■自動車分野におけるケミカル材料の特徴 |
● |
ポリフェニレンサルファイド(PPS)は、1973年にフィリップス・ペトローリアム社(米国)が生産を開始した結晶性の熱可塑性スーパーエンプラである。
|
● |
PPSの特徴は、融点が280~290℃と高く耐熱性が極めて優れている。また機械的特性、寸法安定性、耐薬品性などの特徴があり樹脂自体に難燃性がある。連続使用温度は200~240℃である。
|
● |
自動車分野では耐熱性、耐油・耐ガソリン性、電気的特性などを活用して、電装部品やエンジン周辺部品にPPSが採用されている。またハイブリッドカーや電気自動車への適用が見込まれており、採用部位の拡がりと共に今後も市場拡大が予測される。
|
|
■用途別需要構成 2005年国内販売数量 |
用途 |
構成比(%) |
具体的用途例 |
電装部品 |
92 |
スイッチ、コネクター、センサーなど |
機構部品 |
8 |
バルブ、パワーモジュール関連など |
合計 |
100 |
|
|
● |
用途開発の当初はエンジン回りの機構部品に採用されていたが、その後は自動車の電装化の進展に伴い電装部品(コネクターやソケットなどの接続部品)に供給されている。
|
● |
自動車部品にPPSが採用されることより車体が軽量化し、燃費の向上に貢献している。また成型部品の形状の自由度が高まり、複合化することで部品点数を削減したり、耐熱性を向上する目的で使用されている。その他には、アルミダイキャスト部品や熱硬化性樹脂、PBTなど他の樹脂からの素材転換が注目される。
|
|
■市場規模推移及び予測(2005~2009年世界需要) |
|
年次 |
2005 |
2006見込 |
2007予測 |
2008予測 |
2009予測 |
国内販売数量 |
12,000 |
13,500 |
15,000 |
16,500 |
18,000 |
前年比 |
― |
112.5 |
111.1 |
110.0 |
109.1 |
海外販売数量 |
11,500 |
12,700 |
13,900 |
15,200 |
16,500 |
前年比 |
― |
110.4 |
109.4 |
109.4 |
108.6 |
合計 |
23,500 |
26,200 |
28,900 |
31,700 |
34,500 |
前年比 |
― |
111.5 |
110.3 |
109.7 |
108.8 |
|
● |
2005年の自動車用ポリフェニレンサルファイド樹脂の世界販売数量は2万3,500t、金額では225億円(メーカー出荷ベース)である。2009年には326億円(2005年比1.45倍)に拡大すると予測される。国内と海外との販売構成比(2005年)は51対49となり、やや国内需要が上回っている。
|
● |
PPSのコンパウンドベースの世界需要は6万t弱(2005年)の規模と推測され、年率10%程度の成長を続けている。中でも日本が最大の市場を形成しており、全ての用途・分野を合計すると2005年には25,000t強(コンパウンドベース)の規模になると推定される。
|
|
■参入企業とメーカーシェア(2005年国内需要) |
メーカー名 |
販売量ウェイト(%) |
大日本インキ化学工業 |
46 |
ポリプラスチックス |
25 |
東レ、その他 |
29 |
合計 |
100 |
|
● |
大日本インキ化学工業(2008年4月にDIC株式会社に社名変更)は国内市場において、自動車向けPPS樹脂のトップメーカーである。同社は国内先発メーカーとして販売実績があり製品のグレード展開が豊富である。自動車分野も含め幅広い用途開発を進めている。
|
● |
ポリプラスチックスにレジンを供給しているクレハは、錦工場(福島県いわき市)の増産を進めており、2006年の稼働を目途に年産1万tの生産体制を計画している。
|
|
■今後の動向 |
● |
一般自動車向けに利用されているPPSは電装部品用の材料として、今後も採用が進んでいく。さらには電気自動車やハイブリットカーのパワーモジュール関連部品向けの材料として需要拡大が見込まれる。
|
|
参考文献:「2006 自動車用ケミカル材料の現状と将来展望」 (2006年3月27日:富士キメラ総研)
|
|