● |
世界の自動車部品市場の動向を3回に渡り解説してきたが、このシリーズの最終章として軽量化動向について技術課題等をまとめてみた。
|
|
■1)燃焼系 |
部品名 | 軽量化動向 |
材料面 | 成型/組立加工面 他 |
EGRバルブ | アルミダイカストから樹脂へシフト | デンソーではスロットルボディと当該品を一体化したユニットを開発、コネクターやセンサーなどの削減で体積を半分に |
可変バルブ タイミングユニット | 樹脂製インテークマニホールドに樹脂製シャフトとバルブを一体化させることで軽量化 | 構造を一体化し部品点数を大幅に削減、ユニットの小型化も図る |
ラジエーターファン | ファンおよびファンシュラウドの樹脂化 | リング形状ファンを採用し、ファンの低騒音化および冷却性能の最適化することで軽量を実現 |
ウォーターポンプ | ハウジングをアルミダイカストから樹脂へ | インペラ部の羽根形状を最適化することで効率を上げ小型・軽量化 |
燃料ポンプ | モジュール構成によるシステムの簡素化で全体の軽量化・コスト低減 | インペラ部形状を最適化にし、耐水/耐候性を考慮した樹脂を配合するなどでポンプ効率を向上させて軽量化 |
電子制御スロットルボディ | 電子化に伴いモータやセンサー類が増加するが、ハウジング材をダイカストから樹脂化 | ボディとスロットル弁を一つの直列成形する射出成形技術により製造コストダウンと部品点数削減 |
エンジン制御ECU | エンジンルーム内搭載に伴い、耐熱/放熱、軽量化を両立できる素材の開発 | コネクターとケースを一体成型 |
スターター | アイドリングストップシステム搭載の拡大により稼働頻度の大幅増に対応できる耐久性向上材料の開発 | モータの小型化と、一体化したクラッチとピニオンを分離し、駆動部やスイッチの小型化を実現 |
オルタネーター | トレンドがスタータージェネレーターの搭載へと進んでおり、スターター同様耐久性向上素材の開発が求められる | 48V対応のスタータージェネレーターの開発が活発化、48V対応では電流値が12V系の1/4となり、ワイヤハーネス重量が削減可能 |
|
■2)吸・排気系 |
部品名 | 軽量化動向 |
材料面 | 成型/組立加工面 他 |
ターボチャージャー/ スーパーチャージャー | 高機能かつ軽量化を実現できるステンレス耐熱鋼が求められていく | タービンハウジング形状が複雑になる傾向にあり、形状変更で簡素化・軽量化を図る必要あり |
触媒コンバーター | 高機能かつ低価格な耐熱鋼が求められていく | 触媒の活性化を早めるためにエキゾーストマニホールドと一体成型し、軽量化/触媒効率向上 |
EGRクーラー | 小型化に伴い高放熱率の確保 | 放熱用のフィンの形状を工夫することで小型化 |
エキゾーストマニホールド | ステンレス耐熱鋼より高機能&低価格な材料 | 触媒コンバーターと一体成型することで軽量化エンジンのシリンダーヘッドと一体成型 |
インテークマニホールド | さらなる軽量化を実現できる樹脂の開発 | 樹脂の成型技術を生かした一体化製品の開発とモジュール化による部品点数の削減 |
|
■3)駆動・足回り系 |
部品名 | 軽量化動向 |
材料面 | 成型/組立加工面 他 |
トランスミッション | セレクターハブのシート・スチール製への移行やMT用ギア・シフトフォークのボディのアルミニウム製への変更 | モーターリダクションギアの1段化、位相最適化および形状最適化計算を使い分ける設計手法 |
クラッチ | ― | クラッチ板の薄板化 |
電動パワーステアリング | ECUのケースを樹脂化 | モータとECUを機電一体化し、ワイヤハーネスなどの構成部品を減らす |
電動サスペンションシステム | ロアアーム/アッパーアーム等をアルミ鍛造品へ | リーフスプリングのGFRP採用に向けた技術開発 リアサスペンションのばね材中空化に向けた開発 |
タイヤ空気圧警報システム | ― | センサー形状/アンテナコイルの小型化、他のECUとの統合、センサ内搭載バッテリーの省略 |
ABS/ESC | ECUのケースを樹脂化 | 関連部品の一体化と機能集約によるブレーキシステム全体の小型軽量化 |
電動パーキングブレーキ | ― | ECUをESC/ECUに統合し部材コスト低減および軽量化を実現したシステムの提案が進んでいる |
|
■4)電装系 |
部品名 | 軽量化動向 |
材料面 | 成型/組立加工面 他 |
コンビネーションスイッチ | ― | 構成部品の形状や、構造の変更による小型軽量化を継続的に実施 |
小型モータ | レアアースレス化と軽量化の両立。新しい磁石素材の探索や、回路などの改良により追求 | モータ内部の磁気回路や巻線方法改良の探索 |
ワイヤハーネス | アルミ合金の採用や銅合金の複合材料化を目指した開発が継続 | 被覆材の薄肉化や導体の圧縮、構成変更による軽量化が実施されてきたが軽量化は限界か |
車載メーター | 変革の余地は現在少なく、今後の新素材登場に期待 | パネルの薄型化による軽量化は成熟期を迎えているが、更なる使用部品の削減/ユニット化 |
|
■5)内装系 |
部品名 | 軽量化動向 |
材料面 | 成型/組立加工面 他 |
シートシステム | フレーム材をアルミ合金、マグネシウム合金、CFRPなどに転換 | レーザー技術を利用し、成形方法の改良によるシートフレームの製造コスト削減 |
カーエアコン | 既に筐体の樹脂化などが進んでおり、他の軽量材への代替困難 | 空調系ユニットの構成部材を小型薄肉化する成形技術、耐振動性、低騒音維持が課題 |
エアバッグモジュール | モジュールカバーの軽量化 | モジュール自体に圧力調整する機能を持たせる |
インストルメントパネル | 軽量化と強靭化が両立できる樹脂改質に向けた開発 | コックピットモジュール化による部品点数削減や薄肉化の実現 |
ルームミラー | 筐体部分の樹脂化は進行、欧州では耐振動性からアルミダイキャストのニーズも残っている | 筐体内部を空洞化し、ガスを注入する軽量化方法などが存在するが、耐振動性、耐久性が課題 |
|
■6)照明・外装系 |
部品名 | 軽量化動向 |
材料面 | 成型/組立加工面 他 |
ボディ/シャーシ | 高張力鋼板と並行して、アルミ合金やCFRP使用の検討が続けられている | ホットプレス材製造技術向上による鉄の薄肉化、鉄&アルミ接合技術による材料の使い分けなど |
自動車用ガラス | ガラスからPCなどの樹脂への移行を検討 | 積層ガラス技術による薄肉化 |
ヘッドランプ | プロジェクターモジュールを金属からPBTなど樹脂への代替 非球面レンズの樹脂化は欧米市場と日本市場でニーズに違いが生じている | ハウジング部分の薄肉化や肉抜きが行われているが、耐久性/耐振動性/意匠性とのトレードオフ |
ドアミラー | フレーム部分や外側の筐体を、金属からABS樹脂やASA樹脂、PBT樹脂などに代替 | 耐振動性を維持しながら軽量化可能なモジュールの設計 |
バンパー | PPの改質による薄肉化 | 成型加工方法の改良及びバンパー周りのモジュール化 |
超音波センサー | ― | 軽量化要求は低いが、小型・低コスト化要求は強く、小型化に向けたピン端子タイプの開発 |
車載カメラモジュール | レンズユニットの樹脂化が進んでいるが、耐久性、信頼性から全レンズ樹脂化の可能性低い | 実装技術や使用部材の削減により小型軽量化は可能となるが、小型化のニーズ自体は縮小 |
自動車用タイヤ | ナノ粒子構造による新材料創出が一大テーマ | タイヤサイド部材の軽量化 |
|
■7)次世代車部品 |
部品名 | 軽量化動向 |
材料面 | 成型/組立加工面 他 |
モータ | 磁石の磁気特性を向上させ、従来と同出力で小型軽量なモータを実現 | コア材料(電磁鋼板)の薄型化とモーターコア自体の穴開け部分を多くすることで軽量化 |
リチウムイオン電池 | 正極材ではマンガン単体の削減、負極材では合金系負極材料の採用などが検討 | ユニット当たりの大容量/高出力化への改良 |
インバーターモジュール | SiCパワーデバイスの採用によるユニット当たりの性能向上 | 放熱構造など設計の見直し |
DC-DCコンバーター | フェライトなどの磁気部品の小型薄型化 | MOSFETなどの半導体部品の特性改善 |
コンデンサ | 誘電体フィルムの薄膜化が検討されているが、耐電圧性能低下を防ぐ電極パターン設計などが求められる | インバーター設計に依存する部分が大きいが、実装素子の小型化や素子数減の手法を検討 |
高圧ハーネス | 電線のアルミ化が進められているが、導電性や耐振動性の改善およびコネクターが課題 | 複数電線をアルミパイプに通しシールド性を担保しながら軽量化を図る技術が一部メーカーで採用 |
電動コンプレッサー | 耐熱性/耐久性面で樹脂化は難しく、アルミなどの軽量金属がハウジングに使用 | 冷却システム・内蔵モータの小型化によってコンプレッサー自体を小型軽量化 |
|
参考文献:「2014 ワールドワイド自動車部品マーケティング便覧」 (2014年08月06日:富士キメラ総研)
|
|

|
|