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合板や木工、建築、包装・製本・紙加工、繊維、エレクトロニクス、自動車・車両などの分野で、様々な部位に使用される接着剤、粘着剤、シーリング材の中から注目されている製品についてレポートする。今回は、主に反応形や溶剤形、水性形などといった約30種類に及ぶ接着剤、粘着剤、シーリング材を対象に、用途分野別市場規模を集計し、注目製品4種類について概況を要約した。
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<接着剤、粘着剤、シーリング材の用途分野別市場規模>
用途分野 | 国内市場規模(2011年) |
数量 | 構成比 | 金額 | 構成比 |
合板 | 25.7万トン | 30.0% | 331億円 | 8.9% |
包装・製本・紙加工 | 20.8万トン | 24.3% | 547億円 | 14.6% |
建築 | 17.2万トン | 20.1% | 1,343億円 | 36.0% |
エレクトロニクス | 6.9万トン | 8.1% | 599億円 | 16.0% |
繊維 | 5.4万トン | 6.3% | 225億円 | 6.0% |
自動車・車両 | 3.6万トン | 4.2% | 338億円 | 9.1% |
木工 | 1.9万トン | 2.2% | 45億円 | 1.2% |
土木、皮革、その他 | 4.0万トン | 4.7% | 308億円 | 8.2% |
合計 | 85.6万トン | 100.0% | 3,734億円 | 100.0% |
※数量、金額とも四捨五入して表示しているため、必ずしも合計とは一致しない。 | 富士経済調べ |
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合板分野は数量ベースで30%と最も大きなウエイトを占めるが、単価が低いことから金額ベース全体では9%弱である。フェノール樹脂系やユリア樹脂系、メラミン樹脂系をはじめとした水性形接着剤の需要が大きい。
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包装・製本・紙加工分野は接着剤/粘着剤を主に数量ベースで24.3%を占める。粘着剤では主にアクリル樹脂系エマルジョン形粘着剤がシール・ラベル等の粘着加工で大量に使用されており、接着剤では主にエマルジョン形、ホットメルト形などの需要が大きい。
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建築分野では数量ベース全体の20.1%を占める。利用用途先の機能要求が高く、シリコーン系や変性シリコーン系、ポリウレタン系などのシーリング材の需要が中心の分野である。また、現場作業に適した容量の小さい個包装出荷が主力なため単価も相対的に高く、金額ベースでは36%と大きなウエイトを占める。
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エレクトロニクス分野は接着剤/粘着剤を中心に、数量ベースでは8%であるが、金額ベースでは16%を占めている。エレクトロニクス分野はクリーンルーム対応を前提に、品質や高機能性、高信頼性が求められるケースが多いため単価が高い。また、品種的には光学フィルムの粘着加工と同様に、アクリル樹脂系溶剤形粘着剤の需要が大きい。
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■<注目市場> 1.フェノール樹脂系接着剤 |
| 2011年 | 前年比 | 2016年予測 | 11年比 |
国内市場 | 11.6万トン | 105.5% | 12.6万トン | 108.6% |
137億円 | 105.4% | 150億円 | 109.5% |
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フェノール樹脂系接着剤はホルマリンを縮合剤に使う木質用接着剤の一つで、熱硬化タイプである。用途はほぼ100%合板用途で、杉などの針葉樹の合板に適しており、ホルムアルデヒド放散量も少ない。薄く削った木材をフェノール樹脂系接着剤で加圧熱接着することで安価に平らで強度のある合板の製造が可能となる。
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2009年は景気後退による住宅市場の低迷から需要が減少したものの、2010年は国内で南洋材(熱帯地域で産出される木材)合板から国産材を用いた針葉樹合板への切り替えが進み、ホルムアルデヒドの放散が少なく、針葉樹合板に適していることから需要が伸びた。
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2011年はユリア、メラミン樹脂系接着剤からの代替もあり、需要が伸びた一因ともなっている。2012年以降は針葉樹合板向けを中心に、数量・金額共に年率1~2%程度の成長推移が予測される。
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参考までに世界市場では2011年が99.8万トンとなった。フェノール樹脂系接着剤の需要は、東南アジアではラワン等の南洋材が中心ため当該品の市場規模は小さいが、中国ではロシアから輸入される針葉樹の北洋材(シベリア地方の産出木材)の合板生産が多く、当該品接着剤の市場が拡大している。米国や欧州でも合板製造には針葉樹が主に用いられているため需要は大きい。
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■2.酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤 |
| 2011年 | 前年比 | 2016年予測 | 11年比 |
国内市場 | 8.2万トン | 110.8% | 8.3万トン | 101.2% |
151億円 | 107.9% | 151億円 | 100.0% |
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酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤は水性であるため、溶媒(水)の乾燥のみで接着可能という利便性や、硬化後は無色透明で可撓性(かとうせい)がある点、更に、分解による老化が少なく、ポリマー組成を変更することにより多様な用途で使用可能などの特徴がある。一方、耐熱性、耐水性、耐溶剤性やプラスチックフィルム等難接着素材への接着性は劣るため、主に包装・紙加工、二次合板、木工、建築などの用途で使用される事が多い。
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2011年は東日本大震災後から7月頃にかけて復興需要が活発化したが、溶剤形接着剤市場における溶剤や原料のひっ迫により製品の供給不足が追い風となり、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤への代替が広がるなどの要因もあり、包装・紙加工、建築をはじめ各分野で短期的に需要が拡大した。2012年、2013年も建築分野を中心に復興需要が見込まれるが、溶剤形接着剤の供給は安定してきており、エマルジョン形接着剤の市場規模は小幅な増加に留まると見られる。以降は復興需要が落ち着き、2015年頃から市場は縮小に転じると予想される。
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2011年の世界市場は105.2万トンとなった。木工や包装・紙加工分野の生産拠点が集中する中国をはじめとしたアジア地域で、日本や欧米からの生産シフトにより需要拡大が続いており、市場をけん引している。欧米でも木工や包装・紙加工分野を中心に需要があるが、市場は成熟している。
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■3.ウレタン樹脂系接着剤 |
| 2011年 | 前年比 | 2016年予測 | 11年比 |
国内市場 | 6.2万トン | 101.6% | 6.5万トン | 104.8% |
234億円 | 106.4% | 247億円 | 105.6% |
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ウレタン樹脂系接着剤はウレタン樹脂を主成分とする化学反応系接着剤であり、プラスチックや金属、木材、無機材料への接着性に優れる。主な用途としては、食品用軟包材のラミネート、床・壁材などの内外装、自動車のダイレクト・グレージング(ボディとガラスの接着)やハンドル、インパネなどの接着に使用される。
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2011年は東日本大震災からの復興需要や資材確保のための駆け込み需要があったものの、以降はその反動もあり通年では市場は微増に留まった。しかし、金額ベースは材料の溶剤が供給不足により値上がりしたため前年比6.4%増となった。2012年は後半から復興需要の本格化が期待されるが、大幅な需要拡大には至らないと見られる。
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2011年の世界市場は37.7万トンとなった。中国をはじめとしたアジア地域に、包装や建材、皮革分野の生産拠点がシフトしてきていることや、経済成長に伴う内需の増加により、ウレタン樹脂系接着剤の需要拡大が続いている。欧米でも建築や自動車分野で採用されているが、市場は飽和しているため、今後もアジア地域での需要拡大が市場を牽引していくと予想される。
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■4.ブチルゴム系ホットメルト形接着剤 |
| 2011年 | 前年比 | 2016年予測 | 11年比 |
国内市場 | 3,000トン | 103.4% | 3,350トン | 111.7% |
35億円 | 102.9% | 38億円 | 108.6% |
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ブチルゴム系ホットメルト形接着剤は、主に自動車のドアスクリーンの貼り合わせや太陽電池モジュールとアルミフレームのシーリング用途などに使用される。
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2010年は太陽電池向けや、生産台数が回復した自動車分野向けが伸び、当該品市場も大幅に拡大した。2011年は自動車分野向けが横ばいで、太陽電池向けの伸びが減速したことから、市場は数量ベースで前年比3.4%増に留まった。2012年は太陽電池が供給過多となっており、その材料の在庫削減が進められていることから、需要が減退し市場が縮小すると見込まれる。2013年には太陽電池生産が拡大に転じ需要が増加するため、市場は数量ベースで年率5%程度の拡大が予測される。
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参考文献:「2012年 粘・接着剤市場の展望とグローバル展開」 (2011年07月02日:富士経済)
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