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近年、社会インフラの老朽化対策が急務となっており、予算の制約や大災害対策からセンサネットワーク・ロボット・ビックデータの活用等、従来とは異なった保全方法が求められている。また公共分野だけでなく、製造やサービス分野でも、人的配置による保全業務からセンサ・通信デバイス等を用いた省人システムの導入が進んでいる。そこで、今回は公共・製造・サービス分野における保全マネジメント市場の動向を取り上げてみた。
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現状はマンパワー中心の定期点検が主流となっているが、老朽インフラの増加、労働人口の減少等から今後はICT技術を活用した常時監視市場の拡大が予想され、(株)富士経済の調査によると常時監視市場は2013年実績で約2,530億円を形成しており、今後、画像処理技術やセンサ等の要素技術を利用したシステムが着実に進展するとみている。
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そして、今後有望なのは長期的な維持管理の必要性のある公共構造物分野を挙げており、当該分野における国の投資・プロジェクトも拡大要因だとしている。
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ICT技術の進展により、公共構造物分野以外にも徐々にインフラマネジメントシステムの導入が進むことから、常時監視総市場規模は、2020年には約3,650億円、2030年には約4,800億円規模が見込めるとしている。
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常時監視の導入によって、マンパワー型の点検の効率化、精度向上、設備の故障予測、ヒューマンエラーの抑制、保守計画の適正化、事故・災害の防止といった効果が期待でき、また、点検・メンテナンス目的以外にも、エネルギーマネジメントの効率化やEV・FCVの利用者情報の活用等の新サービス創出が想定され、さらなる市場拡大が見込まれている。
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■保全マネジメント関連市場の市場規模推移
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インフラ区分 | 2013年実績 | 2030年予測 | 2013年比 | 対象とした領域 |
公共構造物 | 2,012億円 | 2,886億円 | 143.4% | 高速道路、トンネル、橋梁、土砂災害、ダム |
電力インフラ | 6,430億円 | 1兆1,679億円 | 181.6% | 火力発電設備、風力発電設備、太陽光発電設備、送電線 |
生活・都市インフラ | 2,602億円 | 2,523億円 | 97.0% | 配電線(参考:高圧CV電力ケーブル)、水道管、都市ガス管、携帯電話基地局、鉄道車両、大気汚染監視、AED |
エネルギー供給・産業インフラ | 1,882億円 | 2,212億円 | 117.5% | EV充電スタンド、FCV水素スタンド、UPS(中・大容量)、アーク溶接・スポット溶接ロボット |
ビル・商業施設関連設備 | 9,241億円 | 1兆362億円 | 112.1% | 空調設備、エレベータ、冷蔵倉庫、冷凍・冷蔵ショーケース、自動販売機 |
合計 | 2兆2,167億円 | 2兆9,662億円 | 133.8% | |
富士経済調べ |
※上記で取り上げた数値は、センサやカメラ等を活用し、点検・メンテナンスを効率化する常時監視市場と、目視・巡視を中心とした定期点検市場で構成される範囲を対象としている。 |
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公共構造物分野の市場は、2013年に2,012億円となった。特に高速道路と橋梁の占めるウエイトが大きい。トンネルと橋梁は5年に一度の点検が義務付けられたことで、今後、マンパワーを主力とした定期点検の需要は増加するとみられる。また省人化された常時監視設備は、これまで公共構造物の維持管理に予算が当てられていなかったが、構造物の老朽化問題が広く認知されてきており、対象施設の増加や熟練点検作業者の減少などから需要拡大が期待される。
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電力インフラ分野は、2013年に6,430億円となり、現状は定期点検業務が大半である。個別では火力発電設備の規模が大きく、8割以上を占める。風力発電設備と太陽光発電設備は現状の需要は多くないものの、今後、拡大が期待される。常時監視の需要はまだ小さいが、火力発電設備は、設備・装置メーカーによるタービンやボイラーの遠隔稼動監視サービスが普及するとみられる。また、風力発電設備と太陽光発電設備は国内設置箇所の増加に伴い、常時監視の普及が期待される。
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生活・都市インフラ分野は、2013年に2,602億円となり、その内、常時監視の市場規模は43億円と小さい。現状ではマンパワーによる定期点検が大半で、中でも鉄道車両の割合が5割以上を占めている。ただし、鉄道車両の定期点検は検査装置のハイテク化による検査時間の短縮や修理の効率化、また車両数の減少により、今後は縮小するとみられる。配電線分野は常時監視の対応は進んでいないが、電線、変圧器の劣化や機器の稼働容量を常時監視することで、故障の兆候・人為的ミスの早期発見が可能となるため、2030年頃には普及の拡大が期待される。
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エネルギー供給・産業インフラ分野は、2013年に1,882億円となった。EV充電スタンド、FCV水素スタンドの設置台数の増加に伴い、2030年には2,212億円が予測される。常時監視は、まだ小規模であるものの、EV充電スタンドやFCV水素スタンドの保全管理、利用者ニーズの把握やスタンド設置駐車場の管理業務の効率化を目的とした需要が拡大するとみられる。
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ビル・商業施設関連設備分野の市場は、2013年に9,241億円となった。エレベータと自動販売機がそれぞれ3,000億円を超える市場となっている。当該分野は常時監視の導入が進んでいる分野であり、2013年は2,468億円となった。点検やメンテナンスの効率化を目的に今後も拡大が期待される。空調設備は、メンテナンスフリー対応が進んでおり、保全目的のみでは需要を喚起しにくいため、サービス事業者側ではエネルギー計測/制御管理業務の提案など新サービスの創出を進めている。
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参考文献:「インフラ・設備機器保全マネジメント関連市場の現状と将来展望 2014」 (2014年07月24日:富士経済)
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