21世紀注目市場−1:「バイオメトリクス」市場


私たちの日常生活において、パソコンやカードの普及により、ユーザを識別するためにIDとパスワードの組み合わせで本人かどうかの確認をされる場面が多くなっております。
ただ、こう言ったものは個人が記憶している情報に依存しているため、他人に転用されると言う欠点があります。特にネットワーク社会においては、盗聴等の手段でIDやパスワードが盗用されるケースも多くなっており、簡単に“なりすまし犯罪”やハッキングが発生する危険をはらんでいます。
そこで、他人に盗まれることのない本人だけの証拠(指紋、声紋、虹彩、サイン、顔、etc)を使いIDやパスワードに変えて、個人を特定しようとするバイオメトリクスが21世紀の大きなマーケットになろうとしております。


■ バイオメトリクスの定義

一般に、バイオメトリクスとは「行動的あるいは身体的な特徴を用い、個人を自動的に同定する技術」と定義されています。生体が固有に持つと言われている情報、または筆跡や音声など、行動として現れる特徴を利用して、本人認証の手段として用いることを指していますが、具体的には、もっとも普及している指紋にはじまって、人間の手だけでも指関節手の甲、掌形、掌紋など特徴として取れる情報は多く、顔を見ても、顔そのものに加えて目の虹彩や網膜、行動の特徴も含めるならば筆跡や音声など、一人の人間から取得できるバイオメトリクスとして使える身体の持つ固有の情報は多くあります。

■ バイオメトリクスの市場規模

指紋以外のバイオメトリクスの市場性は現在まだ未成熟なこともあり、今後2〜3年の間にユーザー市場の動きによって大方の方向性が決定されると思われます。下記に各認証情報別に予測されたマーケットを個別に解説させていただきます。
バイオメトリクス情報の説明
○ 指紋認証
2001年の現状としては、バイオメトリクスの国内市場は全体の9割弱が指紋認証関連の製品に占められており、2001年の32億6,000万円の市場から2007年には125億6,000万円と金額ベースでは約4倍の市場規模への成長が見込まれています。
また、数量ベースでは携帯電話への搭載が見込まれていることから、センサ数量ベースで大幅な伸びを見せ現状の45倍以上と2007年には340万個の需要が予測されています。今後は、センサおよび関連機器の低価格化を前提にした市場の急拡大が見込まれており、出入管理機器や情報セキュリティ機器において幅広い製品展開が期待できます。また指紋関連で参入するメーカーが多いことから製品としての完成度が高くなり、今後の市場においても指紋が市場全体を牽引していく形でバイオメトリクス市場全体の成長拡大が見込まれます。




○ 顔貌認証
指紋に次いで有望と見られる顔貌についても、出入管理やPCでの情報セキュリティとしてのアプリケーションの展開が見込まれております。2001年は1億円程度の市場規模でありますが、2007年には12億3、400万円の市場規模が予測されています。
指紋にはない特徴として、非接触インターフェースとしての用途が見込まれており、民生分野でマンションなどの出入管理やパソコンでのアクセス制御での用途拡大が期待できます。また、ユーザーに対しては、顔画像を取得されることに対しての心理的受け入れが懸念されていますが、一方セキュリティへの考え方が変わってくることで、むしろ顔画像による責任の所在を明確にするといったメリットが理解される環境へのユーザー意識の移行が期待されています。

○ 音声認証
音声についても非接触での活用が期待できます。現状で普及し始めている音声認識技術との複合用途としての展開が見込まれており、2001年の8、400万円の市場は2007年に3億7、000万円程度の市場へと拡大するが予測されています。

○ 静脈認証・掌形認証
静脈と掌形に関しては、あくまでも指紋と同じ土俵の上でのパイの取り合いが予測されます。静脈では指紋と比較して高い認証精度が実現できていることから、よりセキュアな環境での使用としての市場が見込まれています。2001年では市場に投入されはじめたばかりで2、400万円の市場でありましたが、2007年には11億5、000万円へと市場拡大が見込まれています。
掌形は簡易な登録や運用ができることが利点であり、アメリカ市場での導入実績が高いことが評価されていますが、今後は他のバイオメトリクス技術の成熟が期待されますから、現状の製品や参入ベンダ数だけで乗り切ることは厳しいと見られており、2001年で4、300万円から2007年にも5、700万円と低成長に留まると予測致しております。

○ 筆跡認証
筆跡認証は、ペンによる文字入力という日常に馴染んだ自然なインターフェースとしての使い方が注目されており、紙ベースでの各種書類への書き込み時に認証が行えることも想定されているなど、今後のアプリケーション展開に期待が持てる認証手段であります。現状ではパソコンおよびPDAなどのペン入力としての用途で、2001年に9、500万円の市場規模に留まっていますが、2007年には3億5、410万円の市場規模が予測されます。

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■ マーケット全体では
全体としては、2001年で37億800万円から、2007年に153億2,000万円と4倍以上の伸びが見込まれます。ようやく指紋での市場性が明確に見えてきました。まだ市場が始まったばかりの他のバイオメトリクスについては、未成熟であり、今後の展望については、2002〜2003年のユーザー市場の動きによって大方の方向性が決定されるとの見方が強く、多種多様な業界からの新規参入も期待されておりバイオメトリクス市場として一つの転機の時期として注目すべきでしょう。
よって他のバイオメトリクスに関して、総じて言えることは指紋を補完するかたちでのアプリケーション用途の開発が重要であると言え、その中で更なる市場の発展を見込むことが出来るでしょう。


■ セキュリティー以外への拡がりも期待
バイオメトリクスの拡がりには、いわゆる「セキュリティ」に留まらない発想が不可欠であります。 かつて見られた国内市場におけるバイオメトリクスの盛り上がりは「セキュリティ」においてのみ期待されたものでありました。バイオメトリクスにおいて再び注目される「セキュリティ」製品が市場の底支えする中で、今後さらなる市場拡大の要素として期待される「非セキュリティ」製品への展開こそがバイオメトリクス市場成長の核となる事でしょう。
また、そこで使われる技術や理論についても多種多様のものが絡み合った市場となり、そこに参入する企業の業種も多岐に渡り、バイオメトリクスの市場はセンサなどデバイス分野からアルゴリズムやシステムを構築するソフトウェアの分野、そして運用管理を行うサービス分野との連携が必要不可欠であり、現状では市場は小さいものの、既に複雑な市場様相への発展の兆しが見え始めております。

■ 有望分野展望
第4図はバイオメトリクス認証採用分野波及のイメージ図です。13の市場を掲げてありますが、この中で特に有望と考えられている市場は空港、自治体、アミューズメントと考えられます。



○空港は、’01年9月11日の米国同時多発テロ以降の対策として、パスポートへのバイオメトリクス導入が義務付けられる方向にあります。既に米国内の一部の空港、英国ヒースロー空港などではバイオメトリクス認証が導入されています。当然、日本国内も同様のシステムに移行するでしょう。
米国の場合はさらに、全国民の保護と、国家保安の観点から、バイオメトリクスによる認証登録を全面的に採用する方向にあります。

○自治体は、いわゆる電子政府やe-Japan構想の一つとして庁内業務の電子決裁化が進められています。ペーパーレスと、文書整理保管は、業務の効率化と、情報公開制度による対応を両立させるものであります。自治体庁内は、一般企業などに比べ情報化の遅れた分野でもありますので、LAN設備、1人1台のPC配布などを手始めに、2003年から2006年あたりにかけて情報化が進められると予測されます。特に電子決裁上、個人認証は“絶対的な必要性”があることや、自治体の“役所”として“万全”をアピールする必要性があること、簡単な操作で確実を期すこと、予算が付くこと、などの理由から5〜6年の間に全国規模で採用される分野であると思われます。バイオメトリクス情報としては指紋、顔貌が有望であります。

○アミューズメントは“ゲームセンター”いわゆる“ゲーセン”の機器であります。パチンコの“貯玉(ちょだま)”に類するメダルゲーム用、メダル預け払い機は”風営法”の規制と、カジノ気分(ギャンブル気分)を両立させる有効な機器であります。ネットゲームは、今後”ゲーセン“の機器として普及する筐体であると位置付けられ。未知の対戦相手と競う際、個人の証明(段位、パワー、クラスなどのアイデンティティ)が必要であますので、これを誇示することが対戦の楽しみでもあります。ネットとゲームというバーチャル環境でバーチャルな自己証明をするためにバイオメトリクス(指紋)が有効であると言えます。

■ まとめ
バイオメトリクス市場の今後を見通す上で、この3業種の有用性は特筆すべきものといえます。空港(パスポート)、自治体ともに社会インフラに関わる分野であり、業務の重要性は社会全体において頂点にあるものであります。

それに対し、アミューズメントはいわゆる“ゲーセン”です。この業種は全くの遊びの分野ですが、近似した娯楽施設であるパチンコのように、景品(現金)に換えるという物質的な見返りや、“生産性”も全くありません。バイオメトリクスというとセキュリティを想起しますが、これとは全く離れた位置付けの分野であります。しかし、純然たる“遊び”を楽しむという単純な環境が、逆に簡単で安価なシステムを受容する要因となって来ることが予測されます。

空港・自治体⇔アミューズメントは相反する分野でありますが、バイオメトリクスは双方を端緒として導入されて行くものといえます。アミューズメントという“軽い領域”に市場が見出せるということは、バイオメトリクス分野の採用分野が極めて広いという判断材料となります。

21世紀の有望市場として、注目していきたいと思います。

参考資料:「バイオメトリクス市場の将来展望」(2002年10月:富士キメラ総研)

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