有望デバイス向け主要光学フィルムの市場 注目市場

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■透明導電性フィルム
市場規模推移
2010年 2009年比 2015年予測 2010年比
105万m2 308.8% 863万m2 821.9%

2010年に実績があるのは静電容量式タッチパネル向けと電子ペーパー向けのみ(僅少な実績は除く)である。ほぼ100%ITOフィルムが使用されている。

静電容量式タッチパネルは、携帯電話やスマートフォン向けが主であるが、ポータブルミュージックプレーヤー、デジタルスチルカメラ/デジタルビデオカメラ等でも需要を伸ばしている。電子ペーパーは、電子書籍向けの需要増によって市場が拡大している。これらモバイル機器では「割れないこと(耐衝撃性)」「低コスト」「軽薄化」が強く要求されることから、透明導電性フィルムの需要の増加が予想される。

2012年に有機EL照明向け、2013年には有機系太陽電池向けの市場が本格化すると見られる。2015年も透明導電性フィルム市場の82%を静電容量式タッチパネル向けが占めると見られるが、有機系太陽電池向けと有機EL照明向け需要の拡大も期待される。有機EL照明向けはヨーロッパを中心としたモジュール市場の拡大などで採用増加が期待できる。2015年以降、有機EL照明向けがシェアを伸ばすと見られる。

■材料別フィルム動向

フィルム分類 利点・有望用途 欠点・不利な用途
ITOフィルム
(スパッタ)
1.高い導電性、透過率、優れた光学特性、耐環境性を有する。

2.信頼性が高く、タッチパネル・電子ペーパー用電極基板に採用されている。次世代デバイスの有機系太陽電池、有機EL用でも実用化の最有力候補である。
1.耐屈曲性が劣るため、デバイスのフレキシブル化によってクラックの発生が懸念される。

2.成膜は高温スパッタリングで生産コストが高い。また、原料のインジウムがレアメタルで供給不安がある。
ウェットITOフィルム
(塗布式)
1.ITOインクを塗布したもので摺動性、耐屈曲性、筆記・打鍵耐久性に優れる。

2.上記の利点により抵抗膜式タッチパネル用で実用化されている。
(3)塗布・転写を適用することで成膜工程を簡略化し製造コストを低減できる。
1.分散剤等が添加されるため、表面抵抗値が高くなる。また、エッチング性に難がある。

2.そのため、静電容量式タッチパネル、有機系太陽電池、有機EL向けでの採用は難しい。
導電性ポリマー系フィルム 1.主にポリチオフェンが使用されており、耐屈曲性、打鍵耐久性等に優れる。

2.塗布・印刷を適用することで成膜工程を簡略化し製造コストを低減できる。

3.タッチパネル用で実用化されている他、比較的スペックの緩い電子ペーパー用で採用が検討されている。
1.導電性ポリマーは有機物であるため、耐熱・耐湿性に劣り耐環境性が不十分である。また、色味がやや青色である。

2.現状の特性では静電容量式タッチパネル、有機系太陽電池、有機EL用での採用は難しい。耐環境性(表面抵抗値)、光学特性(透過率)の改善が必要となる。
銀インク系フィルム 1.銀の高効率電導によって、0.1Ω~数千Ωまでの幅広い抵抗値に設定可能である。

2.低い抵抗値が要求される大型静電容量式タッチパネル用で実用化されている。更に10□/Ω以下の抵抗値が求められる有機系太陽電池用に有望である。

3.屈曲性良好で成膜工程簡略化も可能。
1.全光線透過率が劣るため、グリッド状・メッシュ状パターンの可視が問題となる。また、スパッタITOフィルムに比べ光学特性も劣る。

2.パターン跡可視のため小型の静電容量式タッチパネルには不向きである。
銀ナノワイヤー系フィルム 1.高屈曲耐性、透過率に優れる。

2.日本写真印刷とCambrios 社が静電容量式タッチパネル用に共同開発している。
1.銀ナノワイヤー同士の接触不良で十分な導電性を得られない。

2.タッチパネル以外の展開は見られない。
カーボンナノチューブ・フィルム 1.ナノ粒子で透明性、導電性良好である。

2.塗布・印刷を適用することで高屈曲耐性、高描画耐久性、成膜工程簡略化を実現している。

3.タッチパネル、電子ペーパー、有機系太陽電池、有機EL用をターゲットとしている。
1.カーボンナノチューブの長さや純度などによって、生産性や価格、特性に差異がある。

2.そのため、材料選択と印刷法・塗布法の最適な選択、量産技術の向上などが要求される。
グラフェン・フィルム 1.導電性、強度・硬度、大電流への耐性に優れる。また、塗布・印刷法を採用することで製造コストの低減も可能である。

2.Samsung El社がタッチパネル用で2012年上市予定。
1.研究が主体であるため、導電性・透過率などの基礎的な検討がなされている。

2.量産化するには効率的な生産法の開発が必須である。
ZnOフィルム 1.常温成膜できるため、製造コストを抑制できる。

2.原料の亜鉛の生産量は多く、価格はインジウムの100分の1ほどで材料コストを低くできる。
1.経時劣化による長期安定性の低下、高温高湿時の抵抗値の変動等の問題があり、実用化には至っていない。

2.製法の確立と量産性の向上も求められている。

■ハイバリアフィルム
市場規模推移
2010年 2009年比 2015年予測 2010年比
13万m2 433.3% 137万m2 1,053.8%

2010年に実績があるのは電子ペーパー用のみ(僅少な実績は除く)である。E Ink社製マイクロカプセル型電気泳動式電子ペーパーの前面板に使用されている。

ハイバリアフィルムを使用した電子ペーパーは今後電子書籍向けのほか、産業用途への普及が見込まれるため需要も拡大すると見られる。

有機ELは微量の水蒸気や酸素によって劣化する精密な発光層や陰極を持っていることから、ハイバリアフィルムの潜在ニーズが高い。フレキシブル有機EL市場が立ち上がる2012年以降に有機EL向け市場も拡大すると見られる。また、有機系太陽電池でも発電層の保護を目的にハイバリアフィルムが使用される。

2012年に有機EL照明向け、2013年には有機系太陽電池向け、有機ELディスプレイ向けの市場が本格化するが、2015年も電子ペーパー向けが73%を占めるとみられる。有機系太陽電池向けや有機ELディスプレイ・照明向けも小規模ながらシェア獲得すると予測される。

■バリア性能の向上手法について
ハイバリアフィルムは無機膜のピンホールをいかに少なくして、外気(主に水蒸気)の侵入を防ぐか(バリア性能を高めるか)が最大の課題といえる。それらの課題をクリアするため下記のような手法が講じられている。

手法 概要
有機-無機膜の積層 1.一般的には、有機膜と無機膜を交互に積層することで、水蒸気や酸素に対するバリア性を高める方法が用いられている。

2.改善した無機膜と有機膜を4~6層に積層して、10-4~10-6g/m2・dayレベルまで実現可能であるが、積層した分コスト高になる。フィルム貼り合せ・ハードコートフィルムをハイバリアフィルムと貼り合せることで残留したピンホールを被覆している。
パーティクルの抑制 1.無機膜欠陥の要因となるパーティクルの発生を成膜時に少なくすることが求められている。

2.有機膜でパーティクルを埋包する方法も取られている。
厚膜化 1.厚膜にすることでピンホールからの外気の侵入を抑制している。

2.しかし、膜厚をあまり厚くするとクラックや剥離を起こしやすくなることから、膜厚の最適化が必要である。

3.真空蒸着法、スパッタリング法で厚膜にすると膜の応力でストレスがかかる(反る)ので膜質の柔軟化が必要である。

4.CVD法は膜厚に有利であり、単層での10-1g/m2・day以下レベルの無機膜形成が可能である。
表面平滑性 1.ロール・ツー・ロール方式によるフィルム生産は通常、巻き取り適性を向上させるためにフィルムに滑材をいれておこなっており、滑材がフィルム表面の150nm以上の凹凸(突起)となる可能性がある。そのため、膜厚が薄いことから、凹凸(突起)が突き破りピンホールが発生することが懸念されている。また、ローラと凹凸の摩擦によってもピンホールが発生する。

2.そのため、成膜面に有機の下地層を形成するなど、成膜面の表面平滑性、膜の均一性も同時に求められている。

参考文献:「2011 光学フィルム関連市場の展望」
(2011年01月26日:富士経済)


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