● |
2017年はメモリ等の先端系デバイスを始めとした半導体市場が、国内、海外とも活況を呈した。パワーデバイス市場は、民生機器分野で新興国におけるインバータ家電の需要増加、自動車・電装分野で欧州や中国でのEV化が急速に進展した。
|
● |
2018年も引き続き、民生機器分野、自動車・電装分野、産業分野が市場を牽引していく見通しであり、特に自動車・電装分野において自動車走行技術や電動化の進展による需要増加が期待される。また、AIやIoTの活用領域の進化によって情報処理能力の更なる向上が必要となり、消費電力の増大が考えられることから、情報通信機器分野においても電力損失の低減に最適なパワーデバイスの採用機運が広がっている。
|
● |
今回は、次世代、次々世代を含めたパワー半導体市場を解説する。
|
|
■パワー半導体の世界市場
|
| 2017年実績 | 2030年予測 | 2017年比 |
合計 | 2兆7,192億円 | 4兆6,798億円 | 172.1% |
シリコンパワー半導体 | 2兆6,899億円 | 4兆1,778億円 | 155.3% |
次世代(SiCパワー半導体) | 275億円 | 2,270億円 | 8.3倍 |
次世代(GaNパワー半導体) | 18億円 | 1,300億円 | 72.2倍 |
次々世代パワー半導体 | 僅少 | 1,450億円 | ― |
|
● |
シリコンパワー半導体は、2020年に3兆円を突破し2030年に4兆円規模の市場が予測される。市場は自動車・電装分野の需要が有望であり、付加価値を付けたモジュール形態の提案も進んでいく。
|
● |
SiCパワー半導体の2017年は275億円市場に成長しており、堅調に拡大している。情報通信機器、エネルギーの実績が高いが、電鉄車両や自動車・電装(駆動用インバータモジュール)の需要が顕在化していく。フルSiCパワーモジュールの需要も徐々に拡大し、大電流・高耐圧用途での需要がさらに高まる見込みである。
|
● |
GaNパワー半導体は、2020年頃に需要が大きく拡大する見通しである。2025年までは情報通信機器向けの需要を中心に市場が拡大する見込みであり、2025年以降、自動車・電装分野等で成長が見込まれる。これに加えて、ACアダプタ等、数量規模の大きい民生機器分野で長期的に需要拡大が期待される。
|
● |
次々世代パワー半導体の酸化ガリウム系パワーデバイスはα型が先行し、2018年後半からSBDの量産開始が予定され、黎明期を迎える予定である。また、2020年頃からFETの展開が見込まれ、2025年には500億円規模に達すると予測される。ダイヤモンド系パワー半導体は実用化に向けた取り組みは進展するが、2025年においても市場規模は僅少が予測される。
|
|
■SiCパワー半導体の需要先予測(世界市場)
|
| 2017年実績 | 2030年予測 | 2017年比 |
合計 | 275.0億円 | 2,270.0億円 | 8.3倍 |
民生機器分野 | 8.7億円 | 90.0億円 | 10.3倍 |
情報通信機器分野 | 111.3億円 | 491.0億円 | 4.4倍 |
自動車・電装分野 | 42.0億円 | 530.0億円 | 12.6倍 |
電鉄車両分野 | 4.0億円 | 230.0億円 | 57.5倍 |
エネルギー分野 | 69.0億円 | 485.0億円 | 7.0倍 |
産業分野 | 40.0億円 | 444.0億円 | 11.1倍 |
|
● |
2025年の時点でエコカー全体(EV、HEV、PHEV)で駆動用モジュール向けの当該デバイスの搭載比率は少なくとも、5%以上を達成するとの見方が大勢で、2030年には15%に拡大すると予測される。車載充電器(オンボードチャージャー)用途で当該デバイスの採用は既に実績を上げてきており、適用車種が拡大する。電鉄車両向けは新型高速車両等での採用が進み、2025年には6%、2030年には10%以上と予測される。また、産業用途では大電力機械(溶接機械や圧延機械、掘削機械等)向けを中心に採用比率は拡大する。
|
|
■GaNパワー半導体の需要先予測(世界市場)
|
| 2017年実績 | 2030年予測 | 2017年比 |
合計 | 18.0億円 | 1,300.0億円 | 72.2倍 |
民生機器分野 | 2.0億円 | 180.0億円 | 90.0倍 |
情報通信機器分野 | 12.0億円 | 630.0億円 | 52.5倍 |
自動車・電装分野 | 僅少 | 320.0億円 | ― |
電鉄車両分野 | ― | ― | ― |
エネルギー分野 | 3.0億円 | 50.0億円 | 16.7倍 |
産業分野 | 1.0億円 | 120.0億円 | 120.0倍 |
|
● |
GaNパワー半導体は、量産効果が期待できるため、パワーMOSFETとの価格差は2割~3割高程度の水準に低減する。情報通信機器用途では高速スイッチング性能に強みのある当該製品の主要アプリケーションであり、基地局向け電源やトラフィックが増大しているサーバ用電源、UPSの需要は拡大する。この特性ではワイヤレス給電システム向けの電源で民生機器や産業等で需要が拡大していく。スマートフォン、モバイル機器向けでACアダプタへの標準採用やPC等では組み込み用途で製品化が進んでいく。自動車・電装分野ではDC-DCコンバータ向けやオンボードチャージャー向けでのアプローチが進んでいるが、本格採用に向けた動きが活発化している。現在、応用研究が進んでいる自動走行技術で利用されるLiDAR通信モジュールの採用が期待される。
|
|
<調査対象品目>
パワー半導体 (15品目) | ・整流ダイオード ・高耐圧パワーMOSFET ・GaNパワーデバイス ・SBD(ショットキー・バリア・ダイオード) ・IGBTディスクリート ・酸化ガリウム系パワーデバイス ・サイリスタ ・トライアック ・FRD(ファースト・リカバリー・ダイオード) ・パワーモジュール ・ダイヤモンド系パワーデバイス ・パワーIC ・バイポーラパワートランジスタ ・SiC‐SBD・低耐圧パワーMOSFET ・SiC‐FET |
|
参考文献:2018年版 次世代パワーデバイス&パワエレ関連機器市場の現状と将来展望 |
|

|