|
● |
人の手を介さずに車が動く、自動運転機能の搭載された車社会が間もなく実現されようとしている。ヒューマンエラー事故の減少、誰でも自動車の運転ができるようなシステム/社会インフラづくりや、自動運転よって生じる可能性のある公害対策など、環境に配慮できうるような仕組みつくりが進められている。
|
● |
このシステムを支えるのは移動体通信網やBluetooth、Wi-Fi、GPS/GNSS、DSRCなどといった無線通信とレーダーセンサーやカメラネットワークなどのセンシングデバイス技術と新たなサービスビジネスに注目が集まっている。
|
● |
今回からは自動車の高機能化、インテリジェントな交通システムを実現するために利用される無線通信市場の動向について解説して行く。
|
● |
そこで、今回からは世界の自動車市場とその部品の市場動向について取り上げてみる。第1回目は完成車市場の動向について取り上げる。
|
|
■(1)ITSを実現する自動車通信サービスの動向
|
● |
自動車通信関連サービスは「安心/安全系」「環境系」「情報配信系」「課金系」の4つに大別することができる。安心/安全系は自動車が走行する際、初めに高度に実現されるべき機能・サービスであり、ITSの中核をなしている。
|
● |
環境系では燃料の枯渇、高騰、大気汚染の深刻化など、環境分野における課題に対して自動車が寄与できる部分は非常に多く、EVの普及促進やカーシェアリング、P+R(park and ride)のサービス導入など、都市交通全体を巻き込んだサービスの展開が求められている。
|
● |
情報配信系は地図データ配信などが中心のサービスとなるが、プローブデータなどとの連携により、さらに高度な交通情報の提供などが考えられる。
|
● |
※プローブデータ:一台一台の自動車をセンサーとみなし、車両に搭載したプローブ車載器が、車両の位置、速度、その他の車両制御情報を車外の情報センターへモバイルデータ通信によって送信するデータのこと。
|
● |
課金系は環境配慮や交通の円滑化、道路保全の観点からロードプライシングが欧州や北米ですでにサービスインしており、日本でも一部で始まっている。交通課金以外では、自動運転の実現によって従来サービスとは形態が大きく変わるため多目的利用に期待する声は大きい。
|
● |
次に高度ITSの実現に向けた各無線規格の進化についてその市場規模推移の視点から見ていく。
|
|
無線通信規格別モジュールの世界市場規模推移 単位:百万円
品目名/年次 | 2013年実績 | 2014年(見込) | 2020年(予測) | 伸長率(14年比) |
2G/3G通信モジュール | 64,000 | 78,000 | 134,400 | 172.3% |
4G通信モジュール | △ | 100 | 135,000 | 1,350.0% |
700MHz帯通信モジュール | △ | △ | 4,800 | - |
Bluetoothモジュール | 55,760 | 59,710 | 92,420 | 154.8% |
Wi-Fiモジュール | 1,080 | 1,710 | 20,730 | 1,212.2% |
位置測位モジュール | 11,200 | 13,300 | 40,000 | 300.8% |
ETC/DSRC車載器 | 40,580 | 42,510 | 50,150 | 119.0% |
合計 | 172,620 | 195,330 | 477,500 | 244.5% |
|
● |
2025年から2030年にかけて実用化が予想される全自動運転車や今後徐々にその形が整っていくと考えられる高度ITS社会は上記の無線通信によって支えられていく。特に大本命とみられているのは、携帯電話網を用いた広域通信ネットワークであり、自動車に外部もしくは内部からインプットされる情報の多量化、外部にアウトプットするデータの大容量化などが相まって、広域の自動車通信ネットワークのコアとなっていくとみられる。
|
● |
これにより形成されるITSシステムは中距離無線+センシング技術を用いた車車間ネットワークや狭域通信などの路車間ネットワークであり、これらの情報管理が安心/安全な交通社会を実現するサブネットワークとなっていく。
|
● |
BluetoothやWi-Fiを中心とする機器間通信は、安心/安全とは一線を画す形で、エンターテインメント系に活路を見いだしていくと考えられる。また、伸びが堅調な4G通信モジュールについては、画像など大容量のデータ伝送やエンターテインメント連携の普及により、市場が拡大するとみられる。
|
● |
ETC/ETC2.0車載器は欧州地域でのインフラの拡大を背景に需要が堅調に推移するとみられている。
|
|
■(2)運転支援システムにおける各種センシング技術の動向
|
● |
運転支援システムで採用が進んでいるセンシング技術の主なデバイスは、赤外線レーザー、ミリ波、車載カメラである。近年の衝突防止機能の搭載率上昇に伴い市場が拡大している。
|
● |
ミリ波は現在79GHz帯の実証実験が行われており、既存のミリ波技術よりも高精度の検出が可能なため、いずれ主流の周波数になるとみられる。車載カメラは自動運転を見据えて、よりセンシング対応が進むとみられる。
|
|
センシングデバイス別モジュールの世界市場規模推移 単位:百万円
品目名/年次 | 2013年実績 | 2014年(見込) | 2020年(予測) | 伸長率(14年比) |
24GHz帯ミリ波レーダーモジュール | 27,900 | 43,220 | 153,110 | 354.3% |
76GHz帯ミリ波レーダーモジュール | 66,930 | 93,380 | 131,130 | 140.4% |
レーザーレーダーモジュール | 6,650 | 12,000 | 35,720 | 297.7% |
車載カメラ | 71,330 | 122,690 | 275,880 | 224.9% |
合計 | 172,810 | 271,290 | 595,840 | 219.6% |
|
● |
車載カメラは北米での法規制化および2018年の施行時期の決定により市場が急拡大していくとみられる。
|
● |
ミリ波/レーダーセンサーの市場は予防安全デバイスとして必須に近い状況での搭載が見込まれるが、より一層のコスドダウンが進行すると想定され数量ベースの伸長に比べ金額ベースの伸びは小さいとみられる。
|
● |
この他、高分解能レーザーとして期待の集まるモジュールに79GHz帯レーザーが存在するが、はコストが非常に高く、インフラ側で搭載実証実験などに利用される程度にととどまっている。
|
|
参考文献:「2015 自動車通信ネットワーク関連市場総調査」 (2014年11月10日:富士キメラ総研)
|
|

|
|
|