燃料電池システムの市場動向

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今や次世代クリーン&セーフティ発電と期待されている燃料電池市場はどのような状況にあるのか俯瞰してみた。まず量的把握として、市場を主力用途5分野に区分し、日本、アジア、北米、欧州を対象にグローバルな市場規模を算出したのが下記の表である。

■分野別燃料電池システム市場規模

需要分野 2010年見込 2025年予測
金額 前年比 金額 ‘25/‘10年比
業務・産業用 545億円 3.7倍 8,610億円 15.8倍
家庭用 157億円 1.2倍 13,335億円 84.9倍
燃料電池車(FCV) 56億円 2.9倍 25,100億円 448.2倍
マイクロFC 2.4億円 3.0倍 3,185億円 1327.1倍
その他 94億円 1.6倍 2,713億円 28.9倍
合計 854億円 2.4倍 52,943億円 62.0倍
※対象分野の範疇
・業務産業分野:店舗、工場などの電力供給用
・家庭用燃料電池:住宅用燃料電池システム
・燃料電池車:燃料電池搭載乗用車/バスなどの車輌、補助動力装置(APU)は含まない
・マイクロFCシステム:小型電子機器向けの電力供給用途
・その他FC:可搬型電源、バックアップ電源、フォークリフト用、APU等上記以外の燃料電池


燃料電池システムや水素燃料の技術開発は各国で進められており、世界的には2018年~2020年に燃料電池市場が大きく成長する時期を迎え、2020年以降中国の燃料電池需要が増加し、世界市場はさらに拡大すると予測される。

日本は、官民協調による普及策が進んでおり、家庭用燃料電池市場の立上げはその一つの成果で、技術も高いと評価されている。さらにFCV、マイクロFCも今後の世界市場をリードするポテンシャルを持っている。

海外の燃料電池市場は日本産業活性化への大きなビジネスチャンスがある一方、国や地域のローカル規制に対応するなどの制約条件もある。海外市場の開拓は国内における生産性向上に結びつく重要な戦略であることから、海外諸国の燃料電池・水素(FCH)技術の位置づけを理解し、参入可否の前提用件を明確化しておくことが求められる。海外の実証事例から日本の技術開発力が世界トップレベルにあることが見て取れるが、その技術を更に普及拡大させる戦略の推進がが、官民を挙げての課題となっている。

■注目燃料電池システム市場
(1)燃料電池車
市場規模は乗用車以外に商用車やバスを含む燃料電池車のメーカー出荷ベースでとらえた。世界的にエコカー開発に注目が集まる中で、低燃費車開発は自動車メーカーの今後の世界戦略において重要な課題になっている。将来的にはガソリンから水素燃料へ転換が進むが、ハイブリッド化やEVなどの低燃費技術が先行して普及するという認識があり、商用燃料電池車の販売台数やその後の市場拡大の取り組みにやや失速感があるとの見解もある。一方、日本メーカーは世界に先駆けてハイブリッド化を進め、燃料電池車開発にも積極的に取り組んでおり、2015年時点の販売台数は日本メーカーが最も多いと予測する。

日本は商用化初期の市場拡大において世界の中心的な存在になると予測される。国内自動車メーカー3社から今後数年内に市販車が発表される。韓国では、現代自動車が2015年の販売開始を予定し、中国では、国家研究機関を中心に自動車メーカー、大学で技術開発が進められており、上海万博の実証走行車は100台規模となり、技術力が実用レベルにある。急増する自動車による環境悪化と産業育成の両面からHVなどのエコカー技術に注力する政策を優先しており、燃料電池車の市場拡大は2020年以降になるだろう。

アメリカでは、米国エネルギー省の燃料電池車の運転実証やカリフォルニア州独自のCaFCP(カリフォルニア燃料電池パートナーシップ)などのプログラムがあり、世界の自動車メーカーも参加している。ただGM、フォードの2大メーカーが燃料電池車よりもHVやEVを優先する動きが見られることから、市場拡大は順調に進まない可能性もある。

ドイツでは長期開発計画としてNIP(水素・燃料電池技術国家技術革新プログラム)に基づいて開発が進められている。燃料電池車の実証走行と水素ステーション整備が進められており15年の商用化を目指している。ダイムラーは2010年に燃料電池車の限定量産計画を発表しており、水素ステーション整備が進む欧州、北米での販売を予定している。

世界の燃料電池車の普及拡大には、各国の自動車市場、水素ステーション整備などの条件が揃うことが必要であるが、これまでに世界で建設された水素ステーションは実証研究用を中心に200ヶ所以上になり、そのうちアメリカがもっとも多く、次いでドイツ、日本の順になると見られ、カナダや韓国も積極的に取り組んでいる。商用利用を見越した水素ステーション整備はこれから開始される。

(2)家庭用燃料電池システム
家庭用燃料電池は、熱と電力を給湯や暖房に利用する熱電併給システムの動力源となる。現在は、PEFCとSOFCの二種類の燃料電池をベースに開発が進められている。商品化は日本が世界を一歩リードしている。アジアでは韓国、欧州ではドイツやイギリス、デンマークが、既設住宅での実証実験を行うなど開発に力を注いでおり、2015年以降に市場の立ち上がりが期待される。ドイツでは2015年までに、800台の燃料電池システムの実証を行う「Callux プロジェクト」が進められている。また、欧州やカナダ、アメリカでも市場獲得に向けて他国における開発プログラム参加や、ガス会社との提携などを積極的に推進している。

韓国では家庭用燃料電池の信頼性、安全基準に準拠するために2006年から実証事業が開始されている。また燃料電池の導入に補助金制度を設け、2010年から家庭用燃料電池導入費用の80%を、2013年~2016年までに同50%、2017年~2020年は同30%の補助を行い、普及促進を図る。

欧州は一年を通じて暖房期間が長く、セントラルヒーティングによる長時間暖房を行うことから、家庭用燃料電池システムの排熱の有効利用に適した環境にある。また家庭用燃料電池からの余剰電力を買取るFITも導入されており、熱需要に合わせた効率の良い燃料電池の運転が出来る。しかし、全体的に世帯数が少ないため1国あたりのマーケットポテンシャルは小さい。また給湯器の置き換えを想定した場合、給湯器に競合できる燃料電池の低コスト化は厳しい。実証事業の開始時期や燃料電池システムの台数を見ると、技術面では海外の家庭用燃料電池の市場化は、日本に比べて3~4年遅れている。特にPEFCについては、耐久性や信頼性の確立、低コスト化を進めるための技術開発に対するハードルが高く、SOFCをベースにした家庭用燃料電池システムの開発事例が多い。海外ではSOFC開発が主流になっている。

(3)業務用・産業用燃料電池システム
PAFCによって市場開拓され、その後MCFCと合わせて2つの技術による市場拡大が進められている。店舗、商業施設、ビルなどの施設を含み、産業用では工場、データセンター、倉庫などの施設を対象とする。PAFC、MCFCの2大メーカーがアメリカにあることから北米市場が牽引し、次いでCHP指令によって導入推進を図るEUや韓国の製鉄会社ポスコによるアジア市場の開拓によって世界市場が拡大すると予測する。※CHP:Combined Heat and Power=熱電併給設備

PAFCはUTCパワー(アメリカ)と富士電機システムズ、MCFCはFuel Cell Energy(アメリカ)の3社が基本技術を持っている。UTCパワーは出力によって3種類のMCFC製品を世界的な販売網を構築して提供している。中国のCHPは発電容量の13%程度であり増加する傾向にある。ただし中国は石炭燃焼が支配的であり、地方自治体による地域暖房システムやエネルギー集約産業に供給を行っている。CHPシステム導入増加に伴い、燃料電池の導入も増える可能性があると予測される。

欧州ではCHPが環境対策として重要な位置づけにあり、すでに導入率の高い国や積極的な導入施策を講じた国が見られる。燃料電池(CHP)の電力買い取り制度を持つ国はドイツ、スペイン、フランス、ポルトガル、オランダ、チェコ、デンマーク、ハンガリー、オーストリア、ラトビア、イギリスなどである。CO2削減の有効な方法として大型燃料電池を利用しようとする各国の動きがあり、市場拡大が進むと見られる。本命技術として、2020年までにはSOFCによる大型発電システムの目処がつき、その後市場拡大が進むと予測される。

(4)マイクロFCシステム
スマートフォンなど小型電子機器向けのバッテリー容量不足が深刻化するなかで注目される分野である。開発メーカーはアメリカに多く、日本、カナダ、韓国、欧州などにもある。アメリカでは軍事部門による大規模な開発支援が行われ、技術開発を牽引している。市場は充電用途や追加バッテリーのような位置づけで1~2年以内に始まり、低コスト化と小型化により一部携帯機器での標準搭載やオプションに採用されて市場が拡大すると予測される。

(5)その他燃料電池システム
ポータブル発電機やバックアップ電源、APU、フォークリフト、小型移動体など多様なアプリケーションを含んでいる。何れもニッチ市場であるため燃料電池システムを専用品として開発するには難しく、外部調達可能なスタックをベースにシステム化する手法が多いが、日本メーカーはスタックを外販しないこともあり、同分野は海外で先行している。ポータブル発電機とメーカーが増えている。また海外ではバックアップ電源やトラックのAPUのニーズがある。一方、日本では車椅子やスクーターなど小型移動体の開発例が多い。

参考文献:「2011年版 燃料電池関連技術・市場の将来展望(上巻)」
(2011年01月25日:富士経済)


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