● |
ポリブチレンテレフタレート(PBT)はテレフタル酸と1,4-ブタンジオールを縮合重合して製造される。融点が228℃であり、熱安定性や寸法精度、電気特性に優れ、難燃化も容易で電気電子部品(コネクタ等)や自動車部品などに幅広く利用されている。
|
|
■世界市場におけるアジアエンプラ市場の位置付け(2003年ベース) |
市場区分 |
国・地域 |
構成比(%) |
販売量 |
位置付け |
アジア合計 |
日本 |
19.9 |
112千t |
29.7万t 52.8% |
中国 |
16.0 |
90千t |
その他のアジア (台湾、韓国、ASEAN)他 |
16.9 |
95千t |
その他 |
欧州、米国 |
47.2 |
265千t |
47.2% |
世界市場 |
合計 |
100.0 |
562千t |
100.0% |
|
● |
PBT樹脂の世界需要は2003年に56.2万tに達しており、そのうちアジアは29.7万tと世界需要の半数を超えている。特に中国は高い伸び率で拡大し9万tに達している。中国市場の伸びがアジア市場の拡大を牽引している。
|
● |
更に日本の販売量11.2万tに対して、中国とその他アジア(特に台湾は大手コネクタメーカーが集中しており、PBTの需要量は約5万tと見られる。)の販売量が追いついてきている。
|
|
■用途動向(PBT のアジア市場における用途構成) |
用途先 |
販売量 ウェイト(%) |
主な用途例 |
電気電子部品 |
61 |
スイッチ、コネクタ、プラグ、モーター部品、ハウジングなど |
自動車部品 |
23 |
イグニッションコイル、スイッチ、ランプリフレクタ、リレーなど |
フィルム・押出 |
6 |
シュリンクラベル、容器トップフィルム、PBTラミネート紙など |
その他 |
10 |
事務機器、住宅用壁材、水道関連部品など |
合計 |
100 |
  |
|
● |
電気電子部品では主に電気特性、難燃性の観点からスイッチ、コネクタなどに採用されている。難燃規制があり、難燃タイプが多く使用されている。
|
● |
自動車部品では、耐熱性、剛性、靭性、電気特性などが優れておりイグニッションコイル、スイッチなどに採用されている。
|
● |
また、最近ではPC、ABS、PETとアロイ化して使用するケースがある。PBT/PCアロイは耐薬品性が求められる部品に採用されている。
|
|
■PBTのアジア市場規模推移及び予測(2003〜2008年) |
(単位:千t、%) |
|
2003年 |
2004年見込 |
2005年予測 |
2006年予測 |
2007年予測 |
2008年予測 |
販売数量 |
297 |
321 |
346.7 |
374.9 |
406.3 |
440.9 |
前年比 |
― |
108.1 |
108.0 |
108.1 |
108.4 |
108.5 |
|
● |
アジアのPBT市場は2003年に29.7万tの実績があり、2005年以降は年率8%台の高い伸長率で市場拡大が予測されている。2008年には44.1万t(2003年比1.48倍)に上昇すると推定している。金額ベースでは2003年は1,310億円の実績があり、2008年には2,071億円(同1.58倍)に増加すると予測している。
|
|
■研究開発・技術動向 |
企業名 |
技術開発 |
開発技術の特徴 |
カネボウ |
PCシートの耐薬品性をPBT樹脂等で改善 |
自動販売機内に陳列されている飲料製品などのダミー缶は、透明なケースの中で直射日光を浴びるため、約90℃の温度で変形しないことが要求される。また成形品(ダミー缶)はディスプレイ効果の向上を狙い、成形品表面に光沢を与えるため裏印刷を行うので、フィルム素材は高い透明性が不可欠である。 更に、勘合部分等は複雑な形状になっており、熱成形加工適性が求められる。その他には印刷時の溶剤によるソルベントクラックが発生しないこと、熱成形加工により高倍率に延伸しても印刷されたインクが充分な強度で密着していることが求められる。 これらの課題を解決するための手段として、PC系樹脂マトリックスの中に500nm以下のサイズでPBT樹脂を微分散させることが必要である。(特にPBT樹脂のサイズは、可視光波長領域以下の400nm以下が最適である。) また、溶融状態のポリマーを急冷して製造したPCシートの特徴は、微分散しているPBT樹脂が結晶化していることが挙げられる。 従ってPBT樹脂を用いて開発したPCシートは、耐薬品性、透明性、機械物性、熱成形加工適性が優れており、シート成形品に対する印刷、熱成形適性は良好である。例えば、自動販売機用のダミー缶製造用のシート材料として適している。 |
|
■参入企業とメーカーシェア(2003年) |
【PBT のアジア市場】 |
メーカー名 |
販売量シェア(%) |
ウィンテックポリマー |
32 |
三菱エンジニアリングプラスチックス |
16 |
ジーイープラスチックス |
12 |
東レ |
10 |
その他 |
30 |
合 計 |
100 |
|
● |
2003年のアジアPBT市場において、ウィンテックポリマーは「デュラネックス」(商品名)を9.5万t販売し首位につけている。2位以下は三菱エンジニアリングプラスチックス「ノバデュラン」、ジーイープラスチックス「バロックス」、東レ「トレコン」が続いている。その他のメーカーには、三菱レイヨン「タフペットPBT」などが参入している。
|
|
■今後の動向 |
● |
汎用の電気製品から大型ハイテク製品まで中国への生産シフトが進展し、今後ますますPBT需要は中国、アジアに集中する傾向にある。
|
● |
PBTはPAのように広範な用途に供給されるのではなく、電気電子・自動車部品の比率が高いエンプラである。そのため用途開発が強く求められており、単独のPBT樹脂の需要分野からABS、PET、PCとのアロイ化を進めることで、従来のABS等では十分な対応ができていなかったコンパウンド市場においてPBTの需要増が期待されている。
|
|
参考文献:「2005年 中国・アジアプラスチック市場の現状と将来展望」 (2004年10月29日:富士経済)
|
|