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炭素繊維複合材料は、軽量・高強度といった基本特性の高さが評価され、航空機や風力発電ブレード、圧力容器、自動車用途、スポーツ・レジャー用品等をはじめ、各種産業界で採用が拡大している。自動車分野では、これまで欧州を中心として炭素繊維複合材料の採用が拡大してきたが、2020年前後から中国自動車メーカーによる量産採用が開始される見通しである。中国では炭素繊維複合材料を普及させる施策により、欧州SGL GroupやBMWなども技術的な支援を実施する体制となっている。
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炭素繊維複合材料は強度や弾性率等各種スペックを設計することが可能な設計材料であることから、成形加工品の均質化や適材適所に適量を使用する使いこなしの技術開発が必要となる。マルチマテリアル化に向けて、炭素繊維複合材料と金属材料との接合技術開発が進められている。
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炭素繊維複合材料は、熱硬化性樹脂ベースのCFRPと、熱可塑性樹脂ベースのCFRTP、端材利用に大別される。今回は炭素繊維複合材料の成形加工品の世界市場と主要用途の今後の市場動向を解説する。
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■PAN系炭素繊維複合材料の世界市場規模予測
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| 2017年実績 | 2030年予測 | 2030/2017 |
合計 | 1兆3,583億円 | 3兆5,800億円 | 2.8倍 |
CFRP | 1兆2,970億円 | 3兆2,020億円 | 2.5倍 |
CFRTP | 478億円 | 3,120億円 | 6.5倍 |
端材利用(CFRP/CFRTP) | 135億円 | 660億円 | 4.9倍 |
CFRP:炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させて成形加工した炭素繊維複合材料 CFRTP:マトリックス樹脂に熱可塑性樹脂を使用した炭素繊維複合材料 端材利用:加工時に発生する端材を利用したリサイクルPAN系炭素繊維複合材料 |
富士経済推定 |
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■CFRPの用途別世界市場規模予測
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| 2017年実績 | 2030年予測 | 2030/2017 |
合計 | 1兆2,970億円 | 3兆2,020億円 | 2.5倍 |
自動車 | 940億円 | 3,000億円 | 3.2倍 |
航空機 | 5,730億円 | 1兆4,040億円 | 2.5倍 |
圧力容器(CNG) | 410億円 | 1,360億円 | 3.3倍 |
水素タンク | 80億円 | 800億円 | 10.0倍 |
風力発電ブレード | 1,820億円 | 4,090億円 | 2.2倍 |
建築・土木 | 1,880億円 | 5,470億円 | 2.9倍 |
スポーツ・レジャー | 1,290億円 | 1,590億円 | 123.3% |
その他 | 820億円 | 1,670億円 | 2.0倍 |
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用途 | 市場動向 |
自動車 | 自動車メーカー各社がCFRP利用技術の研究開発を進めている。現在は欧州メーカーによる開発・採用が先行しているが、政策の後押しや電動自動車市場の拡大に伴う軽量化ニーズの増加から中国自動車メーカーによる採用が予想される。 |
航空機 | 航空機は計画生産体制が組まれているため安定的に伸びるとみられる。2025年前後にはAirbusやBoeingなどが、生産数が多い小型機種の次期モデルの生産を開始する計画であり、それらでCFRPの採用率が高まることで、さらなる需要増加が期待される。 |
水素タンク・圧力容器 | FCVやCNG車の市場に連動した成長が予想される。FCVについては中国でトラック、バス向けの需要が増加している。 |
風力発電プレート | 欧州、中国において洋上風力発電プロジェクトが進行しており、洋上風車で用いられる5MWから10MWクラスの大型ブレードの軽量化を図るためにCFRPの採用が有力視されていることで、今後の伸びが期待される。 |
建築・土木 | シート加工された炭素繊維基材を施工現場に搬入し、マトリクス樹脂兼接着剤を塗工して成形加工を行う形式が多い。中国の建造物や橋脚などをはじめとする補強材として需要が増加している。 |
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■CFRPの用途別世界市場規模予測(富士経済推定)
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| 2017年実績 | 2030年予測 | 2030/2017 |
合計 | 478億円 | 3,120億円 | 6.5倍 |
摺動部品 | 162億円 | 228億円 | 140.7% |
静電部品類 | 74億円 | 112億円 | 151.4% |
HDD部品 | 29億円 | 21億円 | 72.4% |
自動車 | 31億円 | 2,203億円 | 71.1倍 |
家電・OA機器 | 72億円 | 88億円 | 122.2% |
スポーツ・レジャー | 15億円 | 20億円 | 133.3% |
その他 | 95億円 | 448億円 | 4.7倍 |
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| 市場動向 |
現状の用途 | ATM等の自動機器の静電・摺動部品用途、掃除機やエアコン、カメラ筐体等の家電・OA製品、自動車のフレーム部品等において、短/長繊維ペレットの射出成形部品が採用されており、2018年からは、新たに自動車用途で熱可塑SMC 成形部品の採用が開始された。 |
今後の拡大用途 | 今後は、自動運転の普及に伴い車載センシングカメラなどで電磁波シールド対策部品としての採用が想定されており、需要が増加するとみられる。連続繊維の加工品は現状、航空機用途における限定的な採用となっているが、2025年から2030年にかけて自動車用途における骨格・構造部品での採用が有力視されており需要の増加が期待される。 |
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参考文献:炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)関連技術・用途市場の展望 2019 |
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