アグリビジネスの現状と将来を展望する 市場動向3

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アグリ・ビジネス市場の第三回目は、注目ビジネス動向について解説する。第一回の「国内農業を取り巻く市場環境」で見られるような従来型農業からの脱却し、利益を生み出す新たなビジネスの創出に期待が持たれている。新たに展開されようとしているビジネスモデルを既存のモデルとの比較により紹介する。

「従来型ビジネスモデル」




(1).農協ルートを中心とするサプライチェーン
 →販路が限定的であり、農協への依存度が高い。
(2).価格決定権が農家になく、企業スピリッツが育たない
 →価格競争力の低下。
(3).小規模分散型の農業経営
 →生産性の低い栽培方法が継続されてきた。
(4).一般的な露地栽培
 →天候等外部環境に左右される。




(1).ビジネスの目的は農業での収益の拡大、製販一体化、フードセキュリティの確保、保有する遊休地・人材・技術の活用、地域社会への貢献など。
(2).自己消費や自社店舗での販売、契約栽培など農協以外のルートが中心。
(3).植物工場など高度な栽培方式を導入し、安全性をPRした作物の販売を行う
 →露地物との価格面での競合が困難。収益を生み出すビジネスの成立が難しい。
 →栽培ノウハウの不足により、病害等外部環境による生産ロス等の問題も表面化。

「新たなビジネスモデル」




(1).個人農家が農業法人を組織し、競争力を高める。
(2).作物の販売を独自の販路で消費者に訴求する。




地産地消の都市型農業を展開



(1).作物のブランド化/差別化を図る。
(2).人口増加による食糧危機や作物価格の安定化、出荷量の安定確保を目指す。
(3).高付加価値作物栽培による収益性向上と、差別化を図る。
(4).ICTを導入し、省力化や品質向上につなげる。
(5).大規模化によって低コスト化や、多品種化を目指す。
(6).日本ブランドを活かし、海外市場の開拓を目指す。
(7).コストの安い海外で生産し、海外市場や国内市場で販売する。

「注目ビジネス事例」
ビジネス事例ビジネスのポイントビジネスの方向性











自己消費型の栽培ビジネスの展開
健康食品・化粧品、医薬部外品/医薬品メーカーである新日本医薬が自社製品の原料として使用する甘草を安定的に確保するために、自ら栽培に取り組んでいる。
他漢方薬でも同様の取り組みが増加
甘草以外の漢方薬原料についても安定供給を保障するために、栽培ビジネスに取り組む漢方薬メーカーなどが増加する。

漢方薬原料を栽培することで栽培作物による差別化を図る。漢方薬原料の栽培を手掛けるのは、医薬品メーカー以外の事業者や農家なども取り組む可能性は高い。

甘草は漢方薬の原料としてだけでなく、甘味料としても利用されており、今後輸入減少が見込まれていることから有望視される。












協業によって販路開拓を目指す
小売や外食が取り組む栽培ビジネスは自己消費型として、販路が確保されているが、そういった販路のない事業者は、販路開拓が課題となる。

その中で、施設野菜バンクとして植物工場による栽培ビジネス事業者が協業することで、受注発注、物流、営業企画、営業などの販売促進で連携を行い、新たな販売ネットワークを構築する。
植物工場産野菜のブランド化を図る
安全で差別化された品種を安定的に生産できる植物工場の特性を活かして、高付加価値な植物工場産野菜としてブランド化を図り、露地栽培産野菜と差別化する。

同一ブランドとして、品質を安定させるためにも栽培ノウハウの共有化も検討している。

生産能力を補完し合う会員企業を増やすことで、各生産状況を把握し、対応しきれない発注量を会員同士で補い合えるシステムの導入も検討している。
I
C
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露地栽培における高度な栽培技術の導入
植物工場などの施設栽培では、ある程度環境を制御可能であることから、作物に適した環境を作り出すための制御装置などのICT機器の導入が進んでいる。

それに対して、露地栽培では環境を制御することはほぼ不可能であるが、栽培環境のモニタリングにフィールドサーバやスマートフォンなどのICTを活用することで、遠隔地から農場の状況把握が可能となり、栽培の省力化や効率化などにつながる。
栽培方法の改善など次年度以降の栽培に活かす
播種から収穫までの作業計画や、環境の変化に対してどう対処するかの判断など、これまで勘と経験に頼る部分が大きかったが、ICTを活用して作業の内容や判断基準をデータとして収集し、蓄積・分析することで、次年度以降の栽培方法の改善や高度化が期待できる。

経験の浅い生産者に高度な栽培技術を伝承する若年後継者や新規農業参入企業など経験の浅い生産者に対して、ICT技術によって可視化した熟練農業者の作業ノウハウを提供することで、高度な栽培技術の早期会得に活かす取り組みも注目される。

















農家が法人化して企業としての栽培ビジネスを展開
農家の法人化は、制度上や税制上のメリットを得られるほか、生産力や販売力を強化にもつながる。

「さかうえ」では食品メーカーとの契約栽培など一般流通とは異なる独自販売ルートを構築したり、牧草飼料事業、農業経営IT化事業、自社ブランド商品開発事業など、特色ある事業を展開している。
プロとして付加価値訴求型の栽培ビジネスの展開
高い農業技術や農業経営ノウハウを持った企業として、生産・販売の海外展開や、有機・無農薬・低農薬栽培など単に安全・安心な農産物だけでなく、地域限定農産物の生産・販売によるブランド化など新たな付加価値のある農産物を手掛ける。





















高付加価値作物としての訴求力を高める販路でのビジネス展開
環境保全型生産基準「RADIX」(商品取扱基準)を設定して、その基準を満たした契約生産者から全ての農作物を調達することで安心・安全を訴求している。この農作物を会員制宅配、インターネット通販など直接消費者に提供できる販路で展開することで、安心・安全の訴求力を高めている。
海外市場にも展開する
国内市場が飽和状態にあるため、無農薬・有機栽培など安心・安全志向が今後拡大すると予想される中国などへの海外市場への展開が増加する。

栽培ビジネスにも取り組む販売ビジネスを展開する事業者が、自ら栽培ビジネスも展開することで、生産から販売までのトレーサビリティを徹底するとともに、安定供給を図る。










“Made by Japanese”として高付加価値化することによる国内・海外市場への展開
国内だけでなく海外にも農地を保有しており、タイの農場では現地日本人スタッフが直接栽培技術を指導し、バナナの完全無農薬栽培やマンゴーの栽培を行っている。

栽培したバナナやマンゴーは日本に輸入しているほか、"Made By Japanese"として特に海外市場においてブランド化されており、香港経由で中国等に輸出している。
TPP加盟で生産・販売の海外進出がさらに増加する
日本の優れた品種や高品質で味の良い農産物の栽培を、低コスト化が可能な海外において取り組み、国内市場向けに輸入するだけでなく、アジアや欧州などの海外市場向けに日本産ブランドとして輸出する企業、農家の増加が期待される。

TPP加盟によって関税が撤廃されれば、このような事例はさらに増加することが期待される。
参考文献:「アグリビジネスの現状と将来展望 2012」
(2012年01月31日:富士経済)



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