■自動車分野におけるケミカル材料の特徴 |
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ポリブチレンテフタレート(PBT)は、1,4プチレングリコールとテレフタル酸、またはテレフタル酸ジメチルを原料として重縮合反応により得られる熱可塑性ポリエステルである。
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PBTはポリマーで直接使用する場合もあるが、通常は添加剤を使用し非強化系、強化系コンパウンド材料として使用する場合が多い。
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■用途別需要構成 2005年国内販売数量 |
用途 |
構成比(%) |
具体的用途例 |
電装部品 |
59 |
ワイヤハーネスコネクタ、ECUケース、ランプエクステンションなど |
機構部品 |
32 |
ギア、ドアロックなど |
外装部品、その他 |
9 |
ドアミラーステイ、ハウジングなど |
合計 |
100 |
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PBTを使用した自動車部品は、熱変形温度が高く、耐薬品性、電気特性、機械的特性などの優れた特徴を活かし、ワイヤハーネスコネクタ、ECUケース、ランプエクステンションなどの電装部品に採用されている。他には、シートベルト構成部品、ギアなどの機構部品にも使用されている。
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PBTはハーネスコネクタなど電装部品への供給比率が高い。ワイヤハーネスコネクタとECUケースの2アイテムの販売量は、自動車用途で使用されるPBT樹脂需要量の約3割を占めると推定される(ハーネスコネクタ1個当たりのPBT使用量は約2.5kgに設定して販売量を推定)。
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■市場規模推移及び予測(2005~2009年世界需要) |
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年次 |
2005 |
2006見込 |
2007予測 |
2008予測 |
2009予測 |
国内販売数量 |
46,700 |
49,700 |
52,700 |
55,600 |
58,500 |
前年比 |
― |
106.4 |
106.0 |
105.5 |
105.2 |
海外販売数量 |
205,000 |
220.000 |
240,000 |
260,000 |
280,000 |
前年比 |
― |
107.3 |
109.1 |
108.3 |
107.7 |
合計 |
251,700 |
269,700 |
292,700 |
315,600 |
338,500 |
前年比 |
― |
107.2 |
108.5 |
107.8 |
107.3 |
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2005年の自動車用POM樹脂の世界販売数量は25万1,700t、金額では1,130億円(メーカー出荷ベース)である。2009年には1,460億円(2005年比1.29倍)に拡大すると予測される。国内と海外との販売構成比(2005年)は19対81となり圧倒的に海外需要が上回っている。
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PBTを使用した代表的な部品としてはワイヤハーネスコネクタが挙げられるが、ワイヤーハーネスの大手メーカーである矢崎総業や住友電気工業(子会社の住友電装が生産)、古河電気工業はそれぞれ生産拠点を海外(ロシア、中国、ベトナムなど)にシフトしている。
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■参入企業とメーカーシェア(2005年国内需要) |
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首位のウィンテックポリマー(ポリプラスチックス)は、コンパウンド事業を高付加価値戦略の一環として
位置付け、ノンハロゲン難燃PBTなどの新製品開発をはじめ、国内外3拠点でコンパウンド体制の拡張を検討している。
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東レはBASFとの合弁によるPBT生産設備(年産能力6万t)が、マレーシアで2006年に稼働する計画である。また、タイのコンパウンド生産拠点「タイ・トーレ・シンセティクス(TTS)」では、高機能化が可能なコンパウンド製品の需要が高まっていることから、現状の3系列に2系列を増設し、2007年には5系列で15,000t/Yの生産体制を構築する計画である。
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三菱エンジニアリングプラスチックスはPBTの生産体制を強化し、併せてPBTコンパウンド製品の販売比率を高めるためにR&D活動を強化している。
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■今後の動向 |
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PBTは熱変形温度が高く、耐薬品性、電気特性、機械的特性などの物性が優れているため、自動車用途では、金属代替用の樹脂として需要に応えてきた。
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今後は自動車業界のIT化の進展に伴いセンシング技術の導入や、ハイブリッドカーと燃料電池車など次世代自動車の普及が契機となり、電装部品や配線(ハーネスコネクタ搭載率の上昇)の増加などを背景に、さらにPBT需要の拡大が予測される。
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参考文献:「2006 自動車用ケミカル材料の現状と将来展望」 (2006年3月27日:富士キメラ総研)
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