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高機能なプラスチックフィルムは、薄型TV、タッチパネルを搭載したスマートフォンやタブレット端末向けを中心に拡大してきた。また、機能性コーティング材は、プラスチックフィルムに塗工することで導電機能、表面改質機能、接着・剥離機能、光学機能、バリア・封止機能などをさらに付与することができる。今回は、プラスチックフィルムと機能性コーティング材の世界市場をレポートする。
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■プラスチックフィルム(原反フィルム) 12品目の世界市場
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| 2014年実績 | 2019年予測 | 2014年比 |
合計 | 7,687億円 | 8,294億円 | 107.9% |
PPフィルム(工業用)※ | 485億円 | 504億円 | 104.0% |
PETフィルム | 2,744億円 | 2,929億円 | 106.7% |
TACフィルム | 2,310億円 | 2,290億円 | 99.1% |
PIフィルム | 737億円 | 762億円 | 103.4% |
フッ素樹脂フィルム | 650億円 | 692億円 | 106.5% |
COPフィルム | 234億円 | 403億円 | 172.4% |
PMMAフィルム | 196億円 | 366億円 | 186.4% |
PENフィルム | 141億円 | 133億円 | 94.0% |
PCフィルム | 119億円 | 130億円 | 109.2% |
PMPフィルム | 44億円 | 54億円 | 124.1% |
PPSフィルム | 21億円 | 24億円 | 114.4% |
LCPフィルム | 7億円 | 8億円 | 111.9% |
※PPフィルム(工業用)は、日本市場のみ対象 | 富士経済推定 |
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LCD-TVの偏光板やバックライト周り、スマートフォンのLCDやタッチパネル周りで用いられる光学フィルムが、それらの生産拡大に伴い高い伸びを維持してきた。光学フィルム以外にもコンデンサやFPC(フレキシブルプリント基板)の基材、また工程用保護フィルムや離型フィルムとしての利用が多い。今後は、需要の中心となるLCD-TVやスマートフォンの生産拡大が鈍化するため、プラスチックフィルムの市場も以前のような大きな伸びは難しいが、2019年は2014年比7.9%増の8,294億円が予想される。
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■主要プラスチックフィルム(原反フィルム)の市場展望
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1.PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム 下記は光学用途(FPD等)、太陽電池(バックシート向け)、電子部品・実装、半導体(後工程材料等)、加飾フィルム用途に限定している。
| 2014年実績 | 2019年予測 | 2014年比 |
金額 | 2,744億円 | 2,929億円 | 106.7% |
数量 | 98億6,520万m2 | 117億6,000m2 | 119.2% |
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日本及び韓国のPETフィルムメーカーは、を生産設備の縮小・整理を進めており、2015年から2016年にかけて、PETフィルムの供給は若干減少する見通しである。
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適用面積では最大にあたるLCD-TV市場は飽和状態に入っており、ノートPC市場も縮小が進んでいる。さらに、成長市場といわれたスマートフォン/タブレット端末市場も2014年以降は成長率が低下を始めていることから、光学分野でのPETフィルム市場も低成長が続くと見られる。
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市場参入プレイヤーが増加したことにより、一層の価格競争が進行する。日本メーカーの市場シェアは長期的には減少傾向が続くと見られる。
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2.TAC(トリアセチルセルロース)フィルム 下記は偏光板保護用を中心とした機能性フィルム用途を対象としている。
| 2014年実績 | 2019年予測 | 2014年比 |
金額 | 2,310億円 | 2,290億円 | 99.1% |
数量 | 8億8,500万m2 | 10億m2 | 113.0% |
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TACフィルムは、TV向けLCDパネルの生産動向に連動する。2014年はTV生産が拡大し、TACフィルムの販売が伸びた。しかし、LCDパネル市場が飽和しつつあることから、TACフィルムの販売も今後大幅な拡大は見込めない。一部大型サイズのTV需要が拡大傾向にあることから、今後TACフィルムの販売数量は2~3%程度の伸びが見込まれる。ただし、LCDパネルの低価格化、アクリルフィルムやCOPフィルムとの競合などによりTACフィルムの価格は下落傾向にあるため、販売金額は伸び悩むと見られる。
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3.PI(ポリイミド)フィルム
| 2014年実績 | 2019年予測 | 2014年比 |
金額 | 737億円 | 762億円 | 103.4% |
数量 | 1億6,470万m2 | 1億8,620万m2 | 113.1% |
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2013~2014年はスマートフォン市場が高成長を遂げたこと、LCD市場では販売台数の伸び悩みはあるが面積ベースでは増加傾向が続いたことから、FPC関連部材の市場が拡大した。FPC基板関連はスマートフォン市場の成長率の鈍化が進んでいるが、今後も市場は堅調に推移すると見られる。
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透明PIフィルム及び熱可塑PIフィルムの開発・拡販やフレキシブルデバイス用途、車載用途などへの技術適用も研究が進んでおり、PIフィルムの想定用途は今後更に拡大していく。FPC基板関連では薄膜化のニーズに対応した薄膜PIフィルム(5μm程度)が開発されている。現在よりも薄膜品が流通・普及する段階に移行した際には、PIフィルムの販売数量(重量ベース)の減少に繋がる可能性がある。
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4.フッ素樹脂フィルム 下記は工業用や建材用などでフィルムとして用いられる製品を対象とする。(厚さ1mm未満)PTFEフィルム、PVDFフィルム、PVFフィルム、ETFEフィルムが対象である。
| 2014年実績 | 2019年予測 | 2014年比 |
金額 | 650億円 | 692億円 | 106.5% |
数量 | 3億1,480万m2 | 3億4,850万m2 | 110.7% |
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PTFEフィルムやETFEフィルムは離型フィルムや建材用途で継続して底堅い需要が見込まれる。太陽電池向けバックシート、フロントシート向けのPVF、PVDFフィルムは薄膜化が進行しており、重量ベースでの成長率は実質マイナス成長に入る。また、PVF、PVDFフィルムは今後もコストダウンが一段と進行するため、市場金額の成長率も鈍化し、横ばいからマイナス成長に陥ると見られる。
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2014年頃から一部中国ローカルメーカーからも太陽電池分野向けにフッ素樹脂フィルム(PVDF)の供給が始まったと見られる。現状ではフィルムの品質は既存の参入メーカーに劣るが、今後の技術力向上やコスト安を武器に市場シェアを拡大する可能性がある。
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参考文献:「2016 高機能フィルム&コーティング材の市場展望とメーカー戦略」 (2015年10月27日:富士経済)
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