刊行にあたって
最近、有機ELディスプレイ、有機トランジスタ、有機太陽電池、各種センサーなど、有機半導体、有機電子材料をベースとする電子デバイスが著しい進歩を遂げ、従来の無機シリコン半導体に代わって「有機エレクトロニクス」が注目を集めている。電子写真有機感光体に続いて実用化が期待されていた有機EL(電界発光)が、すでに携帯電話のディスプレイに搭載され、2007年12月には世界初の有機ELテレビが発売されるなど、有機ELの実用化が一段と進んだ。さらにその有機ELディスプレイの駆動を有機トランジスタで実現しようという研究も盛んに行われ、まさに有機エレクトロニクス時代の始まりを匂わせている。しかし、このような有機エレクトロニクスが産業として成長できるかどうかは、有機ならではの電子デバイス研究と同時に、省エネルギーを念頭において、電子デバイスや電子回路の作製に、高温プロセスが必要なシリコン無機半導体と十分に差別化できる、低温・低コスト製造プロセスが有機エレクトロニクスで開発できるかどうかに掛かっている。一方、省資源の視点から、「必要な材料を、必要なところに、必要なだけ」用いて電子回路や電子デバイスを作製する技術の開発が不可欠である。最近、これまで画像形成技術として発展してきた印刷技術やインクジェットプリント技術が、「必要な材料を、必要なところに、必要なだけ」基板上に配置して有機電子デバイス、電子回路パターンを作製する新しい製造プロセス技術として導入され、「プリンタブル有機エレクトロニクス」という概念が新しく誕生した。この技術はまだ確立されたものではなく、現在あらゆるプリンタブル技術、ファブリケーション技術が検討されているのが現状である。
したがって本書では、「プリンタブル有機エレクトロニクスの最新技術」と題して、第1章でプリンタブル有機エレクトロニクスの必要性とそれに期待するところを概説し、第2、3、4章で、プリンタブル有機エレクトロニクスの概念を生み出した印刷技術、特にスクリーン印刷技術ならびにインクジェット技術の基本を解説し、プリンタブル有機エレクトロニクスへの展開とその実際を紹介する。第5章では、真空蒸着を用いない各種パターニング技術、有機半導体のファブリケーション技術、塗布成膜技術などプリンタブルエレクトロニクスを支える技術をいくつか取りあげた。後半の第6章では、材料サイドから成膜が容易なポリマー材料、自己組織化が期待できる液晶半導体材料、ならびに低分子半導体材料とそれぞれに期待される電子デバイスについて、第7章でプリンタブルエレクトロニクスが期待される有機デバイスの要素技術とその現状ならびに将来技術動向を、それぞれの分野で第一線で活躍しておられる方々に執筆いただいた。
(「はじめに」より抜粋)
2008年11月 大阪大学 横山正明