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前回は自動車通信ネットワークにおける無線通信及びセンシング技術の市場動向について解説したが。今回は、それらの技術を応用した注目製品の市場を個別に取り上げてみた。
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■(1)注目製品の市場動向
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(1)通信モジュール(2G/3G/4G/5G)世界市場
2014年見込 | 2013年比 | 2020年予測 | 2013年比 |
781億円 | 122.0% | 2,694億円 | 4.2倍 |
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IVIシステム(次世代車載情報通信システム:In-Vehicle Infotainment system)やカーナビ、移動体通信網を利用した通信機能を付与するモジュールを対象とした。
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通信モジュールは、長らく高級車へのプレミアムサービスなど限定的なテレマティクスサービスを実現するために搭載されている。トヨタ自動車では「G-BOOK」、日産自動車では「CARWINGS」、本田技研工業では「インターナビ」、Ford Motorでは「Sync」といった渋滞情報の配信や安心・安全走行のサポートなどに主眼を置いた独自のサービスを提供してきた。
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今後の普及拡大の契機になるのは、2015年頃からロシアで実施される緊急通報システム「ERA-GLONASS」の搭載義務化や、欧州における新車への「eCall」の必須装着などである。なお、高いもので3万円を超える車載器と月額の利用料負担が普及の阻害要因となっているが、これらの課題の解決も普及を促進させるとみられる。
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(2)自動料金収受システムインフラ世界市場
| 2014年見込 | 2013年比 | 2020年予測 | 2013年比 |
世界 | 1,023億円 | 192.3% | 1,084億円 | 2.0倍 |
国内※ | 561億円 | 5.5倍 | 506億円 | 5.0倍 |
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ETCなどの自動料金収受システムによるサービスやETC2.0サービス(旧ITSスポットサービス)を実現するためのインフラ[路側装置)で、DSRC(Dedicated Short Range Communications)方式、赤外線通信方式、ANPR(Automatic Number Plate Recognition)、位置測位技術による自律方式のシステムを対象とした。
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ETCは国内ではDSRC方式により2001年から一般利用が開始され、ETC割引などの政策的な後押しもあり、車載器搭載率も急速に高まった。現在ではETCインフラ、車載器とも普及はかなり進んだ状況にある。
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現状では、ETCインフラはリプレースが中心である。更新は10年弱となっており、2011年頃に大規模なリプレースがあったため、今後しばらくはまとまったリプレースがないとみられる。新規需要としてはスマートインターチェンジ、マンションなどの入退出やスマートパーキングなどの民間需要があるが、急速な増加は期待できず、マンション向けで徐々に増加する程度にとどまるとみられる。
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一方、ETC2.0サービスを実現するITSスポットは、2011年に高速道路に敷設されはじめ、車載器の普及率は低いが、2014年には一般道へも敷設が始まっている。ITSスポットの増加と車載器の低価格化によって徐々に普及していくが、ETCのような急速な広がりはみられないと予想される。
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一方、海外では赤外線通信方式やANPR方式などDSRC方式以外の自動料金収受システムも採用されている。新興国ではコストダウンのために、安価な赤外線通信方式などが採用される傾向にある。自動料金収受システムがまだ導入されていない地域もあり、これから需要拡大が期待できる。
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北米は、DSRC方式やカメラによりナンバーを読み取るANPR方式が多い。欧州では今後移動体通信を利用した自律方式のシステムの導入が進むとみられ、補助的にDSRC方式の路側装置も必要になることから増加するとみられる。また、欧州では史跡地域への進入を抑える目的や、重量課金目的、都市部での混雑防止などの目的による導入が市場をけん引する一因になるとみられる。
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現在、安価な赤外線通信方式などによる簡易なシステムを導入している地域でも、高度なシステムへ移行していく傾向がみられるため、今後はDSRC方式の導入が緩やかながら世界的に進むと予想される。
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(3)EV充電スタンド管理システムサービス国内市場
2014年見込 | 2013年比 | 2020年予測 | 2013年比 |
5億円 | 2.5倍 | 16億円 | 8.0倍 |
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EV・PHV向けの充電スタンドと管理者/ユーザーのEV・PHVをネットワークされたサービスを対象とし、数値の定義は充電スタンド管理者がシステムベンダーに支払うネットワーク利用料とした。管理者はスタンドの利用状況、サービス提供時間、監視・防犯サービス、スタンドの予約管理などができる。
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このサービスに登録するEV・PHVには、近隣の充電スタンド情報、料金、満空情報などが提供される。EV・PHVなどの普及に伴い通信サービス機能対応スタンドが増加しており、市場は拡大が続くと予想される。
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これまでは補助金による充電スタンドの設置が進んだが、今後は補助金に頼らない普及が求められる。そのために、単に充電させるだけでなく、効率よく集客でき、管理者にとってメリットのある充電スタンドにする必要性が高まるとみられる。例えば、カーシェアリング対応や充電スタンドを情報発信ポイントにするなど、充電スタンドの高付加価値化が検討されている。
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また、各ベンダー間で独立している管理サービスの相互接続も重要であり、ユーザーの利便性を高めたシステムを業界全体で構築していく必要がある。
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(4)緊急通報システムサービス国内市場
2014年見込 | 2013年比 | 2020年予測 | 2013年比 |
47万加入 | 106.8% | 78万加入 | 177.3% |
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移動体通信網や位置測位技術を利用した自動車の緊急通報サービスを対象とした。
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日本では海外に比べて治安が比較的よく、交通事故も少ないため緊急通報の需要は少ない。現在は、「Lexus」や「BMW」を中心に提供されており、高級車向けのサービスとなっている。今後は、移動体通信網を利用した緊急通報以外のサービスが充実していくことにより、緊急通報サービスの利用数も増加していくと予想される。
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■(2)その他の自動車通信ネットワーク利用サービスの動向
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カーシェアリング 先進国を中心に普及が進んでおり、中国ではエコ対策として、日本や北米などではマイカー代替でニーズが増加している。今後EVなどの増加によりこの傾向がさらに加速する可能性がある。
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地図データサービス すでにカーナビゲーションシステムなどへ搭載されているため一般化している。今後はアップデート頻度の間隔を短縮する方向性であり、通信モジュールの搭載がこれを後押ししていく。
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③ |
ロードプライシング 環境対策を目的にEU を中心に導入が進んでいる。日本でも一部導入が進んでいる。今後は渋滞回避などのルートガイダンスも合わせた形でのロードプライシングの普及も進んでいくとみられる。
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④ |
その他 ETCサービスや自動車保険サービス、商用車向け業務効率化サービスなどはすでに一般化しているが、今後は通信の搭載による高機能化が進むとみられる。ETC では決済以外の情報授受、保険サービスでは通信を用いた走行データ連動型保険、商用車向け業務効率化サービスでも通信対応によるリアルタイム管理などが進められていく。
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参考文献:「2015 自動車通信ネットワーク関連市場総調査」 (2014年11月10日:富士キメラ総研)
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