アグリビジネスの現状と将来を展望する 市場動向1

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国内の農業は従事者の減少や安価な海外農産物との競合による農村の衰退が進んでいる。その一方で、世界的な人口増に対する食糧の安定供給、そして消費者嗜好の多様化への対応や食の安心・安全の確保など、対処すべき課題が山積している。今回は、その現状を踏まえ、栽培、収穫・貯蔵、輸送・流通、販売の各シーンにおけるシステム・機器・資材の高付加価値化による「新たなアグリ市場の創出とビジネス形態の多様化」に進む市場動向の現状を捉え、今後の方向性を展望してみる。

国内農業を取り巻く市場環境

消費者意識農村(生産現場)の現状海外動向
食に対する安全意識の高まり
健康志向の高まり
ブランド作物への人気
農業従事者の高齢化
農業就業人口の減少
耕作放棄地の増加
食糧危機の懸念、作物価格の高騰
気候変動の作物生産への影響
TPP加盟の影響
これらの環境を踏まえ、現実的に求められているのは農業の高度化にある。その対応に求められるシステム・機器・資材市場の創出が大きなカギとなっている。今回、取り上げた5つ分野のアグリビジネス関連市場は2011年の市場規模は696億6,800万円で、2020年には128.7%増の896億6,500万円に達すると予測される。その中でも、植物工場などの養液栽培関連プラント・システム市場や栽培関連・ITネットワーク技術市場、収穫・貯蔵関連市場の伸長率が高くなっている。

「農業の高度化関連システム・機器・資材の市場規模推移」
市場分野2011年市場規模2020年市場規模予測伸長率
養液栽培関連プラント・システム市場73億3,000万円151億5,000万円206.7%
養液・施設栽培関連装置・機器・資材市場321億1,000万円387億円120.5%
栽培関連IT・ネットワーク技術市場17億4,000万円44億2,000万円254.0%
高付加価値型アグリ資材市場281億8,800万円303億4,500万円107.7%
収穫・貯蔵関連市場3億円10億5,000万円350.0%
(富士経済調べ)

◆各市場分野の注目ポイント
1) 養液栽培関連プラント・システム市場
⇒栽培期間短縮や安全性確保など栽培の高度化や新ビジネス展開に繋がる植物工場などのプラント
・植物工場 ・湛液型栽培プラント ・NTF栽培プラント ・固形培地栽培プラント
2) 養液・施設栽培関連装置・機器・資材市場
⇒施設栽培の栽培環境向上に繋がるプラント以外の関連機器・資材
・潅水/給液管理装置 ・栽培用空調機器 ・植物育成用光源 ・固形培地 ・ガラス/フィルムハウス
3) 栽培関連IT・ネットワーク技術市場
⇒ITやネットワーク技術を活用することで、施設栽培や露地栽培の高度化に繋がる関連機器・システム
・環境制御装置 ・農業用フィールドサーバ
4) 高付加価値型アグリ資材市場
⇒環境負荷の軽減や作業の省力化に繋がる関連資材
・天敵農薬 ・微生物農薬 ・フェロモン剤 ・抵抗性誘導剤 ・被覆(コーティング)肥料 ・生分解性マルチフィルム
5) 収穫・貯蔵関連市場
⇒収穫の自動化や貯蔵、流通など農作物の栽培工程以降の高度化に繋がる関連機器
・栽培/収穫ロボット ・貯蔵/鮮度保持機器システム
ここでは、すでに市場が形成されている、あるいは市場形成が見込まれているシステム・機器・資材を取り上げた。これらを栽培や収穫、貯蔵などの農業の各シーンに採用することで、栽培であれば栽培期間短縮や高収量化、作物の安全性の確保、作業の省力化、環境負荷の軽減など、収穫であれば効率化や自動化、貯蔵であれば長期間の品質保持など、それぞれの工程の高度化につなげることができる。

養液栽培関連プラント・システム市場、養液・施設栽培関連装置・機器・資材市場、栽培関連IT・ネットワーク技術市場は、国などによる植物工場の普及・拡大の取り組みや企業の農業参入の増加などによって、2009年、2010年に新設が進み、伸びを見せたが、その反動と震災の影響で2011年は横ばいとなった。

高付加価値アグリ資材市場については、IPMプログラム(※)の推進に対する関心も一旦落ち着いたが、今後、食の安全や農作業の省力化などのニーズが強まると考えられ、2012年以降は緩やかに増加すると見られる。

東日本大震災からの復興支援や植物工場の増加、企業参入増加によるアグリビジネスの拡大、更なる市場拡大には、省エネや省力化、安心・安全といった付加価値の訴求やコストダウン等による一般農家の需要掘り起こしが必要となると考えられる。

※IPMプログラム=(Integrated Pest Management:防虫防鼠管理)プログラム
天敵にやさしい殺虫剤や殺菌剤を使いながら、害虫の天敵である寄生蜂などの有用昆虫を温存し、作物の品質・収量を安定させる総合防除体系のこと。同一薬剤を多用するのは好ましくないのでローテーション散布を心掛けることによって、生産者には省力と減農薬で安心という価値が生まれ、消費者には安全・安心な作物を提供できる。減農薬でも品質・収量を安定させ、人にやさしい農産物づくりの手法。

参考文献:「アグリビジネスの現状と将来展望 2012」
(2012年01月31日:富士経済)



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