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ポリフェニレンサルファイド(PPS)は、耐熱性、難燃性、耐薬品性に優れている他、寸法安定性があり高温環境下での体積変化がしにくいなどの特徴がある。用途先は自動車のエンジン周辺の電装部品やDVD用光ピックアップ、石炭火力発電所の集じんフィルターなどの用途で需要が拡大している。
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■世界市場におけるアジアエンプラ市場の位置付け(2003年ベース) |
市場区分 |
国・地域 |
構成比(%) |
販売量 |
位置付け |
アジア合計 |
日本 |
30.9 |
17千t |
3万t 54.5% |
中国 |
10.9 |
6千t |
その他のアジア (台湾、韓国、ASEAN)他 |
12.7 |
7千t |
その他 |
欧州、米国 |
45.5 |
25千t |
45.5% |
世界市場 |
合計 |
100.0 |
55千t |
100.0% |
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● |
PPS のアジア地域における需要は2003年に3万tである。世界需要5.5万tに対して、アジア地域の販売量は半数を超えている。アジア市場の中で日本の販売比率は56.7%と高く、2001年から2003年までの年平均伸長率は19.0%増で拡大した。中国は2003年に6,000tの需要があり、2004年は7,200t(前年比20%増)に上昇すると推定している。
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● |
その他アジアでは2003年にASEANが3,000tの需要があり、シンガポール(フィリップスなどが需要家となっている)の販売量は1,000tを越えている。台湾のPPS需要は2,000tと見られる。
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■用途動向(PPS のアジア市場における用途構成) |
用途先 |
販売量 ウェイト(%) |
主な用途例 |
電気電子部品 |
62 |
光ピックアップ、コネクタ、シリコンウェハーキャリア、チップトレイ、モーター・トランス用絶縁材料、フィルムコンデンサ等 |
自動車部品 |
23 |
イグニッションコイル、オルターネータブラッシュ、スラストワッシャー、ショック緩衝材、ATシールリング、MTシフトフォークパット、スロットルボディギア、ABSパーツ、オートエアコンコントロールユニットのギア、オイルフルター、エアフローピストン等 |
産業機器部品 |
9 |
コンプレッサーバルブ、シール等 |
その他 |
6 |
繊維、フィルム、水回りパイプ、医療器具部品、食品製造用部品、コーティング等 |
合計 |
100 |
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● |
アジアのPPS需要は電気電子部品と自動車部品の販売量ウエィトを合わせると85%を占める。
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● |
コネクタ、自動車オルタネータなどの主要用途に加え、光ピックアップやプロジェクションTV、家庭用プロジェクションTV、リアプロジェクションTVなどの需要が伸びており、PPS樹脂の用途が広がっている。
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■PPS のアジア市場規模推移及び予測(2003〜2008年) |
(単位:t、%) |
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2003年 |
2004年見込 |
2005年予測 |
2006年予測 |
2007年予測 |
2008年予測 |
販売数量 |
30,000 |
32,450 |
34,800 |
37,300 |
40,000 |
42,900 |
前年比 |
― |
108.2 |
107.2 |
107.2 |
107.2 |
107.3 |
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● |
アジアにおけるPPS市場は2003年に3万tの実績があり、2008年には4万2,900t(2003年比1.43倍)に上昇すると予測している。2005年以降は年率7%程度の伸びで拡大すると予測している。
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● |
金額ベースでは2003年は242億円であり、2008年は366億円(同1.51倍)に成長すると推定している。
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■参入企業とメーカーシェア(2003年) |
【PPS のアジア市場】 |
メーカー名 |
販売量シェア(%) |
大日本インキ化学工業 |
27 |
東レ |
25 |
ポリプラスチックス |
25 |
東ソー |
9 |
その他 |
14 |
合 計 |
100 |
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* |
PPSのシェアはコンパウンド(インジェクション分野)とノンインジェクション分野を合計した販売量を対象として算出している。
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● |
上位3社は25%以上のシェアを獲得しており、アジア市場ではこの3社の販売量は拮抗している。その他のメーカーには、出光興産などが参入している。出光興産は光学系グレード、ピックアップ用グレード、精密部品向けグレードに強いPPSを販売している。
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● |
大日本インキ化学工業は、2008年を目途に自動車(電装部品など)向けを中心として、PPS樹脂の生産能力を2万tに引き上げる計画である。(PPSの生産は子会社のディーアイシー・イーピーが、鹿島工場と袖ヶ浦工場で展開。2006年の鹿島工場、袖ヶ浦工場の生産能力は共に年産5,000tであるが、袖ヶ浦工場の生産能力は2008年に同15,000tに高めていく。)
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■今後の動向 |
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参入メーカーは積極的な設備投資を行い、生産能力の増強を進めている。アジアのPPS需要は、2005年以降7%(数量ベース)台の伸長率で市場拡大を遂げていく。今後は電気自動車やハイブリット自動車向けの用途開発が進んでいくと見ている。
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参考文献:「2005年 中国・アジアプラスチック市場の現状と将来展望」 (2004年10月29日:富士経済)
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