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発泡プラスチックスは、樹脂機能とポーラス構造(発泡化)の組み合わせにより、緩衝性、柔軟性、断熱・保温性、吸音性、軽量化などの性質を発揮する機能性素材であり、搬送資材から土木・建築資材、自動車部品まで、幅広い用途で採用されている。近年では特に建築物省エネ法における2,000m2以上の非住宅建築物で省エネ基準適合化が義務化されたことで、断熱材需要が大きく拡大している。自動車分野においては軽量化ニーズの高まりから金属や樹脂(ソリッド)代替として採用が増加している。
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今回は、発泡プラスチックスの国内市場を解説する。
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■発泡プラスチックスの国内市場
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上段:数量 下段:金額
| 2017年 | 2022年予測 | 2017年比 |
合計 | 862千トン 6,111億円 | 914千トン 6,948億円 | 106.2% 113.7% |
熱可塑性樹脂ファーム | 569千トン 3,562億円 | 587千トン 3,905億円 | 103.2% 109.6% |
熱硬化性樹脂ファーム | 224千トン 1,879億円 | 258千トン 2,365億円 | 115.2% 125.9% |
発泡ゴム・エラストマー | 66千トン 650億円 | 66千トン 660億円 | 100.0% 101.5% |
エンプラ・ その他注目ファーム | 3千トン 20億円 | 3千トン 18億円 | 100.0% 90.0% |
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発泡プラスチックの国内市場は、規模の大きい熱可塑性樹脂フォームや熱硬化性樹脂フォームの伸びにけん引され、市場は拡大している。2017年の市場は、各分野の需要増加に加え、熱硬化性樹脂フォームの原料価格高騰に伴う単価上昇の影響もあり、前年比3.8%増の6,111億円であった。
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2019年は消費税増税前の駆け込み需要が期待される住宅の断熱材や、東京五輪に向けて建設が進むホテルなどを中心とした非住宅の断熱材の需要増加がけん引するとみられ、市場拡大が予想される。2020年以降、伸び率は鈍化するとみられるが、建築資材用途の堅調な需要や、軽量化のための自動車関連用途などの伸びが期待され、2022年の市場は2017年比13.7%増の6,948億円が予測される。熱可塑性樹脂フォームでは自動車関連用途の使用が増加するPP架橋押出やPPビーズ発泡、また、熱硬化樹脂フォームでは断熱材として使用されるフェノールフォームや硬質ウレタンフォームなどの需要増加が期待される。
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■素材分野別国内市場
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素材分類 | 市場のトレンド・ポイント |
熱可塑性 樹脂フォーム | PE | PE系発泡製品は、搬送資材や工業資材が需要の中心であり、特に搬送資材が多く使用される電子機器や電子部品、自動車部品、家電などの製造業における生産動向の影響を受けやすい。近年は大きな変動は少なく、市場は安定している。 |
PP | PP系発泡製品は、自動車、食品包装関連、搬送資材が市場の中心であり、特に自動車向けは軽量化を目的とした採用が進んでいる。食品容器も耐熱性の高さから市場が伸長している。搬送資材は安定した市場を形成している。 |
PVC | PVC発泡製品は、壁紙やクッションフロア、発泡レザーなどの建築資材を中心に採用されているため、リフォーム需要はあるものの、新築住宅着工件数に連動した動きを示すことから、今後市場は縮小が見込まれている。 |
PS | PS系発泡製品は、汎用樹脂発泡品の中でも剛性に優れ、食品容器、建築資材、搬送資材、土木資材など幅広い用途で採用されている。その中でも食品容器向けのレンジアップニーズや、住宅・非住宅向けの高断熱ニーズが拡大傾向である。 |
熱硬化性樹脂フォーム | 主要用途である自動車部品向けは、国内自動車生産台数の停滞により横ばい推移である。断熱材は2020年から全ての建築物で建築物省エネ法の適用が義務化されるため、新築住宅着工件数は減少するものの使用量増加との相殺により、2021年以降は横ばい推移が見込まれる。 |
発泡ゴム・ エラストマー系発泡製品 | 国内の自動車生産台数は停滞しており、当該市場も横ばいの推移が見込まれる。ただし、海外で生産される自動車向けに供給がある日系ユーザー向けや採用車種の増加に伴い自動車向けに需要が拡大している製品もみられる。 |
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<対象品目>
素材分類 | 品目(34品目) |
熱可塑性樹脂フォーム (21品目) | PE (7品目) | ・LDPE無架橋押出シート・ボード ・LDPE無架橋押出キャップ・ネット ・LDPE架橋押出シート ・LDPE架橋ブロック、・LDPE架橋・無架橋パイプカバー ・LDPEビーズ発泡(EPE)、・HDPE発泡シート | PP(3品目) | ・PP無架橋押出、・PP架橋押出 ・PPビーズ発泡(EPP) |
PVC(3品目) | ・軟質PVC、・硬質PVC ・PVC発泡シート |
PS(6品目) | ・PSP、・PS系低発泡(食品容器)、・XPS(低発泡) ・XPS(中・高発泡)、・PSビーズ発泡(EPS) 軽量盛土材(EPS・XPS) |
その他(2品目) | ・PE・PS複合ビーズ発泡 ・ABSフォーム |
熱硬化性樹脂フォーム (3品目) | ・軟質ウレタンフォーム、・硬質ウレタンフォーム ・フェノールフォーム |
発泡ゴム・エラストマー (5品目) | ・押出発泡ゴム・エラストマー(自動車用) ・板状発泡ゴム ・フッ素系ゴム発泡体、・シリコーンゴム発泡体 ・ウレタン系エラストマー発泡体 |
エンプラ・その他注目フォーム (5品目) | ・変性PPEフォーム、・PCフォーム、・PAフォーム ・バラ状緩衝材、・FRP発泡複合体(CFRP・GFRP) |
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参考文献:2019年 発泡プラスチックスの現状と将来展望 |
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