発刊にあたって
熱可塑性エラストマー(Thermoplastic Elastomers:TPE)は、プラスチックの優れた加工特性と、エラストマーの特性を併せ持つ高分子素材である。熱可塑性エラストマーは、熱可塑性のある末端ブロックと弾性のある中間ブロックで構成されており、その構造と性質をみると素材としてはプラスチック(熱可塑性物質)とゴム(エラストマー)の中間に位置する。
熱可塑性エラストマー、合成ゴム、天然ゴムからなる、いわゆる高機能エラストマーと呼ばれる市場は、これまで自動車向けを中心に中国や東南アジアなど新興国の需要増加により拡大を続けてきた。すでに2014年には3つの需要を合わせると、市場規模は10兆円を突破し、2018年には11兆円を超えていると推定される。そのうち、熱可塑性エラストマーは約2兆円、合成ゴムが約5.4兆円、天然ゴムが約4.5兆円を占めている。今後もアジアを中心とする途上国における需要の増加により、市場の拡大が予想されている。
熱可塑性エラストマーの用途としては、ゴムの代替材料として提案されているケースが多く、低価格であるというコストメリットもあり需要は伸びている。特に約70%以上を占めると推定される自動車向けの用途では、内装の操作系部分、外装の窓枠部分、エンジンルームの密閉部分などに多く利用されている。また、工業製品や玩具、スポーツ用品、包装材・梱包材、歯ブラシやかみそりなどの衛生関連用品などにも用いられている。
本書は、上記の通り存在感を増す熱可塑性エラストマーの開発・市場動向についてまとめた。
【開発編】では、企業や大学にて精力的に研究・開発されている専門家の方々にお願いし、開発動向総論、オレフィン系、エステル系、ウレタン系、イソブチレン系、自動車部品への展開、構造・物性解析、ブロック共重合体、生分解性など、注目のトピックスを中心に執筆して頂いた。
【市場編】では、まず熱可塑性エラストマー全体の市場を分析し、さらに各種類ごとに掘り下げた。用途別需要動向についても大きく8分野に分けて徹底解説。最後に海外メーカーを含む主要メーカー動向についても調べあげた。
熱可塑性エラストマーの生産あるいは利用されている方々へ向けて、情報収集の一助となれば幸いである。
キーワード
熱可塑性エラストマー/オレフィン系(TPO)/スチレン系(TPS)/動的架橋型(TPV)/塩化ビニル系(TPVC)/塩素化ポリエチレン系(CPE)/ポリエステル系(TPC)/ポリウレタン系(TPU)/ポリアミド系(TPA)/シリコーン系(TPSE)/アクリル系/フッ素系/イソブチレン系/成形加工/生分解性/構造・物性解析/ブロック共重合体/市場動向/用途別需要動向(自動車用部品、工業用品、雑貨、建築・土木、樹脂改質剤・相溶化剤、スポーツ用品、医療材料、食品関連)/メーカー動向