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前回の包装材料分野に続き、今回は建築・建材分野と農業資材分野における市場動向を解説する。
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2)建築・建材用途の市場規模(2012年中国国内)
品目名 | 市場規模(t) | 構成比(%) | 主要用途 |
PCシート | 330,000 | 71.0 | 建材(屋根材、アーケード天井、高速道路遮音壁)、広告板 |
PMMAシート | 130,000 | 28.0 | 店の看板、電光看板を中心とした建材 |
離形フィルム | 5,000 | 1.1 | 防水ロール材(ホットメルトタイプ/自己粘着タイプ) |
合計 | 465,000 | 100.0 | |
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<対象用途における市場動向/中国と日本の使用環境相違点>
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建材向けPCシートの需要は、建設需要の伸びに伴って増加傾向にある。また、建材向けはPCシートの8割強を占めている。
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日本では建材向けPCシート需要は、災害発生による一時的な需要増を除くと横ばいにある。また、PCシートの6割強を占めている建材向けのウェイトは減少傾向にあり、代わって光学向けが伸びている。
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建材向けPMMAシートは全体の2~3割を占めるという点で中国と日本は共通している。但し、日本では需要が減少傾向にあり、布シートのような他の素材への代替が進んでいる。
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製品価格は日本では横ばいであるが、中国ではリサイクル品を原料とした製品が出まわっており、新品を使用した製品もリサイクル品を使用した製品の価格に引きずられ下落傾向にある。新品かリサイクル原料品化の見極めがつきにくく、価格下落の要因にもなっている。
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中国では防水ロール材として離形フィルムの1~2割が使用されている。防水ロール向けの自己粘着タイプは離型紙から需要がシフトしてきているため、需要が拡大している。日本では防水シートとしてゴム系やPVC樹脂を織布したものが主に使用されており、離形フィルムはあまり使用されていない。
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3)農業資材用途の市場規模(2012年中国市場)
品目名 | 市場規模(t) | 構成比(%) | 主要用途 |
農業用PEフィルム | 2,250,000 | 95.7 | ハウス/トンネル用フィルム |
農業用PVCフィルム | 50,000 | 2.1 | ハウス用フィルム |
EVAフィルム | 50,000 | 2.1 | ハウス用フィルム |
合計 | 2,350,000 | 100.0 | |
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<対象用途における市場動向>
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農業用は、PVCフィルム、PEフィルム、EVAフィルムなどが使用されているが、大半はPEフィルムである。参入メーカーが非常に多く、生産能力が過剰気味で価格競争が激しいことなどが要因となっている。
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トンネル用フィルムには一般的にPEフィルムが使用されており、ハウス用フィルムには各フィルムの採用がみられる。PVCフィルムは保温性に優れ、PEフィルムよりも安価である。しかし、出荷時の幅が最大6mであり、農業資材代理店が再加工する必要があること、比重が重いことなどから、PEフィルムへの代替が進行している。
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現在、使用されている農業用PVCフィルムは、防曇性機能を有した製品が多く、日中と夜間の気温差が大きい地域(東北、華北、西北など)での需要が主体である。
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ハイエンド向け農業用フィルムとしては、PEフィルムの高価格品やEVAフィルムがある。PEフィルムのハイエンド品は、ニーズはあるものの、価格がネックとなって普及には至っていない。
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EVAフィルムは、他のフィルムに比べて光線透過性や保温性、耐用性に優れているが、EVAフィルムは農業用POフィルムと競合環境にあり、2~3年の長期利用が可能なPOフィルムに優位性があるとみられ、将来的にはPOフィルムが主流になっていくと予想される。
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<中国と日本の使用環境相違点>
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中国における農業の特長は、農家一戸あたりの耕作面積が日本と比べても小さく、農業労働力が過多な状態が挙げられる。人口に対する農業就業者比率は年々低下しているものの、施設園芸の近代化や大規模化などが進められており、ハウス用フィルムなど農業用フィルムの使用量は増加傾向にある。
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日本および中国では、従来、使用されてきたPVCフィルムから他フィルムへの代替が進んでいる。特に、中国ではPVCの利用をハイリスクと捉える傾向が強いため、日本よりもその動きが顕著である。日本では長期使用が可能なPO系フィルムへシフトしているが、中国では価格面から、POフィルムよりPEフィルムの需要が主体とみられる。
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EVAフィルムは、中国では高価格帯に位置するフィルムとしてハイエンド需要を獲得している。
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次回はエレクトロニクス分野とエネルギー分野の市場動向を取り上げる。
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参考文献:「2013年 中国プラスチックフィルム・シート市場の展望」 (2013年10月15日:富士キメラ総研)
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