発刊にあたって
エネルギーは恒常的に供給されなければならない。人類にとって、これほど重要なものはないであろう。人類の生存にとって環境もまた重要な切り口である。これまでに自然が与えてくれたエネルギーを利用して、科学技術の発展を進めてきた。しかし、科学技術の発展は、結果的にエネルギー不足と環境への大きな影響を生み出した。残念ながら、科学技術の発展において、あまりにもエネルギーを粗末に扱ってきたためである。このような社会的な状況の中でエネルギーの有効利用が重要な課題となっている。自然エネルギーを利用する。再生可能なエネルギーを利用する。その他にも多くの提案がなされている。共通していることは、最終的なエネルギーの形態は電気エネルギーとなっている点である。電気エネルギーによって最終的なエネルギーマネージメントを行うためには、どうしても電気エネルギーを蓄積しておき、かついつでも取り出せるような媒体が必要となる。このエネルギー媒体として二次電池が大きな注目を集めている。しかし、これまでの二次電池では十分に対応しきれない領域の性能を求められていることも確かであり、今後新しい技術や材料が必要となっている。
現在の電池のレベルは低い。大きく電池を変貌させていくことが求められる。新しい特徴を有する次世代の電池を考えると、今後さらなる技術や材料の展開が必要であることは間違いない。将来、ユビキタス的に電池が使用されることも予想されるが、そのためにはまずは電池の姿自体が大きく変化することが必要であろう。
本書は、全固体型二次電池、金属‐空気電池など、次世代型と目される電池開発の材料研究の第一線で活躍される方々にご執筆いただき、まとめたものである。この分野に関心を持たれる関係諸氏の一助となれば幸いである。
(「はじめに」より抜粋)
2009年12月 首都大学東京 金村聖志