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日本の住宅ストック数は4,900万戸にものぼる。この圧倒的な「ストック数」を誇る住宅業界では、従来の住宅業界のプレイヤーのみならず、IT業界をはじめとする多方面からの異業種参入が繰り広げられている。リフォーム産業は、「リフォーム」と一口には言い切れない無限の可能性を秘めた市場といえる。
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今回は既築住宅向け住設建材部材市場の現状を俯瞰し、リフォーム事業に先進的に取り組む事業者やリフォームニュービジネスを展開する事業者の動向を取り上げてみる。
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■主要業態別リフォーム市場の推移(元請金額ベース)
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| 2012年度 | 2016年度予測 | 12年度比 |
合計 | 7兆7,884億円 | 8兆5,586億円 | 109.9% |
| 住設建材系 | 1兆4,100億円 | 1兆5,850億円 | 112.4% |
| ハウスメーカー | 5,455億円 | 6,600億円 | 121.0% |
| 小売系 | 1,640億円 | 2,080億円 | 126.8% |
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2012年度はハウスメーカーやゼネコン/デベロッパーがリフォームへの注力度を上げたことや、改装/増改築など複合的なリフォームが増えたことで一件当たりの単価が上がり、前年度比3.4%増と大きく拡大した。トレンドとしては、ショールームや個別訪問での展開、新規客・リピーター客別にアプローチを行うリフォーム事業者が増えており、これが複合的なリフォーム案件の獲得に繋がっている。
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2013年度は、2014年4月からの消費税改定に対する駆け込み需要により前年度比5.2%増が見込まれる。2014年度以降は2013年度の反動が予想されるが、改修時期を迎える住宅ストックの増加によるリフォーム需要の拡大、政府による省エネ改修を手掛ける事業者への助成やエンドユーザーへの補助金支給、リフォームにとどまらない中古住宅流通の底上げなどにより、緩やかながらも拡大が続き、2016年度には2012年度比9.9%増が予測される。
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業態別には、独立系工務店が最も大きな市場を占めている。注目は住設建材系、ハウスメーカー系、小売系のリフォーム事業者である。
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住設建材系事業者は、新築・リフォームを問わず住設建材商品の製造販売を主な事業としているが、地場工務店や販売工事店などをフランチャイズ化、ボランタリー化しリフォーム事業を行っている。加盟店を全国的に組織化することでメーカー商品の普及に繋げており、近年ではリフォーム専用商材を投入する事業者が増えている。
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ハウスメーカー系事業者は、新築OB顧客(新築住宅オーナー)への対応を軸に進める事業者が多く、定期点検やメンテナンスなどアフターサービスの際にリフォーム提案を行っている。また、リフォームイベント
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小売系事業者は最も伸びが期待される業態であり、家電量販店やホームセンターを展開する事業者が中核となる。全国規模で店舗展開し、エンドユーザーとも接点が持ちやすいという強みがあり、リーズナブルなリフォームパックプランの提案や店頭営業への注力によって急成長を遂げている。リフォームメニューは水廻り関連設備の小規模な修繕・取り替えや住宅用太陽光発電システムの提案が中心である。また、住宅設備・建材メーカーとの連携も進めており、内装リフォームや全体改修などメニューの強化による受注拡大が予想される。
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この他、ゼネコン/デベロッパー系事業者、エネルギー系事業者、リフォーム専業者、リノベーション事業者、独立系工務店、専門工事業者、インターネット事業者などが含まれる。
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集合住宅向けではリノベーション事業者やゼネコン/デベロッパー系事業者の伸びが期待される。また、市場は小さいもののウェブページ上でリフォーム事業者の紹介を行うポータルサイト運営を手掛けるインターネット事業者も、ネットで申し込みができるという利便性の高さから受注に繋がるケースもあり、拡大可能性のある注目チャネルとなっている。
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■注目リフォームメニュー市場の推移(元請金額ベース)
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メニュー | 2012年度 | 2016年度予測 | 12年度比 |
スマートハウス | 5,327億円 | 1兆192億円 | 191.3% |
リノベーション | 1,760億円 | 2,230億円 | 126.7% |
断熱 | 2,450億円 | 2,678億円 | 109.3% |
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リフォーム事業者の注力度が高いリフォームメニューは、創エネ機器やHEMSなどエネルギー関連機器の導入によるスマートハウスリフォーム、機能や価値向上を目的に全面改装を行うリノベーション、住宅の断熱性能を向上させる断熱リフォームなどが挙げられる。
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スマートハウスリフォームは、住宅用太陽光発電システムや家庭用燃料電池など創エネ機器の需要が高く、2012年度に続き、2013年度も前年度比4割増と大きな拡大が見込まれる。スマートハウスに関しては新築住宅を中心にして積極的に取り組みが進められているが、既築住宅においても有望視されており、今後も市場拡大するとみられる。けん引する住宅用太陽光発電システムは普及がある程度進んでおり、2014年度以降普及ペースは緩やかとなるものの、2016年度にはスマートハウスリフォーム市場は1兆円を突破すると予測される。
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リノベーションは、政府による中古住宅流通推進政策などで注目が高まっている。従来はリノベーション事業者が主力であったが、ハウスメーカー系・マンション/デベロッパー系リフォーム事業者や、不動産会社など他業態からの参入により市場が活性化している。リノベーション住宅は新築住宅と比較して価格面などで優位性を持つため需要が高まり、2014年度に2,000億円を超えるとみられる。
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断熱リフォームは、断熱型アルミサッシの伸びが市場を押し上げており、樹脂サッシや複層ガラスの需要も安定している。大手ハウスメーカーが住宅の基本性能を高めるためにスマートハウスリフォームと合わせて展開する傾向もみられる。
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2013年度は8月~11月までという短期間であるものの「既築住宅における高性能建材導入促進事業」で補助金支給が行われ、2012年度に続き2013年度も二桁増が見込まれる。2014年度以降は消費税増税前の駆け込み需要の反動を受けて市場の縮小が予想されるが、次世代省エネ基準の適合に向けた取り組みは継続的に行われるとみられ、2016年度の市場は2012年度比9.3%増が予測される。
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参考文献:「新・住宅リフォーム市場の現状と将来性 2013」 (2013年10月09日:富士経済)
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