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道路における環境問題への関心が高まる中、騒音問題に対する地域住民の要望が増加し、防音壁は騒音防止対策資材として広く利用されている。
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騒音防止技術の向上をはじめ、電波障害対策、景観性、日照対策などを考慮した製品が開発されている。また、日照阻害問題等、高さに制限のある場所では、より高い防音機能を付与するための防音装置も開発されている。
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■用途動向(2003年ベース) |
用途 |
販売量ウェイト(%) |
道路 |
90 |
鉄道 |
4 |
その他 |
6 |
合 計 |
100 |
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高速道路を始めとした有料道路の需要がメインである。騒音対策ニーズの増加に伴って、都市部の住宅に密接した道路、幹線道路などへの採用が広まっている。
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鉄道関係では新幹線向けの防音対策需要がメインであるが、都市部における鉄道高架化に対応した需要増が見られる。その他には、建設工事現場、工場・事業所の防音対策、交通量の多い国道に面した学校、病院、マンション向けの騒音対策の外壁として採用されている。
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■防音壁における材料特性 |
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防音壁に使用される主要材料は、従来から金属パネルタイプが中心である。その次に多いのは樹脂板を使用した透明板タイプである。通常、透明板にはPC樹脂が使用されているがPMMA樹脂やガラスなども採用されている。
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高架式道路の防音壁需要の増加は見られるが、コンクリート系防音壁は重量があり、採用ウェイトは落ちている。鉄道向けがメインとみられる。
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部材別使用素材の傾向(主な部材の使用素材は以下の通りである) |
部材 |
使用部位 |
素材構成 |
金属パネル (標準型) |
正面板 |
アルミニウム板 (JIS H 4000 A5052P) |
背面板 |
溶融亜鉛メッキ鋼板 (JIS G3302 SGH400-Z27) |
側面板 |
溶融亜鉛メッキ鋼板 (JIS G3302 SGH400-Z27) |
吸音材 |
グラスウール (JIS A6306) |
吸音材の保護フィルム |
ETFE、PVF等 |
端部シール |
クロロプレンゴム |
透明板 |
板 |
PC樹脂、PMMA樹脂、ガラス |
枠材 |
アルミニウム合金 |
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■市場規模推移及び予測(2003〜2007年)日本メーカーの出荷量ベース |
(単位:千m2、%) |
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2003年 |
2004年見込 |
2005年予測 |
2006年予測 |
2007年予測 |
販売数量 |
994 |
997 |
1,000 |
1,003 |
1,005 |
前年比 |
― |
100.3 |
100.3 |
100.3 |
100.2 |
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日本の防音壁設置工事は1973(昭和48)年から本格化しており、世界でもトップクラスの整備規模を誇っている。従来から金属パネルの防音壁が使用されてきたが、近年は透明な樹脂パネルのウェイトが増えている。
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2003年の防音壁市場は99.4万m2、約157億円と推定される。2005年以降は横ばい傾向が続いていくと見ている。2008年は148億円(2003年比5.7%減)と予測している。
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交通量の増加に加え、社会的に騒音に対する意識が厳しくなっているため、道路や鉄道などで採用箇所が増えている。新設道路の建設件数が伸び悩んでいるが、第二東名高速道路など局所的ではあるが大型案件も見られる。
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■研究開発・製品特性 |
企業名 |
技術開発 |
製品特性 |
日本ガイシ |
透光性、透視性が大きく、吸音・遮音性を備えた防音板の改良 |
従来、防音壁には、金属製の箱形枠にグラスウールなどの吸音材を音源(車道)側に配置し遮音板とした非透光性防音壁や、ポリカーボネートなど透明プラスチックパネルを用いた透光性防音壁が設置されている。 非透光性防音壁は、吸音性、遮音性に優れているが日照や視界を妨げるという課題があり、透光性防音壁は、吸音性が低く騒音低減効果は小さいという課題がある。 同社が開発した透光性防音板は、透光性膜材(フッ素樹脂系フィルムやポリエステル、PP、PVC、PE、酢酸ビニル、ポリビニリデンなどのフィルムを適宜に使用)を、2枚の透光性開口平板(表裏に連通する多数の円形の開口部を設けた)で挟んだ積層体からなる透光性吸音材(下記の図を参照)と、背後空間を隔てた透光性遮音材がパネル枠材に組み立てられている。 透光性膜材の厚さは、厚すぎると膜振動が生じにくくなり吸音率が低下し、また薄すぎると破損し易くなるが、通常6〜2000μmが適している。 透光性開口平板には、ポリカーボネート(PC)など透光性のある樹脂平板を用い、開口率は20%以上、40%未満とし、平板に円形の穴が多数明けられている。また隣接する開口部間の縁間距離は3mm以上になるように設定している。
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透光性吸音材の断面構成
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上図の2枚の透光性開口平板は、開口部の形状、寸法、ピッチが実質的に同一条件とし、その中心軸を一致させて、2枚の透光性開口平板の開口部を重ね合わせた状態にしている。 その結果、透光性防音板を構成する吸音材(膜材)、開口平板、遮音材は透光性素材が採用されているため、透光性が従来比1.5〜2倍に向上した。 また、吸音材の開口部に音波が入射すると透光性膜材が振動する。その周辺部は、均質に接触している膜材と開口平板(非開口部)との摩擦で吸音作用が円滑に行われる。従って、吸音率は従来(開口率50〜80%のエキスパンドメタルタイプ)比、10〜20%向上している。 |
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■参入企業とメーカーシェア(2003年国内ベース) |
メーカー名 |
販売数量シェア(%) |
日鐵建材工業 |
16 |
積水樹脂 |
15 |
日本板硝子環境アメニティ |
8 |
JFE建材 |
7 |
その他 |
54 |
合 計 |
100 |
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金属パネルメーカーが当該市場の上位にランクされる。日鐵建材工業、積水樹脂、日本板硝子環境アメニティの3社は、金属タイプ、透明板タイプの市場において代表的な企業として位置付けられる。
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積水樹脂はマレーシアで防音壁の生産・販売を行う合弁会社「JISRONマレーシア」を設立している。
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■今後の動向 |
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防音壁は防音対策資材として認知され広く普及している。騒音対策ニーズが高まる中、道路の建設件数は伸び悩んでおり、その需要トレンドは横這い推移となっている。騒音対策は道路と密接な関係があり、取り替え需要を含め防音壁は今後も一定の需要が見込まれる。
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参考文献:「2004年 道路関連市場の現状と将来展望」 (2004年4月28日:富士キメラ総研)
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