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高機能繊維市場は、自動車や航空機の軽量化(金属代替)、構造の強化材としての需要、耐熱・難燃素材、エネルギー関連での需要の高まりなどを背景に拡大傾向で推移している。特に自動車分野では、車体の軽量化・燃費の向上を図ることが可能となり、環境負荷低減の活動が追い風となる形で、今後更に高機能繊維の需要拡大が期待されている。
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本レポートは、高機能繊維(下記の18品目)の市場動向と応用製品分野別展開状況を2回に分けて提示する。
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高機能繊維の機能別分類
| 高強度繊維 11品目 | 耐熱性繊維 13品目 | 難燃性繊維 6品目 |
パラ系アラミド繊維 | ● | ● | |
メタ系アラミド繊維 | ● | ● | ● |
超高分子量PE繊維 | ● | | |
LCP繊維 | ● | | |
PBO繊維 | ● | ● | ● |
PPS繊維 | | ● | ● |
PTFE繊維 | | ● | ● |
フェノール系繊維 | | ● | ● |
PAN系炭素繊維 | ● | ● | ● |
GPCF(汎用ピッチ系炭素繊維) | ● | ● | |
HPCF(高機能ピッチ系炭素繊維) | ● | | |
活性炭素繊維 | | ● | |
導電性繊維 | | | |
生分解性繊維(PLA/PGA) | ● | | |
アルミナ短繊維 | | ● | |
アルミナ長繊維 | ● | ● | |
ステンレス繊維 | ● | ● | |
びびり繊維 | | ● | |
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■高機能繊維世界市場規模予測
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| 2014年実績 | 2018年予測 | 2022年予測 |
数量(千t) | 190 | 259 | 348 |
2014年比 | - | 136.3% | 183.2% |
金額 | 6,795億円 | 8,778億円 | 11,002億円 |
2014年比 | - | 129.2% | 161.9% |
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高機能繊維市場は、最大の市場規模を持つパラ系アラミド繊維や、航空機、自動車の軽量化・高強度化で需要の高まるPAN系炭素繊維を筆頭に、メタ系アラミド繊維、超高分子量PE繊維、PPS繊維などが市場を牽引している。中でも市場伸長率200%超のPAN系炭素繊維は、高強度化と軽量化を同時に得られる点で金属代替が進み市場の拡大が続いている。今後、エネルギー、産業機械・設備、航空・宇宙・海洋・軍需、自動車用途で大型市場が形成されていくと見られる。しかし、コスト面の課題があり、参入企業各社はコスト低減に向けた技術開発が進められている。
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■高機能繊維市場における機能別市場分析
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1.高強度繊維市場規模予測
| 2014年実績 | 2018年予測 | 2022年予測 |
数量(千t) | 163 | 225 | 307 |
2014年比 | - | 138.0% | 188.3% |
金額 | 5,405億円 | 6,953億円 | 11,002億円 |
2014年比 | - | 128.6% | 161.7% |
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高強度繊維の対象品目別構成比 2014年:数量ベース
品目 | 千t | 構成比% |
パラ系アラミド繊維 | 59.6 | 36.5 |
PAN系炭素繊維 | 53.5 | 32.8 |
メタ系アラミド繊維 | 24.8 | 15.2 |
超高分子量PE繊維 | 11.5 | 7.0 |
生分解性繊維 | 9.1 | 5.6 |
その他 | 4.8 | 2.9 |
合計 | 163.3 | 100.0 |
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高強度繊維市場は、PAN系炭素繊維、パラ系アラミド繊維の合計で7割近い構成比を占めている。自動車分野では、燃費低減を目指し構造の軽量化を推進する動きが活発化している。軽量化の一つには、構造材の金属代替が進められており、PAN系炭素繊維および、CFRPの採用が活発化している。航空・宇宙・海洋・軍需関連では、PAN系炭素繊維を中心に、航空機構造材、通気口パネルなどの内装材や宇宙用途で採用されている。今後も需要拡大が続くと見られる。
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2.耐熱性繊維市場規模予測
| 2014年実績 | 2018年予測 | 2022年予測 |
数量(千t) | 167 | 232 | 319 |
2014年比 | - | 138.9% | 191.0% |
金額 | 5,845億円 | 7,684億円 | 9,849億円 |
2014年比 | - | 131.5% | 168.5% |
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耐熱性繊維の対象品目別構成比 2014年:数量ベース
品目 | 千t | 構成比% |
パラ系アラミド繊維 | 59.6 | 35.7 |
PAN系炭素繊維 | 53.5 | 32.0 |
メタ系アラミド繊維 | 24.8 | 14.8 |
PPS繊維 | 11.2 | 6.7 |
アルミナ短繊維 | 9.5 | 5.7 |
その他 | 8.5 | 5.1 |
合計 | 167.1 | 100.0 |
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耐熱性繊維は、自動車、エネルギー、産業、住設、衣料、航空・宇宙などの分野で需要が高く、パラ系・メタ系アラミド繊維、PAN系炭素繊維が中心となっている。パラ系アラミド繊維は、耐熱性や高強度性だけではなく、加工のしやすさや高機能繊維として幅広く利用されている。PAN系炭素繊維は、耐熱性に加え、高強度化、軽量化などの機能を求められるシーンでの採用が高い。PPS繊維は、石炭火力発電所の排煙処理装置であるバグフィルター需要が圧倒的である。アルミナ短繊維は、排ガス処理装置の触媒コンバータ用の把持材、DPFのサポートマット、製鉄用断熱材など、高温環境下で使用される部材に採用されている。今後も利用分野は拡大が見込まれる。
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3.難熱性繊維市場規模予測
| 2014年実績 | 2018年予測 | 2022年予測 |
数量(千t) | 94 | 135 | 197 |
2014年比 | - | 143.6% | 209.6% |
金額 | 2,580億円 | 3,411億円 | 4,522億円 |
2014年比 | - | 132.2% | 175.3% |
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難燃性繊維の対象品目別構成比 2014年:数量ベース
品目 | 千t | 構成比% |
PAN系炭素繊維 | 53.5 | 57.2 |
メタ系アラミド繊維 | 24.8 | 24.5 |
PPS繊維 | 11.2 | 12.0 |
その他 | 4.1 | 6.3 |
合計 | 93.6 | 100.0 |
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難燃性の機能をメインに採用される繊維は、消防服などに採用されるメタ系アラミド繊維である。PAN系炭素繊維は、あらゆる分野での需要拡大が期待されている。メタ系アラミド繊維は、工場などのバグフィルターや絶縁シートなどに採用されている。PPS繊維は、石炭火力発電所のバグフィルター需要が殆どであり、高温排煙の集塵を可能とした。近年PPS繊維の供給不足が続いた事で、PTFE繊維の需要が高まっている。
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参考文献:「2015 高機能繊維関連技術・市場の現状と将来展望」 (2015年11月06日:富士経済)
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