全個体型リチウム二次電池の世界市場予測

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2011年に電解液並みのイオン伝導度を示す固体電解質が発見され、2016年にはLiSiPSCl系が電解液を上回るイオン伝導度を示すことが見い出された。さらに2017年にLiSiPSClの組成を一部置換することで、組成が単純でかつハロゲン物であるClを使わないというメリットを有するLiSiSnPS系の合成に成功し、全個体型リチウム二次電池市場の形成機運が大幅に高まった。

トヨタ自動車が全固体型リチウム二次電池を搭載したxEVを2020年代前半に市場投入を表明し、Volkswagen Groupも全固体電池関連企業へ大規模投資を行い2025年の実用化を発表した。

今回はEV向け電池として需要が期待される全個体型リチウム二次電池の今後の市場予測を解説する。

■全個体型リチウム二次電池の世界市場予測



上記全固体型リチウム二次電池(全固体電池)は、硫化物系、酸化物系、高分子系、錯体水素化物系を対象とする。リチウムイオン二次電池と比較した全固体電池のメリットは、高容量な正極活物質や負極活物質の適用が可能なこと、急速充電に向くこと、リチウムイオン輸率が1であることから安全性が高くなること、出力特性・エネルギー密度・温度特性・サイクル特性・難燃性に優れること、バイポーラ電極(ひとつの集電体の表裏に正・負極電極を形成)が形成可能なこと、ロールtoロールで製造できること、リサイクル性が高いこと、液漏れしにくいなど多岐にわたる。

2017年の当該市場は、高分子系全個体電池のみである。海外メーカーが主導して自動車向けで展開している。日本メーカーが積極的に開発を行っているのは硫化物系全固体電池である。酸化物系全固体電池は現状僅かであるが、受動部品メーカーがチップ型の開発・製品化に積極的でありIoTやウェアラブルといった小型電源部品としての採用が期待される。自動車向けなどの大型電池は、台湾や中国のメーカーが中心となって固体電解質にポリマーなどを添加した疑似固体のシート型の開発に取り組んでいる。全固体のシート型は現在基礎研究段階であり実用化は2030年頃と予想される。

市場の形成は、2020年頃から始まり2025年から硫化物系全個体電池がEVに本格的に搭載される事で本格的に市場が形成される。2035年の市場は約2.8兆円が予測される。市場全体の中で硫化物系全固体電池が約2.1兆円を占めると予測される。一方、材質が比較的硬く、界面の形成が硫化物系と比べると大型化に課題のある酸化物系全固体電池は2035年に約6,000億円が予測され、安定性や安全性の高さなどから2035年以降の伸びが期待される。

■全個体型リチウム二次電池の性能

全個体型
リチウム二次電池
容量密度、電圧に関する概要
硫化物系重量容量密度は正極活物質と負極活物質の容量に依存するため活物質が変わらない限り大きな向上は見込めないが、電位窓が広いため5V級スピネル正極などの高電位正極を使用し作動電圧を向上することによる高エネルギー密度化が可能である。
酸化物系厚みが同等であれば、重量エネルギー密度の低下が想定されている。そのため、電解質層を薄膜化することで、軽量化による容量密度の増加とイオン伝導度の低さを補うことが可能である。広い電位窓を特徴としており、一般に耐酸化性に優れることから5V以上の高電圧化対応も可能である。
高分子系・錯体水素化物系高分子系の固体電解質はイオン伝導度が有機系電解液に比べて二桁低く、エネルギー容量は既存のLIBに劣るものの安全性の高さが評価されている。4V級正極活物質を使用すると充放電サイクルが劣化するため高電圧化が課題である。

■全個体型リチウム二次電池のアプリケーション

種類別電池期待されるアプリケーション
硫化物系EV用電池耐熱性が高く流動性が無いため車載用での採用に期待
タイヤ空気圧センサ向け電池高耐熱電池
医療用ペースメーカーガスの発生や電解液の流出がない安定性の高い電池
医療用手術機器電気メスや内視鏡など手術器具のワイヤレス化に対応
石油掘削向けドリルピット200℃以上の温度域での動作可能性を有する電池
酸化物系EV用電池硫化物系全固体電池では、硫化水素が発生する懸念があるが、酸化物系は安定性が高く不燃であり、温度範囲が広い
スマートフォンアプリケーションの需要量が大きく、安全性・高容量化に対するニーズが高い
ウェラブル機器安全性が高く、軽量・薄型の二次電池が実現可能
センサ・通信機器通信機器やSSDなどのストレージの補助電源として実装
高分子系EV用電池エネルギー容量が劣るものの、安全性が評価されて、近距離走行を前提とした駆動用電源
系統電力高温地域のESSに採用(省スペース化が可能で体積密度の向上が見込める)
錯体水素化物系EV用電池冷却構造の削減など体積密度向上が図りやすく、安全性が高い
ウェラブル機器安全性が高いことから、人体に近いウェアラブル機器への搭載が有望

参考文献:2018 電池関連市場実態総調査 No.1

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