサンの医療応用の現状
  • 2.4.1 機能性食品
  • 2.4.2 抗菌・抗カビ・防臭
  • 2.4.3 化粧品材料
  • 2.4.4.グルコサミン
  • 2.4.5 創傷治療用材料
  • 2.5 光硬化性キトサンゲルの構造と調整
  • 2.6 光硬化性キトサンゲルの接着力
  • 2.7 光硬化性キトサンゲルのシーリング力
  • 2.8 生体接着剤としての光硬化性キトサンゲル
  • 2.9 閉塞性創傷被覆剤としての光硬化性キトサンゲル
  • 2.10 光硬化性キトサンゲルの創傷治癒促進のための生物活性
  • 2.11 光硬化性キトサンゲルの安全性
  • 2.12 おわりに

第3章 光硬化、熱硬化併用樹脂 岸本 芳男

  • 1.はじめに
  • 2.光硬化樹脂の長所と短所
  • 2.1 光硬化樹脂の長所
  • 2.2 光硬化樹脂の短所
  • 3.熱硬化性樹脂の長所と短所
  • 3.1 熱硬化性樹脂の長所
  • 3.2 熱硬化性樹脂の短所
  • 4.光硬化樹脂と熱硬化性樹脂の併用が求められる理由
  • 5.光硬化と熱硬化併用の手段
  • 6.実際の分野、応用、実例
  • 6.1 接着剤のシート化(製品形態はシートまたはフィルム状)
  • 6.2 熱硬化性接着剤の過熱によるプレゲル化(シート化可能)
  • 6.3 光硬化樹脂と熱硬化性樹脂混合物の光照射によるシート、フィルム化(接着型、剥離型)
  • 6.4 熱硬化性と電離放射線硬化樹脂との併用による特性向上
  • 6.4.1 プラスチゾルとアクリルモノマーを併用する場合
  • 6.4.2 アクリルモノマーとエポキシ樹脂とを併用する場合
  • 7.今後の可能性:天然物を原料とした感光性樹脂
  • 7.1 原料油脂:パーム油、大豆油
  • 7.2 バーム油、大豆油の利用、アクリロイル化
  • 7.3 粘着剤としての利用の可能性

第4章 印刷と感光性樹脂

  • 1.新聞印刷と感光性樹脂藤田 滋
  • 1.1 新聞印刷工程の変遷
  • 1.2 感光性樹脂凸版への移行変遷と背景
  • 1.3 感光性樹脂凸版の種類と特徴
  • 1.4 版式転換の事例
  • 1.4.1 APR-SR版
  • 1.4.2 APR-SR-Y†型機
  • (1)信頼性の向上
  • (2)操作性、保守性の向上
  • (3)安全性の向上
  • (4)製版スピードの向上
  • (5)版品質の向上
  • (6)ランニングコストの低減
  • (7)装置のコンパクト化
  • 1.4.3 APR-SR版製版工程
  • 1.5 新聞印刷分野における感光性樹脂の今後の方向
  • 2.フレキソ印刷と感光性樹脂水野 晶好
  • 2.1 はじめに
  • 2.2 感光性フレキソ版に応用される感光性樹脂
  • 2.3 感光性フレキソ版の製版
  • 2.4 フレキソCTP
  • 2.5 新しいフレキソ版製版方法(ドライ現像)
  • 2.6 フレキソ版のコーティングへの利用
  • 2.7 おわりに
  • 3.スクリーン印刷と感光性樹脂高山 蹊男
  • 3.1 はじめに
  • 3.2 スクリーン印刷
  • 3.3 スクリーン印刷版
  • 3.3.1 スクリーン・紗
  • 3.3.2 感光性乳剤
  • 3.4 感光性樹脂
  • 3.5 感光性樹脂の具体例
  • 3.5.1 重クロム酸塩系感光性樹脂
  • 3.5.2 光分解型感光性樹脂
  • 3.5.3 光ニ量化型感光性樹脂
  • 3.5.4 光重合型感光性樹脂
  • (1)線状ポリマー+モノマー
  • (2)不飽和オリゴマー(プレポリマー)+モノマー
  • 3.6 スクリーンインキ
  • 3.6.1 UVスクリーンインキの組成
  • 3.6.2 UVスクリーンインキの使用例
  • (1)ボトル用UVスクリーンインキ
  • (2) DVD用レーベル印刷
  • (3)点字用UVインキ
  • 3.6.3 UVスクリーンインキの新しい動き
  • 3.7 おわりに

第5章 エレクトロニクスと感光性樹脂

  • 1.プリント基板と感光性樹脂山寺 隆
  • 1.1 はじめに
  • 1.2 回路形成用レジスト
  • 1.2.1 フォトレジスト用材料
  • 1.2.2 ドライフィルム材料
  • (1)ドライフィルムの製造方法
  • (2)パッケージ用ドライフィルム
  • (3)一般回路形成用フィルム
  • 1.2.3 その他のレジスト材料
  • 1.3 永久マスク材料
  • 1.3.1 ソルダレジストインキ材料
  • 1.3.2 パッケージ用ソルダレジストインク
  • 1.3.3 ソルダレジストフィルム
  • 1.4 層間絶縁膜材料
  • 1.5 おわりに
  • 2.可視光硬化型シール剤松村 晃
  • 2.1 はじめに
  • 2.2 有機EL
  • 2.2.1 有機EL素子
  • 2.2.2 有機ELパネルの構造
  • 2.2.3 有機EL素子の製造工程
  • 2.3 FPD用シール剤
  • 2.3.1 LCD用シール剤
  • 2.3.2 有機EL用シール剤
  • (1)有機EL用シール剤への要求特性
  • (2)有機EL用シール剤の環境試験条件
  • 2.3.3 有機EL用紫外線硬化型シール剤
  • 2.3.4 有機EL用可視光硬化型シール剤
  • 2.3.5 可視光硬化システムの利点
  • 2.3.6 可視光光源の選択
  • 2.4 日本ペイント製可視光硬化型シール剤「VLS-100」
  • 2.5 次世代シール剤の可能性について
  • 3.半導体ウェハ加工用粘・接着テープ江部 和義
  • 3.1 はじめに
  • 3.2 ダイシングテープ
  • 3.2.1 ダイシングテープの要求性能
  • 3.2.2 粘着力制御メカニズム
  • 3.2.3 チッピング・クラック対策
  • 3.2.4 粘着剤残渣による影響
  • 3.3 アダクト型粘着剤の適用
  • 3.3.1 二重結合の導入手法
  • 3.3.2 アダクト型ポリマーの合成と粘着組成
  • 3.3.3 ダイシングテープとしての諸特性
  • (1)粘着剤の弾性率
  • (2)粘着剤残渣
  • (3)エキスパンド性
  • (4)まとめ
  • 3.4 粘接着剤を用いた半導体パッケージ
  • 3.4.1 使用工程
  • 3.4.2 UV照射・加熱硬化
  • 3.4.3 テープの接着特性

第6章 塗料、インキと感光性樹脂

  • 1.塗料と感光性樹脂谷本 洋一
  • 1.1 はじめに
  • 1.2 塗料の構成
  • 1.2.1 ラジカル重合型オリゴマーおよびモノマー
  • (1)エポキシアクリレート
  • (2)ウレタンアクリレート
  • (3)ポリエステルアクリレート
  • (4)不飽和ポリエステル
  • (5)アクリルアクリレート
  • (6)アクリレート系モノマー
  • 1.2.2 カチオン重合型オリゴマーおよびモノマー
  • (1)エポキシ樹脂
  • (2)ビニルエーテル
  • (3)オキセタン
  • 1.2.3 その他の材料
  • (1)マレイミド
  • 1.2.4 光開始剤
  • 1.3 最近の特徴ある塗料
  • 1.3.1 粉体塗料
  • 1.3.2 水性塗料
  • 1.3.3 無機/有機ハイブリッド塗料
  • 1.3.4 デュアルキュア塗料
  • 1.4 応用用途
  • 1.4.1 木工用塗料
  • 1.4.2 プラスチック用塗料
  • 1.4.3 金属用塗料
  • 1.4.4 紙用塗料
  • 2.インキと感光性樹脂西部 泰成
  • 2.1 はじめに
  • 2.2. UVインキの組成について
  • 2.2.1 顔料
  • 2.2.2 イナート樹脂・プレポリマー
  • 2.2.3 光開始剤
  • 2.2.4 感光性モノマー・オリゴマー
  • 2.3 最近のUVインキ・ニス事情
  • 2.3.1 UVハイブリッドインキ
  • (1)UVハイブリッドインキの処方
  • (2)UVハイブリッドインキに適する感光性モノマー・オリゴマー
  • 2.3.2 UV大豆油インキ
  • (1)UV大豆油インキの処方
  • 2.3.3 UVコートニス
  • (1)UVコーターニスの組成
  • 2.4 おわりに

第7章 新しい時代の感光性樹脂

  • 1.有機・無機ハイブリッド感光性樹脂とその応用股木 宏至、花畑 誠
  • 1.1 はじめに
  • 1.2 無機材料の光パターニング
  • 1.2.1 研究の背景
  • 1.2.2 無機ナノ粒子含有光パターンニング用材料およびそれを用いた無機パターンの形成方法
  • 1.2.3 プラズマディスプレイ用隔壁形成への応用
  • 1.3 光学素子への応用:光導波路
  • 1.3.1 研究の背景
  • 1.3.2 材料設計の指針
  • 1.3.3 光導波路の作製
  • 1.3.4 感光性樹脂/シリカ微粒子ハイブリッド膜の特性
  • 1.3.5 光導波路の特性
  • 1.3.6 その他の光学材料・素子への応用
  • 1.4 まとめ:今後の展開
  • 2.フラーレンを使った耐熱性感光性樹脂田島 右副
  • 2.1 はじめに
  • 2.2 光酸化誘起重縮合(POP)機構
  • 2.3 POP機構による樹脂の光硬化挙動
  • 2.4 フラン基含有ポリイミドの分子設計
  • 2.5 POPポリイミドの耐熱性
  • 2.6 今後の展望
  • 2.7 おわりに
  • 3.リグニン由来の感光性樹脂舩岡 正光、門多 丈治、長谷川 喜一
  • 3.1 はじめに
  • 3.2 リグニンの形成と構造的特徴
  • 3.3 天然リグニンの精密機能変換システム
  • 3.3.1 循環型リグニン系素材の基本設計
  • 3.3.2 相分離系変換システム
  • 3.4 リグノフェノールの特性と二次機能制御
  • 3.5 ノボラック-ジアゾナフトキノン系フォトレジスト材料
  • 3.6 リグノフェノールのフォトレジスト材料としての適性
  • 3.7 リグノフェノールを用いた印刷用フォトレジスト
  • 3.7.1 ジアゾナフトキノン(DNQ)/リグノフェノール系フォトレジスト材料
  • 3.7.2 各種リグノフェノール
  • 3.7.3 低分子量添加剤
  • 3.8 リグノフェノールを用いたプリント配線用フォトレジスト
  • 3.8.1 ジアゾナフトキノン(DNQ)/リグノフェノール系フォトレジスト材料
  • 3.8.2 感光性能
  • 3.8.3 エッチング条件の最適化
  • 3.9 リグノフェノールを用いたフォトレジスト材料の今後の展開

第8章 感光性樹脂の将来展望 角岡 正弘

  • 1.はじめに
  • 2.高分子光化学と感光性樹脂
  • 3.フォトレジストに見る材料および技術の進歩
  • 4.UV硬化材料の最近の動向
  • 5.おわりに