コンクリート補強用シートの市場動向

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コンクリート補強用シートとは、炭素繊維やアラミド繊維、ガラス繊維などを一方向又は二方向に配列した連続繊維シートのことである。樹脂を用いてコンクリート表面に貼り付けることで曲げ耐力、疲労寿命、耐震性などを向上させ、ひび割れ抑制にも効果がある。

また軽量性、強度、弾性、耐久性、耐蝕性等の諸特性に優れ、様々な形状の構造物に貼り付けられることや、補強厚さが薄く建築限界等の支障が少ないことも特徴となっている。また、重機を必要とせず限られた空間での施工が可能で、養生期間削減など工事の簡便化や工期短縮に貢献する。

■用途動向(2003年ベース)

用途分野 販売量ウェイト(%) 主な採用先
道路 橋梁 54 橋脚、床版、桁等
トンネル 12 道路トンネル、鉄道トンネル
建築 16 建物の柱・梁・スラブ・壁など
その他 18 煙突、電柱、水路、水槽、共同溝、ダム、桟橋、護岸壁等の港湾構造物など
合 計 100
出所:富士キメラ総研
橋梁用途がメインであり部位的には橋脚用と床版用の需要が多い。以前は7〜8割が橋脚補強であったが近年は3〜4割にウェイトを下げ、床版補強のウェイトが上昇している。橋脚の耐震補強が一段落したこと、橋脚よりも床版の施工面積が広いことが増加要因に挙げられる。

新設/改修で分けると9割以上が改修向けと推測される。補強以外にも、トンネルのコンクリート剥落事故が多発したことを受け、コンクリートの剥落防止、ひび割れ防止を目的に採用されるケースも増加している。

■コンクリート補強用シートにおける材料特性

使用素材 素材別使用量ウェイト(%)
炭素繊維PAN系 76
炭素繊維ピッチ系 14
アラミド繊維、ガラス繊維、他 10
合計 100
出所:富士キメラ総研

コンクリート補強用シートに使用される繊維素材には炭素、アラミド、ガラス等があり、主に炭素繊維が採用されている。炭素繊維はPAN系とピッチ系があり低価格帯のPAN系の採用が中心である。ピッチ系は高弾性ニーズが強い場合に採用されている。

アラミド繊維は炭素繊維に比べ強度が劣るが絶縁性、高靱性などが優れている。主に鉄道トンネルや靱性補強箇所に使用されている。耐震補強には曲げ補強、せん断補強、靱性補強などがあり、炭素繊維は曲げ補強とせん断補強に、アラミド繊維は靱性補強に強みがある。

その他の材料にはガラス繊維、超高分子量PE繊維などがある。シートの接着には通常エポキシ樹脂が使用されている。

■市場規模推移及び予測(2003〜2007年)日本メーカーの出荷量ベース

(単位:t、%)
  2003年 2004年見込 2005年予測 2006年予測 2007年予測
販売数量 430 460 490 520 550
前年比 107.0 106.5 106.1 105.8
出所:富士キメラ総研
2003年のコンクリート補強用シート市場は430t、44億円である。2007年は54億円(2003年比1.23倍)に拡大すると推定している。

耐震補強を目的とした橋脚用需要は阪神大震災後急増した反動から、2004年以降伸長率は落ち着いた動きになっている。替わって床版補強需要が増加しメインの用途になっている。

予算削減を背景として、既設構造物を改修することで長寿命化を目的としており、コンクリート補強用シートの需要は今後も増加傾向で推移すると予測される。

■研究開発・製品特性

企業名 技術開発 製品・技術特性
日鉄コンポジット 格子状のFRP部材を用いたコンクリート剥落防止工法を開発
 従来、コンクリートの剥落防止方法は、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等の強化繊維シートにエポキシ樹脂等を用いて、コンクリート表面に含浸・接着させるFRPライニング工法が採用されてきた。
 同工法は下地ケレンや強化繊維シートの含浸など、作業工程が多く工事費用がかさむことが課題となっていた。また、コンクリートの表面全面を覆って貼り付けるために、施工後のひび割れ状況の確認が難しいなど、コンクリートの耐久性が懸念されている。
 そこで、同社はFRP格子筋をアンカーボルト、接着樹脂等でコンクリート構造物に取り付ける施工法を開発した。このFRP格子筋は、垂直に交差して、格子状に配置された複数の補強筋(縦補強筋と横補強筋)から構成されている。各補強筋は、例えばガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維を一方向に並べて、ビニルエステル樹脂等のマトリクス樹脂を含浸・積層して成形加工されている。
 同社が開発した繊維強化樹脂に使用される材料は、強化繊維に無機繊維(炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維等)、金属繊維(ボロン、チタン、スチール等)、有機繊維(アラミド、ポリエステル、PE、PA、PBO、高強度PP等)が使用できる。一方、マトリクス樹脂は、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、PA樹脂、常温硬化型エポキシ樹脂、熱硬化型エポキシ樹脂、PC樹脂、MMA樹脂から選択できる。
 このコンクリート剥落防止工法の応用分野は、トンネルや建物の梁・柱・桁・壁・床板、煙突、給水槽等のコンクリート構造物の新設及び補強等の用途に適している。

■参入企業とメーカーシェア(2003年国内ベース)

メーカー名 販売量シェア(%)
日鉄コンポジット 51
三菱化学産資 21
東レ 16
その他 12
合 計 100
出所:富士キメラ総研
日鉄コンポジットがトップに位置している。同社は炭素繊維を中心とした複合材メーカーでありコンクリート補強・補修事業を主に展開している。

2位には土木資材等を扱う三菱化学産資が続く。2001年4月に三菱化学から当該事業が移管され事業を継承している。上位2社は材料だけでなく工法面からの施工提案が強みになっている。

■今後の動向

耐震補強ニーズの増加に伴って認知度が広まり、比較的新しい工法にもかかわらず高く評価されている。従来の増厚工法や鉄板接着などに比べ、施工が容易(重機不要、材料が軽い等)で、腐食の心配が無いなどのメリットがあり、近年では床版補強ニーズが増加している。

参考文献:「2004年 道路関連市場の現状と将来展望」
(2004年4月28日:富士キメラ総研)


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