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キャニスタはエンジンルーム内にあり黒い筒状の部品である。燃料タンクとエンジンの間に搭載され、ガソリン燃料等の蒸散を防ぐ機能を担っている。熱膨張した気化燃料を一次的にキャニスタに取り込み減圧することで、燃料経路の継ぎ目などからの燃料排出を防止する環境対策製品である。
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キャニスタの中には活性炭が入っており、燃料タンク内で発生した蒸気を吸収し、エンジンの回転に伴い吸気管に導かれ燃焼される仕組みとなっている。
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■自動車用キャニスタにおける使用材料の特徴 |
使用材料 |
販売数量シェア(%) |
PA |
98 |
その他 |
2 |
合 計 |
100 |
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キャニスタに使用する材料は耐衝撃性、耐振動性に優れているナイロン(PA66)樹脂が採用されており、一部GF(グラスファイバー)入りのPPなどの樹脂材料も検討されている。
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キャニスタに求められる気密性、耐熱性、耐衝撃性などの特性から、GF入りナイロンが最も適した材料として定着しつつあり、当面、GF/PAが主流になっていくと考えられる。
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■市場規模推移及び予測(2003〜2008年:ライン純正+市販輸出・補修)日本企業の販売数量ベース |
(単位:千個、%) |
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2003年 |
2004年 見込 |
2005年 予測 |
2006年 予測 |
2007年 予測 |
2008年 予測 |
ライン純正 |
10,600 |
10,700 |
10,700 |
10,600 |
10,600 |
10,500 |
前年比 |
― |
100.9 |
100.0 |
99.1 |
100.0 |
99.1 |
市販輸出・補修 |
320 |
330 |
320 |
320 |
310 |
300 |
前年比 |
― |
103.1 |
97.0 |
100.0 |
96.9 |
96.8 |
合 計 |
10,920 |
11,030 |
11,020 |
10,920 |
10,910 |
10,800 |
前年比 |
― |
101.0 |
99.9 |
99.1 |
99.9 |
99.0 |
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● |
キャニスタは自動車1台に1個搭載されるため、自動車の生産台数に連動した形で市場が推移している。環境対策部品として国内ではそれほど環境規制は厳しくないが、米国や欧州では環境規制に対応した仕様のキャニスタが存在している。
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● |
2003年は1,092万個、634億円の市場である。キャニスタの部品供給対応は、トヨタ自動車向けが主体の愛三工業、日産自動車向けが多いマーレテネックス、ホンダ向けは東洋濾機製造、三菱自動車向けのフタバ産業が主体に供給している。2008年は623億円(2003年比1.7%減)になると予測している。
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■研究開発・製品特性 |
企業名 |
技術開発 |
製品特性 |
ニッタ |
耐燃料透過性、耐衝撃性があり、耐久性、安全性に優れた燃料系部品を開発 |
キャニスタはガソリン蒸気を吸着し、外部へ逃がさないことが重要である。そのため、成形材料には燃料バリヤ性能が求められる。 同社は、単一成分の芳香族ポリエステル樹脂からなるスピノーダル分解型構造の構造体が主成分とした、燃料用キャニスタを開発した。このスピノーダル分解型構造は、結晶化度が異なる2種の領域が互いに共連続体を形成する構造をいう。 単一成分の芳香族ポリエステル樹脂からなるスピノーダル分解型構造を主成分とすることで、耐燃料透過性に優れると共に耐衝撃性に優れた燃料系部品が得られる。単一成分の樹脂とすることにより、クラックや(スジ)が極めて入り難くなる。 単一成分の芳香族ポリエステル樹脂は、例えば、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。芳香族ポリエステル樹脂は比較的、冷却温度によって結晶構造が変化し易く、結晶構造制御に比較的適していることが判明した。 中でも、PBN、PENは、他の樹脂と比較して耐燃料透過性が圧倒的に優れているほか、燃料バリア性や耐衝撃性も良好である。 特にPBNは、機械的強度や熱による体積変化率が小さいため、燃圧変化や温度変化が悪条件のもとで使用する燃料用コネクタや燃料用キャニスタなど、特に自動車用の燃料系部品への採用に適している。 |
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■参入企業とメーカーシェア(2003年:日本企業の販売数量ベース) |
メーカー名 |
販売数量ウェイト(%) |
愛三工業 |
43 |
マーレテネックス |
19 |
東洋濾機製造 |
13 |
フタバ産業 |
9 |
その他 |
16 |
合 計 |
100 |
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愛三工業は、ポンプモジュールにキャニスタを一体化した「キャニスタ一体ポンプモジュール」を世界に先駆けて製品化しており、省スペース化と軽量化(従来品と比較して30%軽減)を実現している。
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● |
フタバ産業は、三菱自動車工業、東洋紡績と共同でエアバック布端材の再生材を利用して、燃料タンクから発生したガソリン蒸気を一時的に吸収するキャニスタケースを開発した。製造コストは従来品と比較して10%低減できるほか、衝撃強度が従来品に対して2.5倍に向上する。
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● |
その他メーカーには日立製作所、デンソーなどが参入している。
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■今後の動向 |
● |
米国、欧州規制に対応したキャニスタは、各メーカーから既に商品化されており、日本でも今後規制が強化していくことが予想されており、国内向けの製品についても欧米の規制値をクリアした製品に切り替わっていくと見ている。
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日系企業の海外生産シフトに伴い、キャニスタメーカーの現地工場において設備増強が行われており、中国、米国、欧州などでの生産が今後増大していくと予想している。
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参考文献:「2004年版 自動車部品マーケティング便覧」 (2004年4月21日:富士キメラ総研)
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