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ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムは、帝人が1989年に独自技術で開発した製品「テオネックス(ブランド名)」である。物性的には耐熱性が高く(樹脂のガラス転移点121℃、機械特性160℃、電気特性180℃)、PETフィルムと同様に性能面でバランスのとれた材料である。
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PEN樹脂を二軸延伸法で製造したPENフィルムは、優れた機械特性、耐熱性、耐薬品性があり、磁気テープ、強磁性薄膜テープ、写真フィルム、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、金属ラミネート用フィルム、ガラス製の表示機器の表面に貼るフィルム、各種部品の保護フィルム等の材料として広く利用されている。
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■用途別需要構成 2005年 国内販売数量ベース |
用途 |
構成比(%) |
具体的用途例 |
LTO用磁気テープ |
46 |
磁気記録用テープ基材など |
自動車用 |
26 |
モータ絶縁材、ワイヤーハーネス代替FPCなど |
電気・電子部品用 |
14 |
フィルムコンデンサ、燃料電池、FPDなど |
その他磁気記録用 |
14 |
APS(アドバンストフォトシステム)フィルムなど |
合計 |
100 |
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PENフィルムは主に磁気記録テープ用の基材フィルムとして採用されている。特にLTO(リニアテープオープン)向けの磁気テープ用途が最も多く国内市場では46%を占めている。
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■市場規模推移及び予測(2005~2009年 国内需要) |
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2005年 |
2006年見込 |
2007年予測 |
2008年予測 |
2009年予測 |
販売数量 |
3,850 |
4,000 |
4,300 |
4,800 |
5,100 |
前年比 |
- |
103.9 |
107.5 |
111.6 |
106.3 |
販売金額 |
15,600 |
16,200 |
17,800 |
19,500 |
20,500 |
前年比 |
- |
103.8 |
109.9 |
109.6 |
105.1 |
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2005年のPENフィルムの国内販売数量は3,850t、金額では156億円である。2009年には205億円(2005年比1.31倍)に拡大すると予測される。
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主力の磁気記録用テープ(LTO)向けの需要が拡大基調にあることや、電気・電子部品用途、自動車等の新規需要の開拓が進んでいるため、2006年以降は市場の拡大が予測される。
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■研究開発・技術動向 |
近年は、液晶ディスプレイに代表される画像表示装置に替わり、表示装置の薄型化、軽量化、大画面化、形状の自由度の高さ、曲面表示などが求められている。 また、ガラスの欠点である割れ易さや重さを改良しフレキシブル化する要求が高まっている。 そこで、これらの要件を実現する表示装置として有機ELディスプレイが注目され、積極的に開発が進められている。 また材料面からの技術開発として、フィルム基板にはPP、PET、PEN、PCなどの樹脂が検討されてきた。これらの高分子フィルム基板は、ガラス基板と較べて一般にガス(酸素)や水蒸気を透過しやすいという特徴がある。 例えば、有機ELディスプレイや電子ペーパーなどのフィルム基板を開発する場合には、水分や酸素の影響を受けにくい素材開発が不可欠である。 従って、有機ELディスプレイには高いガスバリア性を有する高分子系のフィルム基板が採用されている。しかしフィルム基板には更にガスバリア性を高めた層を積層することが求められている。(従来の塗膜層ではポリエステル基材フィルムとガスバリア層との接着が不充分であるため、高度なガスバリア性が得られていないのが現状である。) これらの課題を解決するためには、フィルム基板の材質面や膜厚、積層構成など様々な研究開発が重要になっている。 |
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■参入企業とメーカーシェア(2005年 国内需要) |
メーカー名 |
販売数量ウェイト(%) |
帝人デュポンフィルム |
100 |
合 計 |
100 |
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PENフィルムは帝人が世界で初めて開発した製品であり、当該製品の生産は米国デュポン社との合弁会社である帝人デュポンフィルムのみが行なっている。
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帝人デュポンフィルムは磁気記録用テープに依存せず、新規用途の開拓を積極的に進めている。中・長期的な技術開発のビジョンを描きながら、有機ELディスプレイ用の材料にバリア性を付与したフィルムなどの研究開発を行っている。
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■今後の動向 |
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PENフィルムの主要用途先であるLTO製品は、情報記録分野で磁気テープの需要がPENフィルムに集約される傾向がみられるため、磁気テープ素材の中では今後も市場拡大が見込まれる。
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但しPENフィルムは、基本的に高機能で高性能なフィルムとして認識されており、用途の裾野は拡がっているがPETフィルムのように巨大な市場を形成することは考えにくい。
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参考文献:「2006年 プラスチックフィルム・シートの現状と将来展望」 (2006年7月18日:富士キメラ総研)
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