● |
製造業向けロボットは、従来からの単純作業の自動化のみでなく、組立、検査、搬送・物流など柔軟性が必要となる作業や、高度なスキルが必要な作業の自動化へも市場が拡大している。今後も労働力不足は世界的に継続するとみられることから、これは一過性のものとはならない。それに伴い、労働力不足を補うものから、モノ造りの進化を担う形へ、ロボットの位置づけが進化している。
|
● |
今回は、製造業向けロボットの世界市場を解説する。
|
|
■製造業向けロボットの世界市場
|
| 2017年 | 2025年予測 | 2017年比 |
製造業向けロボット | 1兆821億円 | 3兆3,140億円 | 3.1倍 |
溶接・塗装系 | 3,660億円 | 8,785億円 | 2.4倍 |
アクチュエータ系 | 510億円 | 1,201億円 | 2.4倍 |
組立・搬送系 | 5,526億円 | 2兆179億円 | 3.7倍 |
クリーン搬送系 | 1,125億円 | 2,975億円 | 2.6倍 |
|
■対象品目
|
溶接・塗装系 | 1.アーク溶接ロボット 2.スポット溶接ロボット 3.塗装ロボット 4.バリ取り・研磨仕上げロボット |
アクチュエータ系 | 1.単軸ロボット 2.直交ロボット 3.電動スライダ |
組立・搬送系 | 1.卓上型ロボット 2.パレタイジングロボット 3.取出しロボット 4.スカラロボット 5.パラレルリンクロボット 6.ヒト協調ロボット 7.小型垂直多関節ロボット(可搬重量20kg以下) 8.垂直多関節ロボット(可搬重量21kg以上) |
クリーン搬送 | 1.ガラス基板搬送ロボット 2.ウエハ搬送ロボット |
|
● |
2017年の製造業向けロボット市場は、労働力不足、人件費高騰などを背景とした自動化ニーズに支えられた旺盛な設備投資により、1兆円を超える結果となった。特にアクチュエータ系や組立・搬送系ロボットでは、EMSやスマートフォン関連で特需が見られた。クリーン搬送系ロボットにおいても有機ELや大型液晶パネルの投資、半導体需要による設備投資拡大により市場が拡大した。2018年以降も中国を中心に自動化ニーズが拡大すると見られ、高レベルでの成長を維持していくものと予想される。
|
|
■分野別市場動向
|
溶接・塗装系 | 2017年は自動車関連の設備投資が欧米、日本、中国などで好調であり、市場は拡大した。2018年も日系、欧米の大手自動車メーカーが設備投資を継続する見通しであり、市場が拡大する見込みである。 |
アクチュエータ系 | 2017年は前年の設備投資抑制から一転し、スマートフォン関連や自動車関連で設備投資が増加し市場は拡大した。2018年もEMSなどの大口ユーザーからの受注が見込まれ、市場は拡大するものの前年程の伸びはないと予想される。 |
組立・搬送系 | 2017年は小型垂直多関節ロボット、スカラロボットなどの小型ロボットが、EMSやスマートフォン関連、自動車部品関連の設備投資の好調を受け、市場を拡大している。2018年も小型ロボットは旺盛な需要が期待できることから、今後前年比20%以上の成長が見込まれる。 |
クリーン搬送 | 2017年のガラス基板搬送ロボットは、スマートフォンやテレビ向けに高精細液晶や有機ELの設備投資が拡大した。ウエハ搬送ロボットも、スマートフォンやサーバ向けに大手メモリメーカーが設備投資を増強したことから、市場が拡大した。2018年はガラス基板搬送ロボットの成長が鈍化する見込みであるが、ウエハ搬送ロボットは旺盛な半導体メーカーの設備投資を受け、市場拡大を続けるものと予想される。 |
|
■2017年のエリア別市場動向
|
| 合計 | 北米 | 欧州 | アジア | 中国※ | 日本 |
溶接・塗装系 | 3,660億円 (100.0%) | 706億円 (19.3%) | 713億円 (19.5%) | 1,723億円 (47.1%) | 1,224億円 (33.4%) | 518億円 (14.1%) |
アクチュエータ系 | 510億円 (100.0%) | 26億円 (5.1%) | 21億円 (4.1%) | 161億円 (31.6%) | 108億円 (21.2%) | 302億円 (59.2%) |
組立・搬送系 | 5,526億 (100.0%)円 | 962億円 (17.4%) | 1,351億円(24.4%) | 2,520億円 (45.6%) | 1,978億円 (35.8%) | 693億円 (12.6%) |
クリーン搬送系 | 1,125億円 (100.0%) | 231億円 (20.5%) | 18億円 (1.6%) | 673億円 (59.8%) | 258億円 (22.9%) | 203億円 (18.1%) |
|
● |
2017年の製造業向けロボット市場は、労働力不足、人件費高騰などを背景とした自動化ニーズに支えられた旺盛な設備投資により、1兆円を超える結果となった。特にアクチュエータ系や組立・搬送系ロボットでは、EMSやスマートフォン関連で特需が見られた。クリーン搬送系ロボットにおいても有機ELや大型液晶パネルの投資、半導体需要による設備投資拡大により市場が拡大した。2018年以降も中国を中心に自動化ニーズが拡大すると見られ、高レベルでの成長を維持していくものと予想される。
|
● |
組立・搬送系ロボットは、中国をはじめとするアジア市場の構成比が高い。全世界的にロボットの需要が拡大しており、スカラロボット、小型垂直多関節ロボット、ヒト協調ロボットの伸びが大きい。EMSやスマートフォン関連が主なアプリケーションである卓上型ロボット、取出しロボット、スカラロボット、小型垂直多関節ロボットは中国向けの構成比が5割を超えている。
|
● |
クリーン搬送のガラス基板搬送ロボットは、中国、韓国、台湾を中心としたアジア中心の市場である。中国、韓国、台湾の大手パネルメーカーが、2017年も積極的な設備投資を行ったことから、大幅に市場が拡大した。ウエハ搬送ロボット市場は、半導体製造装置メーカーの拠点がある、米州、日本の構成比が高い。また、韓国、中国やその他アジアの半導体製造装置メーカー向けや、台湾ではエンドユーザー向けに導入されているため、アジアでの構成比が年々高まっている。
|
|
参考文献:2018 ワールドワイドロボット関連市場の現状と将来展望 No.1 FAロボット市場編 |
|

|