■ワールドワイドの用途別需要構成 2005年販売数量ベース |
用途 |
構成比(%) |
主な用途例 |
板・丸棒 |
54 |
運搬関連部材、産業機械部品、スポーツ関連部材など |
バッテリセパレータ |
29 |
自動車用鉛蓄電池セパレータなど |
繊維・フィルム |
12 |
船舶ロープ、漁網、釣り糸、防弾チョッキなど |
その他 |
5 |
ゴムや樹脂の改質、フィルタなど |
合計 |
100 |
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● |
板・丸棒向けは、主に耐衝撃強度の付与を目的にバラ積運搬船内のライニング用途などで、大量のUHMW-PE需要があり最も販売比率が高い。また、UHMW-PEのマーケットステージは既に成熟段階に入っている。
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■超高分子量ポリエチレンの材料動向 |
● |
超高分子量ポリエチレン(Ultra High Molecular Weight Polyethylene)は、通常2~30万の分子量を100~700万に高めたポリエチレンである。UHMW-PEの化学組成は汎用PEと同じであるが、分子量が汎用PEの10倍以上あり、耐衝撃性、非付着性、耐摩耗性、耐薬品性などが優れている。
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■市場規模推移及び予測(2005~2008年、2010年 世界/国内需要) |
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2005年 |
2006年見込 |
2007年予測 |
2008年予測 |
2010年予測 |
世界販売数量 |
67,800 |
69,900 |
72,100 |
74,400 |
79,300 |
前年比 |
― |
103.1 |
103.1 |
103.2 |
― |
国内販売数量 |
4,600 |
4,700 |
4,800 |
4,900 |
5,100 |
前年比 |
― |
102.2 |
102.1 |
102.1 |
― |
国内販売比率 |
6.6 |
6.5 |
6.5 |
6.2 |
6.4 |
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● |
UHMW-PEの世界市場は丸棒・板用途の需要は成熟しているが、バッテリセパレータや繊維・フィルム用途の需要は底堅く、今後もUHMW-PEの世界販売数量(ニートレジンベースの販売量)は年率3%程度の伸長率で拡大が予想される。
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● |
2005年の超高分子量ポリエチレン樹脂の世界販売数量は6万7,800tで、販売金額は407億円である。2010年には476億円(2005年比1.17倍)に拡大すると予測している。
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■参入企業とメーカーシェア(2005年 世界需要) |
メーカー名 |
販売数量ウェイト(%) |
ティコナ(ドイツ) |
62 |
ポリアルデン |
17 |
DSM(オランダ) |
12 |
その他 |
9 |
合 計 |
100 |
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● |
UHMW-PE市場の大手メーカーは、欧州・米国向けを中心に事業展開している欧米メーカー3社(ティコナ、ポリアルデン、DSM)である。
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● |
ティコナは板・丸棒やバッテリセパレータ向けで採用実績が多く、世界最大手のメーカーである。
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■研究開発・技術動向 |
企業名 |
技術開発 |
技術概要 |
独立行政法人 物質・材料研究機構 (物材機構) |
UHMW-PEを高速でコーティングする技術を開発 |
物材機構は、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)の粉体を適度に加熱・加速して大気中で材料劣化を起こすことなく、高速でコーティングできるスプレー技術を2008年3月に開発した。 UHMW-PEは流動性が乏しいため、従来、粉体を溶融・流動させてコーティングする技術が利用できなかった。 例えば、加熱して吹き付ける従来の溶射技術では成膜時の材料の熱的劣化が避けられない。また、有機溶剤に分散させる塗装技術では環境負荷が大きいなどの問題がある。 そこで物材機構は、大気中の溶射プロセスにおいて、プラスチック材料の熱物性に合わせた加熱方法を見直し、従来よりも低温で長時間の加熱・加速が可能なスプレーガン構造を開発している。 物材機構が開発したUHMW-PEのコーティング技術は、薄膜製造プロセスにおいて熱的劣化を抑制でき、厚さ50μmの薄膜において水の浸透を遮断することが確認できた。 このコーティング技術の用途としては、印刷機などの各種ロール向け樹脂カバー、化学プラント、海洋構造物の金属材料向け耐環境コーティングなどへの適用が考えられている。 |
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■今後の動向 |
● |
近年、欧米系加工業者のアジア地区への進出に伴い、中国を中心としたアジア市場では、板・丸棒や自動車用鉛蓄電池セパレータ用途でUHMW-PE樹脂の需要拡大が見込まれている。
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● |
UHMW-PEはコンパウンドにすることが困難であり、主にプレス成形や押出成形で加工されている。現状では成形加工に時間がかかるという問題点がある。今後は成形時間の短縮が課題となっている。
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参考文献:「2006年 エンプラ市場の展望とグローバル戦略」 (2006年6月5日:富士経済) |
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