リチウムイオン二次電池材料の世界市場 市場動向2

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前回に引き続き、リチウムイオン電池材料の世界市場を取り上げる。今回は、リチウムイオン二次電池材料の主要を占める正極活物質、負極活物質、電解液、セパレータの各市場についてみて行く。

最初に正極活物質を取り上げる。

(1)正極活物質の市場規模推移(世界市場)
2013年実績2018年予測2013年比
2,128億円3,524億円165.6%
富士経済調べ

正極活物質では、コバルト酸リチウム、三元系(ニッケル・マンガン・コバルト)、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム(ニッケル・コバルト・アルミ)、リン酸鉄リチウムなどが材料として使用される。

電池の大容量化のため活物質の使用量を増やすことは電池体積や重量の増加につながるため、小型民生用では高電圧で充電してコバルト酸リチウムの利用深度を高める方法がトレンドとなっている。コバルト酸リチウムは価格の乱高下が激しいため、一時期シリンダ型ではコバルトの使用量が少ない三元系への移行が進んでいたが、大容量のリチウムイオン二次電池を必要とするスマートフォンやタブレット端末の需要拡大、コバルト価格が安定してきたことなどを背景に、コバルト酸リチウムが復権している。

充電電圧の高電圧化に対応可能なコバルト酸リチウムは日亜化学工業とUmicore(ベルギー)の評価が高く、この他の日本メーカーも大容量・高電圧コバルト酸リチウムに活路を見出しており、三元系へのシフトを見越してコバルト酸リチウムから撤退したメーカーが再度参入の意欲を示すなど、状況は大きく変化している。

なお、三元系は車載用にも採用されている。高コストであるため、大容量電池を使用するEV向けではマンガン酸リチウムに混ぜるケースが多く、電池容量の比較的少ないHV向けでは単体で使用されることが多い。また、航続距離が内燃車と比較して短いEVの電池容量を増やすべきという考えも強く、マンガン酸リチウムよりも高容量で航続距離を伸ばせるニッケル酸リチウムを採用する車種もある。

現在EV向けの主流であるマンガン酸リチウムは、三元系やニッケル酸リチウムと比べ容量が小さく、高温下では電解液中にマンガンイオンが溶け出し電池の劣化につながるため、高温下でも安定するコバルトを含むニッケル酸リチウムや三元系と混ぜて使用される。マンガンの相場がコバルトやニッケルに比べ低いことから、量産によるスケールメリットを享受しやすい材料である。

また、今後自動車の販売台数が伸びる新興国の所得水準を考慮した場合、高コスト材料を使ったリチウムイオン二次電池搭載車が売れるのかという疑問もあり、内燃車の代替としてEVを幅広い層に普及させるには、コストが抑えられるマンガン酸リチウムを中心に使うのが合理的との考え方もある。

そのため、性能では優れているニッケル酸リチウムや三元系の構成比が今後も拡大するとみられるが、中期的には特定車種でマンガン酸リチウムの搭載が続くとみられる。

中国では以前よりパワーツール向けなどに採用されてノウハウが蓄積されているリン酸鉄リチウムが車載用でも主流である。また、過充電による高温下でも酸素が放出されず電解液が燃えにくく、長寿命であることから、耐久性が必要な車載用での採用拡大も期待される。

(2)負極活物質の市場規模推移(世界市場)
2013年実績2018年予測2013年比
673億円1,120億円166.4%
富士経済調べ

主に炭素系物質が使用されており、結晶質系炭素の黒鉛(グラファイト)、非晶質系炭素のハードカーボンとソフトカーボンなどがある。

現在主流のグラファイトではこれ以上の大容量化が困難になりつつあり、炭素材改良と炭素材に代わる新規素材の探索がおこなわれている。一例としてグラファイトに一酸化ケイ素(SiO)を数%混合して容量を上げる取り組みが進んでおり、この一酸化ケイ素の開発は信越化学工業や大阪チタニウムテクノロジーズなどの日本メーカーが先行している。

車載用ではHVで体積変化が小さく変質しにくい非晶質系炭素が使用されることが多く、ソフトカーボンをラインアップに加える動きも目立っている。また、航続距離を伸ばす目的で容量の大きいシリコン系(SiOやSi)が検討されている。しかし、小型民生用と異なり10年以上の寿命が求められる車載用では充放電による膨張・収縮で寿命が短くなるシリコン系には課題も多く、メーカーが開発に努めている。

(3)電解液の市場規模推移(世界市場)
2013年実績2018年予測2013年比
687億円1,270億円184.9%
富士経済調べ

電解液は電解質塩と有機溶媒、添加剤を混合したものが用いられ、添加剤で機能を付加し差別化を図っている。

有機溶媒を使用する特性上、電解液の発火リスクは避けられず、難燃性に対するニーズが強く、難燃・不燃性の固体電解質やイオン液体の電解質への採用が試みられている。しかし、出力特性やコスト面などから商用化には時間がかかるとみられる。このため添加剤により難燃化し安全性を高める方法がとられている。

電池の大容量化として充電電圧を高電圧化することで活物質の利用深度を高める方法があるが、高電圧化することで電解液の酸化分解などにより充放電サイクルの低下や、高温貯蔵時の膨れなどが発生する。活物質に表面処理を施すことなどで発生するコバルトイオンと電解液の反応を抑制するなどの対策がなされているが、電解液にフッ素を添加することで酸化防止を図る取り組みなども行われている。

高機能な電解液を展開するメーカーには、宇部興産や三菱化学など、以前から電解液市場をけん引してきた老舗メーカーに加え、ダイキン工業が新たに参入しており、この分野でも日本メーカーが目立つ。

(4)セパレータの市場規模推移(世界市場)
2013年実績2018年予測2013年比
1,063億円1,740億円163.7%
富士経済調べ

正極と負極を電気的に絶縁し、電解液を封止する役割をもつ。現在の主流はポリオレフィン微多孔膜であり、製法により湿式法・乾式法に分けられる。

電解液同様、セパレータでも高電圧化対応が進んでおり、コーティングすることで耐熱性や耐酸化性などを高めたセパレータが増えている。コーティングにはアルミナやベーマイト、アラミド、フッ素樹脂などが使われており、技術はPolypore(米国)やSK Innovation(韓国)のほか、帝人や住友化学、旭化成イーマテリアルズ、東レバッテリーセパレータフィルムなど日本メーカーが得意とする分野である。

小型民生用では、電池の大容量化で活物質の使用量を増やすために、他の材料の使用量を減らそうとする動きがあり、セパレータの薄膜化が進んでいる。

セパレータの国産化が遅れていた中国だが、2013年に韓国電池メーカーの車載用や電力貯蔵など大型電池向けで本格的な採用が始まり、大きなインパクトを与えた。

参考文献:「2014 電池関連市場実態総調査 下巻」
(2014年06月12日:富士経済)


2015年 エンプラ市場の展望とグローバル戦略 EnplaNet Books


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