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膜・フィルターによる分離技術は、環境浄化用途をはじめ、工業生産プロセス用途、自動車などの輸送機器用途、エネルギー精製、医療用途などで必要不可欠の技術である。
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従来は、薬品などを使った化学的方法での分離、また蒸発や蒸留など熱エネルギーによる方法での分離を行っていた用途において、膜・フィルターによるろ過技術がそれらに代わるケースが増加した。海水淡水化技術は、逆浸透膜による分離法が海水淡水化の主流になっており、省エネルギー面での優位性から、その比率はさらに高まっている。近年はエネルギー開発や資源回収、生産効率向上の手段として更なる成長が期待されている。
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今回は、高機能分離膜・フィルターにおける用途分野の市場を解説する。
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■分離膜・フィルターの用途分野別市場 (国内市場+日系企業の海外売上)
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| 2017年実績 | 2025年予測 | 2017年比 | 対象品目 |
合計 | 5,195億円 | 6,178億円 | 118.9% |
水環境分野 (8品目) | 1,921億円 | 2,799億円 | 145.7% | ・水処理膜 (MF/UF膜、MBR用膜、RO/NF膜) ・脱気膜 ・活性炭フィルター ・液体ろ過用カートリッジフィルター ・焼結金属フィルター ・炭化水素系イオン交換膜 |
大気・空質分野 (6品目) | 629億円 | 644億円 | 102.4% | ・エアフィルター(粗塵、中・高性能、HEPA/ULPA) ・ケミカルフィルター ・カーエアコンフィルター※ ・バグフィルター用ろ布 |
エネルギー分野 (2品目) | 240億円 | 331億円 | 137.9% | ・フッ素系イオン交換膜 ・アルコール脱水膜 |
ライフサイエンス分野 (3品目) | 684億円 | 718億円 | 105.0% | ・食品・医薬プロセス用膜 ・透析膜(ダイアライザー)※ ・ウイルス除去フィルター |
輸送機器分野 (3品目) | 1,583億円 | 1,485億円 | 93.8% | ・燃料(フューエル)フィルター※ ・オイルフィルター※ ・DPF (Diesel Particle Filter) |
工業プロセス用分野 (3品目) | 138億円 | 201億円 | 145.7% | ・半導体ガスフィルター ・膜式エアドライヤー※ ・酸素・窒素富化膜 |
富士経済推定 |
※大気・空質分野のカーエアコンフィルター、ライフサイエンス分野の透析膜(ダイアライザー)、輸送機器分野の燃料(フューエル)フィルター、オイルフィルター、工業プロセス用分野の膜式エアドライヤーは国内市場のみを対象としている。 |
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用途分野 | 市場概要 |
水環境 | ・いずれの膜/フィルター市場も需要のすそ野が広く、中国や新興国における経済発展や工業化、環境意識の高まりに伴う需要増、海水淡水化関連や半導体関連の好況、新規用途分野の開拓などによって市場は拡大すると予想される。 |
大気・空質 | ・HEPA/ULPAフィルター市場とケミカルフィルター市場がクリーンルーム向けを中心に伸びるとみられる。カーエアコンフィルター市場は、フィルターの交換の認知が高まることでアフター需要の掘り起こしが進み市場は拡大するとみられる。 |
エネルギー | ・フッ素系イオン交換膜市場では食塩電解プラント向けが飽和しており、リプレース需要が中心となっている。今後は欧州、中国、米国の排出ガス規制の強化に伴って燃料電池向けの増加が予想される。アルコール脱水膜市場は、海外で溶剤回収やバイオエタノール製造向けで伸びている。今後は酸・エステル反応の脱水向けが増加すると予想される。 |
ライフサイエンス | ・食品・医薬プロセス用膜市場がリプレース需要や競合技術からの置き換えによって微増していくとみられる。透析膜(ダイアライザー)市場は、患者数の急激な増加はみられないが、単価の高い製品に置き換わることで拡大が期待される。 |
輸送機器 | ・燃料フィルター市場やオイルフィルター市場が高齢化および人口減少に伴うドライバー減少や、ゼロエミッション車の開発が加速し市場は縮小していくとみられる。DPF市場は、欧州ではディーゼル車人気に陰りが生じているため需要が減少する。一方、排ガス規制の強化に伴って需要増加が期待される中国やタイ、インドなどの新興国向けでいかにカバーできるかが市場の動向を左右するとみられる。 |
工業プロセス用 | ・半導体ガスフィルター市場が半導体メモリ市場の急成長によって拡大していくとみられる。酸素・窒素富化膜市場は中国の石炭露天掘り向けが増加していることから市場は緩やかに伸びていくとみられる。 |
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参考文献:高機能分離膜/フィルター関連技術・市場の全貌と将来予測 2018 |
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