医療用人工腎臓(ダイアライザ)の市場動向

日本では、2003年において23.7万人(腹膜透析を含む)の透析患者が治療を受けており、毎年8000〜1万人ずつ透析患者が増えている。人工透析患者は、週2〜4回、1回4〜5時間の透析治療が必要であり、生活上の制限や精神的にも苦痛を強いられている。また世界的には、110万人(日本を含む)の人工透析患者が存在すると言われている。

全国の人工透析患者数
年次 2001年 2002年 2003年
人工透析患者数 219,183人 229,538人 237,710人
前年比(%) 104.70% 103.60%
透析患者数の増加数(前年比) 10,335人増 8,172人増
出所:日本透析学会

■人工透析治療とダイアライザの特徴

人工透析治療は、人体の血液を体外に誘導し、半透膜を介して血液と透析液を接触させ、血液中の血球や有用蛋白質等は透過させずに、本来尿中に排出させる尿素、クレアチニン、尿酸等の老廃物を除去して、浄化された血液を体内に戻す療法である。
ダイアライザ(血液透析器)は、腎臓の糸球体に替わって機能するものであり、8000本〜12000本の中空糸膜が、束になって形成されている。
この小さな穴を介して体に不必要な老廃物や過剰な水分は透析液側へ排出し、体に必要な電解質等は体内に取り入れるようになっている。穴の大きさは、蛋白質、赤血球等は体外に排出しないようになっている。

■医療分野における高分子材料の概要

人工透析治療法で使用されるダイアライザ(血液透析器)の糸球体には、樹脂(ポリスルホン、他)製の半透膜が使用され、腎臓の透析治療が行われている。
ダイアライザに使用する半透膜の種類は、セルロース系(再生セルロース膜、半合成繊維のアセテート膜)、合成高分子系(ポリアクリロニトリル膜、ポリスルホン膜、ポリメチルメタクリレート膜、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリエステル系ポリマーアロイ)等が挙げられる。

■用途動向(2002年)

疾患別用途 販売量ウェイト(%)
慢性糸球体腎炎 48
糖尿病性腎症 28
その他 24
100
出所:富士キメラ総研
ダイアライザの用途先は、原因疾患別に見ると上記の表の通りである。
近年、糖尿病性腎症から、人工透析を導入する事例が年々増加しており、逆に、慢性糸球体腎炎から新規に透析導入を行うケースは、年々減少傾向を示している。
慢性糸球体腎炎とは、腎臓の糸球体(血液から尿をふるい分ける装置)に異常を来して発症する。慢性糸球体腎炎の多くは免疫の異常が原因であり、自分の糸球体の構造が破壊され、腎臓の働きが悪化する。先に糸球体に異常が発生し、腎臓に異常が生ずるのがこの病気の特徴である。
糖尿病性腎症とは、糖尿病が原因で腎臓が悪くなる病気である。糖尿病になると、腎臓や眼底等の全身の細かい血管が障害(細小血管障害)を受け、臓器の働きに異常が出てくる。この一部として糸球体や糸球体以外の腎臓の血管がおかされ、腎不全に至るのが糖尿病性腎不全である。
その他には、腎硬化症、多発性嚢胞腎、慢性腎盂炎がある。

■国内市場規模推移及び予測(2002〜2006年)

(単位:千本、%)
  2002年 2003年
見込
2004年
予測
2005年
予測
2006年
予測
販売数量 35,900 39,000 43,000 47,000 52,000
前年比 108.6 110.3 109.3 110.6
出所:富士キメラ総研
ダイアライザ市場は、2004年以降、前年比9〜10%増の伸長率で市場拡大が見込まれている。
2002年は3,590万本の実績があり、2006年に5,200万本に拡大(2002年比1.45倍)する見通しである。
金額ベースでは、2002年は1,078億円の実績があり、2006年には1,562億円に上昇すると予測している。

■研究開発・技術動向

企業名 技術開発 製品・技術概要
旭化成
メディカル
中空糸膜型モジュールを開発。 同社は、血液浄化療法に使用される体外循環用の中空糸膜型モジュールにおいて、放射線滅菌による中空糸膜の生体適合性の低下を抑制する製造方法を開発した。

同中空糸膜型モジュールは、放射線滅菌を行なっても、血液が透析材料に接触した時、血漿顆粒球エラスターゼ活性(白血球活性化の指標)の増加を低く抑えることができ、生体適合性が向上した。

中空糸膜の素材には、機械的強度や生体適合性の観点からポリスルホン等の樹脂が好ましい。


■採用素材動向(2002年)

用途先 販売量
ウェイト(%)
備 考
ポリスルフォン膜 32 中分子量・大分子量物質の除去性能が高い。生体適合性がよい。
セルロース系膜 30 分子量の高い溶質まで効率よく除去される。
PMMA膜 7 生体適合性がよい。
EVA膜 4 小中分子量の尿毒素物質の除去に優れている。
その他 27  
100  
出所:富士キメラ総研

■参入企業とメーカーシェア(2002年)

メーカー名 販売量ウェイト(%)
旭化成メディカル 33
ニプロ 21
東レ・メディカル 15
クラレメディカル/川澄化学工業 14
その他 17
合 計 100
出所:富士キメラ総研
旭化成メディカルのシェアが大きいのは、2002年にテルモからダイアライザ事業の営業権を譲受したことが起因しており、第2位のニプロ(2001年4月に(株)ニッショーから社名変更)との差を広げている。
旭化成メディカルは、生体適合性に優れるポリスルホン膜ダイアライザを中心に展開している。
旭メディカルは2004年10月1日より社名を「旭化成メディカル」に変更した。

企業名 生産設備動向
旭化成メディカル 同社はポリスルホン人工腎臓の生産能力を、現在の年産1,000万本体制から、2010年までに年産3,000万本の生産体制を計画している。

2004年1月に着工した年産400万本のポリスルホン紡糸設備(宮崎県延岡市)の稼働時期は2005年春、2004年11月着工予定の600万本の同設備(同市)の稼働を2005年秋に見込んでいる。

これらの設備が稼働すると同社のポリスルホンの総紡糸能力は、現在の2倍(年産2,000万本)体制に拡大する。今後、段階的な設備投資を実施し、年産3,000万本体制の確立を目指している。


ニプロのダイアライザは、中空糸膜にトリアセテートを使用した「FBシリーズ」、ポリエーテルスルホンを採用した「シュアライザーシリーズ」を販売展開している。
クラレメディカルが扱っている中空糸型人工腎臓の透析膜は、血液への適合性に優れたEVOH樹脂「エバール」が使用されている。
川澄化学工業は、クラレメディカルにダイアライザを供給し、自社ルートでも販売している。(中空糸膜はクラレが供給)

■今後の動向

ダイアライザ市場は、新規透析治療導入数の増加等から、今後も高い成長率で市場拡大していくとみられる。
参考資料:「2003年 メディカルマテリアル市場の現状と将来展望」
(2004年7月4日:富士キメラ総研)


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