● |
2014年11月「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が施行された。これは、免疫細胞療法等を含んだ再生医療の実用化を進める為の法律である。細胞培養加工施設の届出を厚生労働省に行い、承認されると細胞加工受託が可能となる。また、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」も同時に施行され、治験にて安全性の確認及び有効性が推定される場合、条件・期限付きで製造販売承認を与え、従来よりも早く製品の上市が可能となった。再生医療分野は、政府が成長戦略の一つとし、今後の発展が期待される市場である。
|
● |
ティッシュエンジニアリング関連市場は、「再生医療等製品」、「人工生体材料用補填材」、「細胞」、「細胞培養施設/サービス」、「細胞培養機器」、「セルカルチャーウェア/試薬」の6つの分野から構成されている。本テーマは、2013年10月15日号のマーケット情報で取り上げた。今回は、再生医療に向けた法整備が進む中で、ティッシュエンジニアリング関連市場の現状を踏まえ今後の予測を記載する。
|
|
分野 | 対象製品 |
A.再生医療等製品市場(6) | 細胞軟骨、培養皮膚、培養角膜、心筋シート、食道再生上皮シート、細胞性医薬品 |
B.人工生体材料用補填材市場(2) | 皮膚補填材、骨補填材 |
C.細胞市場(3) | ヒト細胞、iPS細胞、ES細胞 |
D.細胞培養施設/サービス市場(3) | 細胞培養センター(CPC)、細胞/組織バンク、細胞培養受託 |
E.細胞培養機器市場(15) | 遠心分離機、CO2インキュベータ、自動培養装置、アイソレータ、安全キャビネット/クリーンベンチ、滅菌器、凍結保存容器、超低温フリーザ、薬用冷蔵ショーケース/薬用保冷庫、フローサイトメーター、細胞計数分析装置、セルイメージングシステム、細胞観察用顕微鏡、破砕装置/ティッシュスライサー、超純水製造装置 |
F.セルカルチャーウェア/試薬市場(11) | 細胞培養用シャーレ、細胞培養用プレート、細胞培養用フラスコ、細胞培養バッグ、細胞培養用ゲル、細胞培養用培地、血清、細胞培養用スキャホールド、トランスフェクション試薬、細胞凍結保存液、細胞搬送容器 |
|
■ティッシュエンジニアリング関連市場規模予測
|
単位:億円
年次 | 2014実績 | 2015見込 | 2020予測 | 2030予測 |
合計 | 713 (-) | 739 (103.6%) | 935 (126.5%) | 1,947 (208.2%) |
A.再生医療等製品市場 | 7 | 10 | 83 | 695 |
B.人工生体材料用補填材市場 | 59 | 61 | 63 | 64 |
C.細胞市場 | 14 | 15 | 21 | 36 |
D.細胞培養施設/サービス市場 | 37 | 44 | 94 | 382 |
E.細胞培養機器市場 | 438 | 445 | 485 | 546 |
F.セルカルチャーウェア/試薬市場 | 158 | 164 | 189 | 224 |
※( )前年比、2020年(2015年比)、2030年(2020年比) | 富士経済推定 |
|
● |
2014年11月に再生医療に関する2つの法律が施行されたことにより、再生医療の早期の実用化に向けた環境が整備され、今後は再生医療等製品市場及び細胞培養施設/サービス市場が市場成長を牽引していくと見られる。そのため、2020年には900億円以上、2030年には1,900億円以上にまで市場規模が拡大する見通しである。
|
|
■ティッシュエンジニアリング関連市場の今後の成長戦略
|
【成長戦略】
- 再生医療新法に伴う、再生医療の製造・加工に関するコスト低減
- 実用化までの時間短縮
- 細胞培養加工の民間企業への委託
- 保険適応範囲の拡大
- 細胞性医薬品による難治性疾患を対象とした医薬品の開発
- 量産化に対応した大型細胞培養センター(CPC)の普及
|
|
● |
iPS細胞研究のロードマップは、2014年の再生医療新法が施行された事に伴い、2015年8月に一部改定案が出され、網膜色素上皮細胞は2017年~2018年に、視細胞や脊髄損傷患者への神経細胞移植は2018年~2019年に治験が始まる点などが新たに盛り込まれている。
|
● |
厚生労働省でも文部科学省と連携し、移植細胞の安全性評価の在り方を整理する研究班を発足させるなど、疾患別のリスク評価についても対策を強化する方向性にある。今後再生医療は産業化発展に向けて大きく貢献する見通しにあり、ティッシュエンジニアリング関連市場の成長力も加速する事が期待されている。
|
|
参考文献:「ティッシュエンジニアリング関連市場の最新動向と将来性 2015」 (2015年10月28日:富士経済)
|
|

|