世界の自動車部品市場(主要部品市場の概況2)

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前回に引き続き、主要部品市場の動向を俯瞰してみた。今回は電装部品並びに次世代自動車の中核となる新たな構成部品が対象である。

電装部品では、耐熱性、耐候性、軽量化そしてコストダウンを求めて素材代替への研究開発が日常的に進められている。特に、構造部品の素材や筐体の樹脂化の改良研究は益々活発化してきている。

次世代自動車用構成部品については、モータ、制御回路、バッテリーの技術開発が主眼となっているのは言うまでも無いが、走行性能向上と搭載部品小型化という相反する開発課題との取り組みが、エンジン車両部品との競合に、どのような優位性を誘引できるか注目すべき点であろう。

■E.電装部品

部品名 材料動向
コンビネーションスイッチ ・コンビネーションスイッチは、金属プレス加工部には銅や銅/銀メッキ材を使用し、樹脂成型部にはPAを採用するケースが多い。
・過去に一部の海外メーカーで、電気配線皮膜の耐久性不足から皮膜が早期にはがれ、断線して作動しなくなる恐れがあると指摘された経緯があり、皮膜の耐久性向上のための採用材料の検討が課題となっている。
ワイヤーハーネス ・より軽量なアルミ製ハーネス、及び高速通信が可能な光ファイバーへの代替については長年の課題となっている。
・線材の代替は銅線ハーネスと比較して価格が高くなる上、アルミ製については耐食性、光ファイバーについては耐熱性に劣る点が問題となっている。
・アルミ製への移行には素材の価格差圧縮、耐食性の強化が必要であるが、耐食性の強化はアルミの素材特性上容易ではなく、採用可能な部位の事例を徐々に拡大させ、信頼性を高めていく必要がある。
・光ファイバーは、EVなど部品に強い耐熱性を求めない車両部位に搭載が進む可能性が考えられるが、普及に当たっては価格の一層の低下が必要とされる。
小型モータ ・小型モータに使用されている磁石は主にフェライト磁石である。現在はモータの高効率化を図るため、フェライト磁石の含有物の改良やネオジム系磁石の採用の検討などが行われるようになっている。
・小型モータに使用されるコイル(銅巻線)については素材自体の代替よりも、巻き方の改良やモータコア自体の小型化により、巻線の使用量削減が図られるようになっている。
ヘッドランプ ・ハロゲンヘッドランプやHIDヘッドランプ(High Intensity Discharge lamp=高輝度放電ランプ)については、光源から発せられる熱、及びエンジンから発せられる熱への耐性が光源周辺部材に要求される。そのため、レンズやリフレクターには、耐熱性の高い樹脂(PC、BMC樹脂、PPSなど)が使用されている。これらの耐熱性の高い樹脂については、単価が300~500円/kgと割高なものが多く、より安価な素材の採用が模索される。
・LEDヘッドランプは光源からの発熱が少ないため、一部の構成部材を耐熱性より価格優先で採用する可能性がある。但し、LED素子自体は熱に弱い性質があるため、素子周辺に熱がこもらないようヒートシンクやファンモータなど放熱機構を組み込む必要が出てくる。
クリアランスソナー ・当該製品は現在超音波センサ搭載製品が主流となっているが、超音波センサの取り付けに当たってはバンパーにセンサ孔を空ける必要がある。この穴あけの加工コストや取り付け作業を伴なうことが普及阻害要因となっているため、穴あけ加工を必要としないセンサの採用が検討されている。
・センサの代替候補として挙げられているミリ波レーダ、レーザーレーダなどは、超音波センサと比較して価格が高価なことが採用のネックとなっている。

■F.次世代自動車構成部品

部品名 材料動向
駆動モータ ・駆動モータに採用されているロータ/ステータの素材には5%前後の珪素を添加した電磁鋼板の採用が一般的である。珪素の添加量を増加させることで高周波鉄損失を抑えることが可能であり、騒音の低下や振動抑制に効果的であると考えられている。
・磁石に使われるレアアースは、ネオジムにジスプロシウムを添加して保磁力を高めているが、HEV/EVの需要が増加すると見込まれ、市場価格が急激に高騰しているという背景もあり、脱レアアース、省レアアースの流れが活発化している。
・各社、各研究機関にて新素材の開発が進められているが、現時点では脱レアアース化したモータの採用は2015年以降とみられる。
バッテリー ・ニッケル水素バッテリーは市場の成熟化が進み、大幅な性能の向上、コスト低減は望みにくい。
・リチウムイオンバッテリーの正極材材料には安価なマンガン系が採用の中心となっており、負極材ではチタン酸リチウムを使用する開発が盛んである。
・容量に関してはニッケル系が最も高出力を可能にするが、製造コストの高さから採用は消極的である。
・電解質は安全性の高い固体電解質の採用が望ましいが、高容量化が課題で固体電解質への移行には時間がかかるため、当分はセパレータ需要が続く。
インバータ ・SiCを利用したインバータの研究開発が活発に行われている段階である。日本では各自動車、半導体メーカーでSiCベースの開発が進められているが、実用化に対しては慎重な動きをみせている。
・自動車メーカーとしては他分野での実績、それによるコスト/信頼性の改善が実現された段階で自動車への搭載を本格的に行っていくとする見方をしている。そのため、インバータの小型化や軽量化といったニーズを開発課題として取り組んでいる。また、SiCのコスト低減が困難な場合の代替策として、比較的安価に入手可能となってきたGaNを使うことも検討されている。
DC-DCコンバータ ・電源回路の重要な性能評価事項としてスイッチング損失の低減がある。出来るだけ効率を高めるためにSiCを導入することが視野に入れられているが、現状は変換効率のMaxが92%であることや、SiCにすることでコストアップ分を負担する価値があるのかといった課題も抱えている。この点はコンバータではなく、インバータにおける領域であるとの見方がされており、SiCダイオードの利用は一般的ではないと考えられている。
・筐体については樹脂製、アルミ合金製、鋳鉄製などである。また、インバータユニットと組み込まれている場合もあり、モデルやコンセプトによって仕様が異なるのが実情である。
コンデンサ ・耐熱性、耐電圧性、薄膜性が開発ポイントである。そして、これらの要素を同時に達成することが追求されるため、単純な材料の代替では困難であるとの見方が大きい。特に薄膜性に関しては従来から使用してきたPPでも3µm程度までの最薄のものが上市され、2µm程度の製品に関しても開発が続けられている。
・現時点で、PPフィルムの耐熱性は限界に近づいているとされているが、125℃程度まで耐熱性を向上させる技術開発が必要とされる。薄膜化に関してはPPS、PEN、PETは問題ないが、求める厚さを維持しながら耐熱性を確保していくかが課題となっている。
高圧ハーネス ・通常、バッテリー↔インバータ間はアルミ導体が、インバータ↔モータ及びインバータ↔コンプレッサ間は銅製の導体が使われる。また、HEVよりもEVは定格電圧が高くなるため、導体の外径が太くなる傾向にある。
・高圧ケーブルの絶縁体には120℃定格、外被は100℃定格に対応したハロゲンフリー材が使われている。また、シースにはPE、フッ素樹脂が使われるケースもあるが、HEVなどは高圧回路が長いため、柔軟性に優れている鉛フリーPVCの使用が多くみられる。
電動コンプレッサ ・電動コンプレッサのモータハウジングにはアルミダイカスト製品が一般的に利用されている。鋳鉄製品を利用するよりも一体成形しやすく、ハウジング部分の軽量化が図れる。今後は、材質の変更などにより、材料の使用量を削減できる構造への変更、薄膜化などが軽量化への足がかりになると推測される。
・電子回路部品を搭載するため、絶縁/耐熱/振動/結露への対策は重要となる。シリコンゲル剤の注入や、エポキシ樹脂で封止する対策が採られている。
燃料電池システム ・車載用の実用化に向けて軽い水素タンクの開発が急務となっている。1回の水素ガス補給でガソリン車並みの500km走行するためには70MPaの高圧水素タンクが必要となる。最新の高圧タンク(39g/1ℓの水素が入る)のエネルギー密度は70MPaに圧縮してタンクの重さの3.5~4.5%程度の水素が貯蔵できる。
・現在は水素吸蔵合金などの水素貯蔵材料を組み合わせたハイブリッドタンクなども研究されている。
・産業技術総合研究所では厚さ1nmの粘土結晶を積層して、柔軟で耐熱性に優れたガスバリア粘土膜を開発。この粘土膜とCFRPを複合化して、従来の高密度樹脂ライナーよりも1~2桁以上ガスバリア性能を有する複合材料を開発。
スタック ・日立マクセルは白金に金のナノ微粒子を混合して白金の使用量を45%削減し、電流密度を3倍に上げる技術を開発。
・本田技研工業の「FCXクラリティ」に搭載しているV Flow FCスタックにはアロマティック電解質膜を開発した。この膜は高温での安定性・耐久性に優れるだけでなく、-30℃~95℃で発電可能としており氷点下の始動も可能とした。また、セパレータにシール一体金属プレス品を使用することで大量生産が可能となり、金属セパレータのバネ性を利用して皿バネとバックアッププレートを廃止することで軽量・コンパクト化を実現した。
・金属セパレータは従来のカーボンセパレータに対して機械強度とガス遮蔽性に優れ、セパレータの板厚が従来の半分以下になることからスタックの小型化・低熱容量化を実現している。

参考文献:「2010 新自動車部品マーケティング便覧」
(2010年05月24日:富士キメラ総研)


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