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自動車開発は、「環境」「安全」「快適」の向上を目的にさまざまなテクノロジーが搭載され、日々開発が進展している。環境技術では、エンジンパワートレインにおける環境対策技術や燃費改善技術開発と、次世代自動車(HV/PHV/EV/FCV)開発が並行して進められている。安全技術では、先進運転支援システム(ADAS)の普及が進んでおり、今後、自動運転システムの実現に向けたセンシング技術、外部との情報通信技術の高度化が期待されている。快適性向上への取り組みとして、コックピットの充実、インターフェースの向上が挙げられ、HUDの普及、IVIシステム、スマートフォンとの連携によるサービスの拡充が進展している。
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今回は、2030年を見据えて自動車開発で点在する有望技術を、「環境技術」「自動運転/安全技術」「快適技術」に分類し、世界市場を3回に分けて解説する。
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■環境技術対象製品
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分野 | 対象品目 |
モーター駆動システム | HVシステム、PHVシステム、EVシステム、FCVシステム |
燃料改善システム | アイドリングストップシステム、回生エネルギーシステム |
エンジンマネジメントシステム | ガソリンPFI、ガソリンDI、DEM |
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■モーター駆動システムの需要予測(数量ベース)
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| 2015年 | 搭載率 | 2020年予測 | 搭載率 | 2030年予測 | 搭載率 |
W/W 新車販売台数 | 8,672万台 | 100.0% | 9,945万台 | 100.0% | 1億3,982万台 | 100.0% |
| モーター駆動システム 合計 | 184万台 | 2.1% | 408万台 | 4.1% | 3,666万台 | 26.2% |
HVシステム | 144万台 | 1.7% | 273万台 | 2.7% | 1,319万台 | 9.4% |
PHVシステム | 12万台 | 0.1% | 57万台 | 0.6% | 1,413万台 | 10.1% |
EVシステム | 28万台 | 0.3% | 74万台 | 0.7% | 831万台 | 5.9% |
FCVシステム | △ | △ | 4万台 | △ | 103万台 | 0.7% |
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HVシステム | モーター駆動+エンジン駆動を対象。マイクロHVは対象外とした。 |
PHVシステム | 家庭用電源を用いて充電可能なモーター駆動+エンジン駆動を対象。 |
EVシステム | モーターのみで駆動し、エンジンでの駆動、発電を行わない。 |
FCVシステム | 燃料電池を用いたモーター駆動を対象。 |
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HVシステムは、トヨタがHV関連特許を多数保有し、日本を中心に普及が進んでいる。今後は、EU、NAFTA地域においても燃費規制対応を目的に自動車メーカーのラインアップが増加する見通しである。
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PHVシステムは欧州自動車メーカーによる取り組みが積極的に行われており、2020年にかけて製品投入が進展する見通しである。欧州市場では、クリーンディーゼルの搭載が高まっているが、CO2排出量に対する規制強化の流れを受け、従来車からHV/PHV/EVシステムへの転換を図っている。
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EVシステムは、中国政府の環境対策の一環による補助金導入によって中国向けで需要が高まっている。1充電当たりの走行可能距離の制約や充電時間、インフラ構築、電池寿命、コストなど課題が多く、中国以外では、HV/PHVシステムが中心となる見通しである。
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FCVシステムは、車両価格が高価であり、水素インフラの整備が不十分であることから2030年においても搭載率は1%に満たないと予測される。
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■燃料改善システムの需要予測(数量ベース)
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| 2015年 | 搭載率 | 2020年予測 | 搭載率 | 2030年予測 | 搭載率 |
W/W 新車販売台数 | 8,672万台 | 100.0% | 9,945万台 | 100.0% | 1億3,982万台 | 100.0% | アイドリング ストップシステム | 1,710万台 | 19.7% | 4,784万台 | 48.1% | 1億322万台 | 73.8% |
回生エネルギーシステム | 1,628万台 | 18.7% | 4,767万台 | 47.9% | 1億322万台 | 73.8% |
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アイドリングストップシステム | 自動車停止時のエンジン停止による燃費向上 |
回生エネルギーシステム | 自動車減速時のエネルギーを回収/再利用して燃費向上 |
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両システムとも基本的な採用部品は同じであり、低価格で両システムを統合できる。現在ではほとんどが両システムを組み合わせたシステムとなっている。今後も両システムの統合は継続していくと推測され、2024年には完全に同一システムに組み込まれると推測される。
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次世代自動車のHV/PHV/EV/FCVには、両システムとも100%搭載されている。また次世代自動車が当該システム市場をけん引してきたが、エンジン車においても燃費改善に大きく影響すること、比較的低コストでシステム搭載が可能なことから、当該システムの搭載が急激に拡大すると見られる。
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■エンジンマネジメントシステムの需要予測(数量ベース)
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| 2015年 | 搭載率 | 2020年予測 | 搭載率 | 2030年予測 | 搭載率 |
W/W 新車販売台数 | 8,672万台 | 100.0% | 9,945万台 | 100.0% | 1億3,982万台 | 100.0% |
ガソリンPFI | 5,138万台 | 59.2% | 4,909万台 | 49.4% | 4,066万台 | 29.1% |
ガソリンDI | 1,195万台 | 13.8% | 2,385万台 | 24.0% | 5,654万台 | 40.4% |
DEM | 2,291万台 | 26.4% | 2,528万台 | 25.4% | 3,012万台 | 22.2% |
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ガソリンポート噴射エンジンマネジメントシステム(ガソリンPFI) | ガソリンエンジン+ポート噴射 |
ガソリン直噴エンジンマネジメントシステム(ガソリンDI) | ガソリンエンジン+直噴 |
ディーゼルエンジンマネジメントシステム(DEM) | ディーゼルエンジン+直噴 |
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ガソリンエンジンではPFIから燃費向上を図りやすいDIへのシフト傾向が顕著であり、今後も各国における排気ガス規制の厳格化に伴い、2026年から2028年にかけて需要は逆転すると予測される。その一方で、HVとPHVにおいても当該システムは採用されており、DIはPFIよりも搭載コストが高いことや、HVにすることで大幅な燃費改善を図れるため、HVとPHVにおいてはPFIの採用が継続すると推測される。
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ディーゼルエンジンは燃料コストが安価であり、欧州では主要エンジンマネジメントシステム(DEM)となっている。今後自動車の需要が拡大していく新興国ではディーゼルエンジン車の普及が見込まれ、ワールドワイドでの需要は長期的に拡大していくと推測される。
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参考文献:「2016 光機能材料・製品市場の全貌」 (2016年03月30日:富士経済)
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