はじめに
感光性樹脂は20世紀の印刷やエレクトロニクスなどに革命をおこした樹脂であり、現在の社会は感光性樹脂で支えられている。19世紀は科学技術がめざましく発展した時代であったが、それを基礎に20世紀の科学はさらに飛躍的な発展を遂げた。19世紀はラジオ、電信、電話、鉄道、自動車などの発明開発が行われて、それらが普及したが、20世紀にはカラーテレビ、コンピューター、携帯電話が一般的なものとなり、家庭には掃除機、洗濯機、電子レンジ、炊飯器、電気冷蔵庫、冷暖房の機器などが普及して主婦労働の主体といわれた掃除、洗濯、炊飯、調理は総て電子化され室内は快適温湿度に維持される時代になった。
20世紀の半ばに原子爆弾が投下されて驚いている中に原子力船が走り原子力発電が始まり、電子制御技術、情報産業の発達は総てを変化せしめて、新しい分析機器や医療機器も開発され、生物遺伝子の読みとりが行われてクローン生物も作られるようになった。現在の社会と生活は総て電子機器で支えられているが、その電子機器の基礎は感光性樹脂が支えているのである。
感光性樹脂は従来の科学が溶剤と熱反応を基本としてきた基礎発想に光反応を幅広く具体的に導入したもので、熱科学に光科学を加えて科学発想の基礎を拡大した。感光性樹脂が最初に実用されたのは20世紀半ばの印刷製版分野であり、鉛を熱で溶かして型に流し込んで作成をしていた鉛版が感光性樹脂を用いて光で成型する方法に変わった。加熱工程も熱作業もなく、版は軽量になり、鉛害も無くなり、その技術開発には世界の化学、機械関連の会社が参入して競合の火花が散った。その結果、光成形法による微細樹脂画像作成技術が発展して今日の精密電子機器産業を開花させた。
樹脂が光で硬化する特徴は塗料やインキの分野では無溶剤、光硬化により作業環境の改善、火災防止、公害除去に寄与し、光接着法や光成形法などに発展し、最近は歯科治療で齲歯充填に光硬化治療が行われ、口内で行う義歯の光硬化精密成形なども実施され、感光性樹脂の応用は今後益々利用範囲を拡大していくものと考える。感光性樹脂応用技術の解説と展望を記した本書が21世紀の科学技術考察に幅広く寄与することを期待したい。
2003年8月 監修者 赤松 清