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近年、ケミカル・マテリアル業界では、「メディカル・ライフサイエンス分野」が景気に左右されない安定した市場環境と、付加価値の高い素材へのニーズを期待できる分野として、年々注目度が高まっている。医療器具・用品における筐体や構成材料、医療器具や医薬品向けの包装・容器、透析膜などの膜/フィルター、特殊な機器が多く用いられる医療装置や構成部品など、さまざまな用途において、樹脂・エラストマー・生物由来材料が採用され、一定の市場が確立されている。
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また、採用される素材も幅広く展開される汎用グレードだけでなく、メディカル・ライフサイエンス分野向けに物性を調整したグレードや、専用の製造ラインによって品質管理が徹底されたグレード、求められる規格に準拠したグレードなど付加価値を高めた特殊グレードが多く採用されており、市場規模への期待以上に魅力的な分野である。
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今回は、メディカル・ライフサイエンス分野向けに展開される素材市場にフォーカスし、樹脂・エラストマー・生物由来材料を対象としたメディカル・ライフサイエンス分野向けのポリマー市場の全体像を解説する。
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■メディカル・ライフサイエンス用ポリマーの国内市場
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| 2016年実績 | 2020年予測 | 2016年比 |
合計 | 753億円 (169,733t) | 796億円 (173,052t) | 105.7% (102.0%) |
樹脂 | 428億円 (141,281t) | 426億円 (144,187t) | 99.5% (102.1%) |
エラストマー | 86億円 (11,905t) | 90億円 (12,177t) | 104.7% (102.3%) |
生物由来 | 239億円 (16,547t) | 244億円 (16,688t) | 102.1% (100.9%) |
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国内市場規模は、2016年16万9,733t、752億円となった。医療器具などの用途製品は成熟市場が多いことから、各ポリマー市場は品目間で成長性に多少の差があるものの、メディカル・ライフサイエンス用ポリマー市場全体ではほぼ横ばいで推移している。
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当該市場は、汎用グレードだけでなく、物性の調整や厳しい品質管理を行ったメディカルグレード、各種規格に準拠した規格準拠グレードといった特殊グレード製品が多く採用されており、付加価値の高い市場となっている。
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■メディカル・ライフサイエンス用ポリマーの品目別グレード展開状況(国内市場2016年)
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<樹脂:21品目>
| 汎用G 国内需要:t | 汎用グレード | 特殊G 国内需要:t | 特殊グレード |
メディカル | 特殊準拠 |
PP | 3,000 | ● | 47,000 | ● | |
PE | 6,290 | ● | 26,000 | ● | ● |
PVC | 9,800 | ● | 5,000 | ● | |
PET | 20,500 | ● | △ | ● | |
PC | ― | | 6,000 | ● | |
PS | 8,500 | ● | ― | | ● |
SBC | 1,200 | ● | 1,800 | ● | ● |
ABS | ― | | 1,100 | ● | |
透明PA | 50 | ● | △ | ● | |
COP・COC | 520 | ● | 1,150 | ● | |
フッ素樹脂 | 50 | ● | ― | | |
超高分子量PE | ― | | 50 | | ● |
PEEK | 13 | ● | 3 | ● | |
サルフォン系樹脂 | 2,700 | ● | △ | ● | |
PMMA | 400 | ● | ― | | |
EVOH | 100 | ● | ― | | |
PMP | 50 | ● | ― | | |
LCP | ― | | 1 | | ● |
PBT | ― | | △ | | ● |
PLA・PGA | ― | | 4 | ● | |
MPCポリマー | ― | | △ | ● | |
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<エラストマー:8品目>
| 汎用G 国内需要:t | 汎用グレード | 特殊G 国内需要:t | 特殊グレード |
メディカル | 特殊準拠 |
ブチルゴム | 4,000 | ● | ― | | |
ポリイソプレンゴム | 1,500 | ● | ― | | |
シリコーンゴム | 100 | ● | 700 | ● | ● |
フッ素ゴム | 5 | ● | ― | | |
オレフィン系熱可塑性エラストマー | 4,200 | | 4,200 | ● | |
スチレン系熱可塑性エラストマー | 400 | ● | 600 | | ● |
PA系熱可塑性エラストマー | 300 | ● | ― | | |
PU系熱可塑性エラストマー | 10 | ● | 90 | | ● |
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<生物由来:3品目>
| 汎用G 国内需要:t | 汎用グレード | 特殊G 国内需要:t | 特殊グレード |
メディカル | 特殊準拠 |
セルロース | 10,140 | ● | ― | | |
コラーゲン | ― | | 7 | ● | |
ゼラチン | 6,400 | ● | ― | | |
△:僅少 | 富士キメラ総研推定 |
※上記は対象品目を汎用グレード、特殊グレードとしてメディカルグレードおよび規格準拠グレードの3つに分類した。 |
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汎用グレードは、メディカル・ライフサイエンス分野以外の用途にも採用がある標準的なグレードを捉えた。また、医療用途向けに特化した性能向上や原材料の変更などを行っているグレードをメディカルグレードと定義し、汎用グレードと基本的に同じ製品であるがISO10993やUSPクラスⅥなどの生体適合性規格の認証を取得しているグレードを規格準拠グレードと捉えた。
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グレード別需要規模では、汎用グレードが約45%、特殊グレードが約55%と、若干特殊グレードの採用が多い。品目によってグレードの採用状況にばらつきがみられ、1つのグレードのみ採用がある品目、汎用・特殊グレードともに採用があるがいずれかの需要比率が高い品目など、さまざまである。
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参考文献:2017年 メディカル・ライフサイエンス用ポリマー市場の現状と将来展望 (2017年03月14日:富士キメラ総研)
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